春の訪れとともに奥州平泉の毛越寺では、１９５９年も藤原三代の昔を偲お祭が行なわれた。この夜祭は、どんなに暴れてもこの夜ばかりは如来さまも知らぬが仏というあばれ祭。気持ちのイライラする方に、こんな祭はいかがであろうか？（週間話題）

東京では２８年ぶりの初雪を踏んで、１９５９年も正月２日、参賀の人波が皇居広庭に続いた。同じ日、岸信介首相は年末のお家騒動以来、黒星続きの厄払いにと、お伊勢参りに出かけた。高野山では初詣の客を乗せたバスが谷底に転落して、死傷者５０余名を出すなど、今年は各地に初春早々痛ましい交通事故が続いた。北の新潟はもう深い雪の訪れ。雪に閉ざされる永い冬の間鉄路の安全運転をめざして、国鉄職員たちの休みない努力が続けられるのである。

臨時国会を前に内閣改造に乗り出した岸信介首相は、河野一郎さんに協力を求めたが、念願の幹事長の椅子を、周囲の反対でつぶされた河野さんは、つむじを曲げガンとして岸内閣への入閣を断わり、入れ替わって池田勇人さんが登場して、１９５９年６月１８日夕方、やっと組閣を完了。岸・池田（通産大臣）・佐藤栄作（大蔵大臣）ラインの新内閣が誕生した。胸を張って抱負を語る新大臣、福田赳夫農林大臣。自衛隊の栄誉礼に迎えられて初登庁の赤城宗徳防衛庁長官。一番若い大臣中曽根康弘科学技術庁長官は、さっそく東海村の原子力研究所を視察して張り切っている。河野さんは牛を馬に乗り替えられた気晴らしに競馬見物、スタンドでバッタリ出会った川島正次郎幹事長と何事かヒソヒソ話。こちらは箱根でゴルフを楽しむ岸さん。あとから佐藤・池田のご両人も現われて腕を競ったが、はたしてこの組合わせいつまで続くことであろうか？

東京丸の内のオフィス街に、１９５９年１月２６日から有料路面駐車場が店開き。１５分間１０円也のパーキングメーターで全国初めての試みである。秒針見つめて彼氏待つ間もタイム・イズ・マネーのせちがらさ。しかし、なかなかの繁昌。東京都も商売上手になった。車と人の流れが渦巻く日比谷交差点では秒読み信号灯が登場。道行く人を急き立てる。さながら交通地獄の狂騒曲。カメラの悪戯とはいえ東京も住みにくくなった。

北京で開かれた中国人民代表大会で毛沢東主席辞任の跡目を決める選挙が行なわれた。投票する毛沢東、朱徳、周恩来首相に続いて話題の人劉少奇氏。チベットのパンチェン・ラマも１票を投じる。いよいよ開票。工場に農村に、中国人民がかたずを呑んで見守るうちに、新主席には劉少奇氏、副主席に宋慶齢女史ら中国の新しい指導者が誕生した。（週間話題）

新潟県十日町市の町はずれ、残雪に覆われた山間に願入地区がある。山里の朝早く、すげぼしをかぶって分教場に通う子供たちの元気な姿が見られる。冬の間、雪に閉じ込められるこの集落の良い子たちのために、農家を改造した山の分校が開かれているのである。雪解けとともに待ちに待った本校に帰る日がやって来た。お父さんやお母さんが、机や荷物を背負って峠を越え、山の向こうの本校へ急ぐ。素肌をようやく見せ始めた山並みに歌声がこだまして、別れ別れになっていた山の子供たちは、またみんな一緒に勉強することになった。

山形県最上川の上流では、流れをせき止めてヤナ漁が今たけなわ。次々とヤナに掛かる落鮎を、水しぶきを浴びながら手づかみだ。鮎を焼く煙とともに東北の秋は深まる。こちら東京湾では、味覚の秋に海の上で食べる味はまた格別と、日頃釣り天狗のザコクラブの面々が我も我もと、江戸前のハゼ釣りとしゃれこんで大賑わい。釣られるハゼより人の方が多そうな秋の釣り風景である。（週間話題）

１９５９年も冬の訪れとともに東京の空は煤煙のシーズンを迎えた。１ヵ月に１平方キロの広さに降る煤煙の量は約２０トンといわれ、大きな公害問題の一つ。東京都では苦情相談所を設けたり、ボイラーマンを集めて完全燃焼による煤煙防止の講習会を開いて、対策に忙しい季節となった。（週間話題）