スイス・ロシニエール村に住む少女アンネットと少年ルシエンは幼なじみ。仲良しだった二人は、ふとした行き違いからケンカをしてしまう。そんな折、仲直りをしにきたルシエンが、思いがけずアンネットの幼い弟ダニーにケガを負わせてしまった。ダニーの足が治らないと知ったアンネットは、ルシエンを許せない。事件の噂は村中に知れわたり、ルシエンはやがてひとり森の中で過ごすようになった。森で出会った不思議な老人ペギンに木彫りを教わり、罪の償いに木彫りを彫るルシエン。ルシエンの心からの想いはやがてアンネットの心を開いた。名医にダニーの足を診てもらおうと、ルシエンは吹雪きの峠を越える。医者の診察の結果、ダニーの足は回復する。原作：パトリシア・セント・ジョン「雪のたから」。世界名作劇場。（１９８３年１月９日～１２月２５日放送、全４８回）

原爆文学の傑作として世界的にも有名な小説の忠実な映像化に努めたドラマ。閑間重松は姪の矢須子の結婚問題で頭を痛めていた。重松と妻シゲ子は被爆したが、矢須子は直接被爆しておらず、そのあとに降った“黒い雨”にうたれただけである。しかし、ピカに遇ったという村の人々のうわさのため、矢須子の縁談は次々とこわれてしまう。「２４時間テレビ」の中で放送。

彫金家・帖佐美行宅のアトリエを訪ね、帖佐の話を交えながらその制作風景、作品の数々を紹介する。◆彫金は銅板に下絵を書き、鏨で叩いて加飾を施す技術である。帖佐は作家が形作っていくのではなく、銅板が成りたがっている形にデザインするのだと強調する。そうすることによって自然の法則に沿った作品を創造することができ、誰にも愛される作品ができると考える。

１９８３年６月１１日、インドネシアで皆既時間５分１２秒という、今世紀最大級の皆既日食が観測された。その模様を３地点から３０分にわたって追跡し、日本をはじめフランスなど約１０カ国に向けて放送した。◆ＮＨＫは、インドネシア国営テレビ放送と協力して１年前から準備に入り、東西約１０００キロメートルの皆既帯に沿って３地点に中継車を配置。２つの通信衛星を使った多元衛星生中継に世界で初めて成功した。

その昔に流人の島、金山の島といわれた佐渡。流人文化ともいうべき独特の風景が、今も島のそこかしこに見られる。佐渡には庶民の娯楽として多くの人形芝居が受け継がれた。新穂村に残る、説教節に合わせた人形芝居もその１つ。峠に残された３，０００体の地蔵菩薩。加茂湖のカキ漁。◆来る日も来る日も波風にさらされる佐渡の暮らしを追う。◆佐渡の人形芝居〔新潟県〕

貧しい農村に生まれた少女が幾多の苦難を乗り超え、やがてスーパーマーケットのチェーン店を経営するようになるまでを、生まれ故郷を旅する彼女の回想という手法で描く。作：橋田寿賀子。ＮＨＫ連続テレビ小説第３１作。（１９８３年４月４日～１９８４年３月３１日放送、全２９７回）◆７歳の春、おしんは子守り奉公に出され、家族と別れることになる。乗った筏を見送りに来なかった父が下流の土手に立っている姿を見て、おしんは父の思いを知った。奉公先に着いたときは船に酔ってさんざんであった。これから先を暗示するような旅立ちであった。

アラビアンナイトの舞台になったイラクのバグダッドを中心に、世界文明の発祥の地・メソポタミア地方の過去と現在を見る。◆メソポタミアとは「２つの川の間」の意。母なるユーフラテスと父なる川チグリスに挟まれ、豊かな文明が花開いた。今、バグダッドはビル工事ラッシュ。一方、四千年来変わらぬ葦の文化やシルクロードで東西文明が交錯した隊商都市ハトラの遺構など古きを訪ね、高速道路建設で変ぼうするシルクロードの歴史を眺望する。◆ジクラット、サマーラのミナレット、サンマッチ修道院、ハトラの遺構

中国地方５県に伝承されてきた伝統工芸の担い手たちの技能と生き方を風土との関わり中で描くシリーズ。中国放送、山陰放送、山陽放送、テレビ山口の４社共同制作。放送番組センター協賛番組。◆熊野筆は１８４６（弘化３）年に井上治平が広島城下から、また音丸常太が同じころ摂津の国有馬から、製筆法を持ち帰って伝えたのが始まりとされる。一般に民芸品は地元特産の資材を使うが、熊野筆は穂首の毛も軸も、中国を中心に全て他所から調達する。地元で支えるのは、代々受け継がれた製造技術だけである。「筆司」が指先の鋭い感覚を駆使する熟練の技術は、分業や機械化に馴染まず、ただひたすら手先の修練によって継承されてきた。１９７６（昭和５１）年、熊野筆は通産大臣から伝統工芸の指定を受け、上馬場正生さんら１８人の筆司が伝統工芸士の称号を与えられた。『筆の都よ熊野の町は、姉も妹も筆つくる』と歌われる熊野町では、分業の裾野が広く、住職、医者、校長先生以外は皆筆作りにかかわったと言われる。国産毛筆の８割を占める熊野筆の歴史と実績は、こうした人たちの緻密な熟練の成果である。