横浜伊勢佐木町のイセザキ書房は全国で唯一、海で働く船員たちに本を配送している書店だ。店主の佐藤さんが船員たちに宛てた手紙の朗読、船員たちの思い出を通して、半世紀にわたる交流を描く。また、外国人船員であふれる中華街、南米への移民船など、港町横浜と海運ビジネスの変遷も浮き彫りにする。◆昭和３０年の書店開業当時、一度に何十冊も本を買っていく人々がいた。長期間日本を離れて船上で過ごす船員たちにとって、本はなくてはならないものだったのだ。佐藤さんらは停泊中の船に本を届けるようになる。港は活況を呈し、毎年春の捕鯨船には一度に何千冊も納めた。佐藤さんが日本の近況を綴った手紙を本に添えたのも喜ばれた。やがて時代は移り変わり、イセザキ書房の役割も変化していく。

ラジオ６０年の歴史の中で、パーソナリティ第１号といわれる人物の一人、三國一朗。当時の彼とラジオ業界を重ね合わせ、ラジオにとって、ラジオパーソナリティにとって大切なものは何かを考える。◆ビール会社の宣伝部に勤務していた三國氏は、民放ラジオの黎明期にひょんなことから深夜番組「イングリッシュアワー」に出演することになった。昼はサラリーマン、夜はラジオの生放送という彼の仕事ぶりを、当時の番組スタッフに聞く。また、洋楽やジャズに精通していた彼をリサイタルの司会に起用したペギー葉山さん、生ワイド番組で共演した毒蝮三太夫さんら関係者にも話を聞きながら、三國一朗という人物を通してパーソナリティに必要な資質を探る。彼が大切に保存していた膨大な資料や音源の中から、その一部も紹介する。さらに、ＦＭ　ＮＡＣＫ５の生ワイド番組「鬼玉」パーソナリティ、玉川美沙とバカボン鬼塚がラジオの大先輩の生き方を受け、未来のラジオへの意気込みとパーソナリティ論を語る。

大分市在住の若年性認知症患者の６０歳の男性は、５７歳のとき認知症と診断された。当時、市役所に勤務していたが、電話の対応やパソコンの操作などが困難になり、病院へ。後に若年性アルツハイマー型認知症と判明し、やむなく３６年勤務した職場を退職。妻と二人三脚の闘病生活を始めた。彼は今、講演活動のほか、趣味のランニングやバドミントンに精を出す日々を送っている。また昨年から、週に一度デイサービスの仕事に就き、食事の配膳やマッサージなど、同じ認知症を患う高齢者のお世話もしている。現在、６５歳未満で発症する若年性認知症の患者は全国で推定約３万８千人（実際はその３倍いると言われている）。未だ完治する治療法は見つかっていない。この進行性の病気に立ち向かう夫妻の日常を取材し、その実情を描く。

２００９年、ロシアから日本人抑留者名簿７０万人分が公開された。シベリア抑留の記録は数多く残され、その多くはソ連（現ロシア）極東地域での悲惨な強制労働を綴ったものだが、実際にはモンゴルや中央アジア、東ヨーロッパにかけての広い範囲で抑留生活を強いられていた。京都市在住の元兵士佐藤さん（９０歳）もその一人だ。千島で終戦を迎えた佐藤さんは、アゾフ海に面するロシア南部の都市タガンログで、ロシア人と共に作業に従事したと証言する。これは当時ソ連が日本人捕虜を戦争で荒廃したソ連本土の復興のための労働力として酷使していたことを物語っている。また、佐藤さんは入院先の病院で３人の日本人が亡くなったと語り、これは国の調査でも確認されておらず、このような証言が新たな身元確認や遺骨収集につながる可能性もある。取材で得た新情報を元兵士らの証言で綴り、シベリア抑留問題の解決策を模索する。

自然環境とエコをテーマに、宮崎県内の様々な話題や取り組みを紹介する番組。パーソナリティは、宮崎の自然に親しみ、環境保護活動などを行ってきた木佐貫ひとみと初鹿野聡。彼らが直接現地に出かけて録音取材しながら、スタジオで紹介する。宮崎の自然やエコライフをリポートする「ナチュラルライフ」では、過疎化、高齢化が進む地域の清掃活動。毎月一つの動物を取り上げる「どうぶつカフェ」は、愛鳥月間にちなんで鳥のさえずりを人の言葉に置き換える「聴きなし」を解説する。ほかに、初鹿野が扮する「もったいないおばちゃん」などのコーナーで構成。

音楽ソフトの売り上げが激減し、３０年前の１９８０年代の市場規模になってしまった。静岡市の老舗音楽ショップも大手ビデオレンタルチェーンに身売りした。レコードの誕生以来、特に１９６０年代以降、世代を越えて社会全体で話題になるヒット曲が生まれてきた。とりわけ大きな存在がザ・ビートルズで、解散から４０年を経てもなお、昨年発売されたリマスター版ボックスセットは飛ぶように売れた。これまでヒットを支えてきたのは、若者最大の情報源の一つであるラジオ、そしてカリスマＤＪの存在だった。しかし現代は音楽を送り出すメディアも多様化し、個人の趣味嗜好も様々だ。ＣＤも衰退する今、時代を象徴する音楽が生まれないのはなぜか。１９９０年代までＦＭ雑誌の編集者だった恩蔵茂氏は、「テクノロジーの発達はもちろん、人間同士のコミュニケーション不足が原因ではないか」と語り、その上で、何らかのメディアから、送り手と受け手と一体となった、新たな時代を背負うニュースターが生まれてくることを期待する。

盲目の三味線奏者、高橋竹山の生誕１００年を記念しての特別番組。喉頭がんと闘いながら、亡くなる半年前まで舞台に立ち続けた竹山が亡くなって１２年。今でも彼の三味線に心を寄せる人たちがいる。竹山の三味線の音色がなぜ人々の心を揺さぶり魅了したのかを考える。◆４月２６日青森市内の特設ステージで開催された「竹山ありがとうの会」には１３０人の観客が詰めかけた。竹山の生前の三味線の演奏やしゃべりを交えながら、竹山の弟子や友人などが思い出話を披露した。会場では生前の竹山を知らない若い世代も涙していた。この会に出席した民俗民具研究家の田中忠三郎さんと竹山の一番弟子の津軽三味線奏者西川洋子さんをスタジオに迎え、イベントの様子を振り返る。またリスナーから寄せられた竹山の思い出も紹介。ラジオを通して“三味線奏者　高橋竹山”を語り継ぐ。

神戸で結成された５人組ボーカルグループＰｅｒｍａｎｅｎｔ　Ｆｉｓｈが送る番組。（２０１０年４月放送開始）Ｐｅｒｍａｎｅｎｔ　Ｆｉｓｈとは、永遠に泳ぎ続ける魚という意味で、アカペラを主体にＡＯＲサウンドをベースにした大人のテイスト溢れるパフォーマンスで、聴く人を音の海へと誘う。今回は、２０１１年５月３日の祝日にマイカル明石で行った公開録音「ゴールデンウィークスペシャルライブ」の模様を伝える。