国鉄の幹線調査会で十河信二総裁は、東海道に新路線を建設する必要があると発表、その計画を政府に答申した。それは東京・大阪を３時間で走る世界一、夢の超特急である。こちらは日本一のお台所。回転式のテーブル、水も湯も自由自在に出る流し場など、贅を尽くした設備である。東京神田にはエスカレーターつきの銀行が現われた。行内はご自慢の円型カウンターである。大阪には日本で最初の二階建の電車がお目見得、車内に電話もあり、各座席にはラジオも付いている。時代の最先端をゆくデラックス版あれこれである。

連日３０度を超える暑さにうだる東京の町。都会をのがれて山に涼を得ようと、辛抱強く列車を待つ人々。海へ向かう自動車の列。車も列車なみの混みようで、海は芋を洗うような大混雑。ゴムボートも定員過剰。保健所員は海水の汚れを検査。海のパトロールが神経を消耗させる沖のボート遊び。ごった返す浜辺の救護所は、溺れた人の世話から傷の手当て、１日１００人を超える迷子の面倒見に手を焼いている。夏は今盛りである。

本土と九州の往来を連絡船に頼っていた関門海峡に、海底トンネルが１９５８年３月９日ついに完成した。全長３４００ｍ余り、世界最初の海底道路で、昭和１２年（１９３７年）工事に着手してから、実に２１年ぶりのことである。この関門トンネルの開通は、日本産業の発展に重要な役割を果たすことだろう。

１９５８年１１月５日から松川事件の審理を始める最高裁判所をめざして、被告たちの無実を訴える行進が、仙台から東京へ向かっている。２０名の被告たちは、昭和２４年（１９４９年）８月１７日、東北本線松川駅付近で列車が脱線転覆、３名の死者を出した事件の犯人の疑いで逮捕され、無実を叫びながら、一審で死刑５名、二審で４名他全員有罪という極刑の宣告を受けているのである。しかし、この裁判に対し、次第に各方面からの批判が高まって来た。折も折、被告の一人（一、二審とも死刑）のアリバイを裏付ける「諏訪メモ」が、９年ぶりに明るみに出された。作家の広津和郎氏は、全被告の無実を主張し続けている。世にも不思議な物語といわれるこの事件には、さまざまの疑問が出されており、最高裁判所が真実の砦となるよう、人々の期待が寄せられている。

春のシーズンを前に、バレエ団が山寺にやって来た。まずお経をとなえて精神の統一。お勤めが終ると乙女たちは滝つぼへ入って行く。雪の上を素足で踊れば、乙女たちの夢はもう春の檜舞台に飛んでいる。

「世界一うるさい都」といわれる東京。交通機関による騒音は、都会に住む人たちの神経をいらだたせている。特にひどいのが自動車の警笛。騒音は我々の肉体にどんな影響があるか、ウサギで実験してみると、呼吸数は倍増し、血圧がぐんと高くなる。人体の場合も同じことがいえる。こうした音の暴力を追放するため、警視庁では１９５８年５月１０日から本格的に取締りを始めた。オートバイの排気音の取締まり。また、交通事故の発生は警笛に頼って運転する車が多いためとあって、みだりに警笛を鳴らす車には、白バイが出動、指導を行っているが、クセはなかなか直らないようだ。この都会が音の洪水から解放されるのは、果たしていつのことであろう。

鉄道の技術交流と親善をはかるため、このほど来日したアジア・アフリカ１１ヵ国の代表たちは、８日間にわたる国鉄視察の旅に出た。交流電気機関車など、国鉄が世界に誇る技術を熱心に見学した一行は、今後一層の協力と親善を約して、意義ある日本訪問を終った。

フランスを揺すぶった反政府の動きは、アルジェリア全土に広がった。現地の強硬な態度に海軍も同調したため、フリムラン首相は総辞職を余儀なくされ、大戦中フランス解放の英雄として知られたドゴール将軍が、ついに出馬を決意した。警官隊の厳重な警戒の中に１９５８年６月１日、ドゴール将軍は議会の信任を得たが、今フランスは大きく動こうとしている。