働くことしか知らない幸助のただ一つのたのしみは喧嘩の仲裁であった。それをうまく利用してわざと喧嘩をし、仲裁してもらい、仲直りの席を設けさせて一杯やる男たち。幸助は自分の仲裁に満足して町を歩いていると、浄瑠璃の稽古屋から嫁いびりの話が聞こえてくる。早速その人物の名前と居所を聞いて駆けつける。芝居の世界の話を実際に起こっている話と勘違いして世話をやく男のおかしな噺。

歌舞伎十八番中、異色の荒事『景清』の中の武士道と妻子への愛情の物語を、市川團十郎に聞く。◆平家が敗れたあとも源氏の権力に屈することなく潔い生き方を貫いた悲劇の武将・平景清。その景清が牢の前で妻子と対面させられて、主家への恩と肉親の愛情の板挟みになる苦悩を描いたもの。四代目團十郎の当たり役になった作品である。◆副音声は英語

河竹黙阿弥の名作「三千歳」を鑑賞する。遊女三千歳と追手を逃れる直次郎の別れの愁嘆場である。没後１００年になる黙阿弥は、維新から西欧化の嵐の中で、座付作者として新作「源流奇譚西洋歌舞伎」やシェークスピア劇の翻案など、さまざまな試みをしていた。今日、一般に鹿鳴館の絵として伝わる絵画は、実は黙阿弥が下絵を描いたパリ・オペラ座前の風景であることが最近の資料で判明した。曾孫にあたる河竹登志夫が、激動の時代を生きた黙阿弥の創作活動を解説する。

およそ３００年間の徳川時代、豊臣秀吉の功業は無視され続けてきた。その間、秀吉の遺宝をひっそりと守り続けていたのが、三十三間堂の本坊である名刹・妙法院門跡である。聚楽第、大阪城、伏見城と秀吉の遺構がすべて消し去られた中で、太閤のけんらんたる桃山文化の香りが漂う遺品が妙法院の随所に眠っている。皇室と深い関わりをもち一般公開の機会は年に１０日という別格の寺を初めてテレビが取材、太閤秀吉の栄光を貴重な映像でよみがえらせ、伝える。◆【国宝】妙法院庫裡、ポルトガル印度副王信書（妙法院）、華王院本堂（三十三間堂）、千手観音坐像（蓮華王院本堂安置）、豊国神社唐門【重要文化財】妙法院大玄関

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は「ラウターブルンネン」と題して、スイスのラウターブルンネン・ユングフラウヨッホの道のりを紹介する。

男に二度裏切られて男性不信になった子持ちのヒロインが、様々な困難にめげず幸せを探す。（１９９３年７月１日～９月１６日放送、全１２回）◆第１回「決して恋をしない女」。高畑結女（浅野温子）は３３歳。１８歳のときに芝木邦生と恋に落ちて身ごもるが、邦生は姿を消してしまう。結女は一人娘・遥を産み、幼なじみの穂坂新平（佐藤浩市）と結婚した。しかし新平の浮気が原因で離婚。結女は男性不信に陥り、料理学校で教えながら遥と二人で暮らしていた。高校生になった遥（ともさかりえ）の担任教師が家庭訪問にやって来る。彼は邦生の弟・貢（織田裕二）で、貢にとって結女は初恋の相手だった。

日本文学の名作を、日本を代表する演出家がテレビドラマ化するシリーズ。（前後編）◆母が離婚して家を出て以来、主婦と母親の２役を務めてきた娘に縁談がまとまり、父子家庭に波紋がひろがる。◆しず子は縁談がまとまり嬉しい反面、残される父・義平と１０歳の弟・善夫が気にかかる。しず子は叔父の画家・素香に相談する。素香の提案で、出て行った母・むつ子に戻ってもらおうと会いに行くが、母は男と暮らしていた。

平安末期、平家の南都焼き討ちで焼失した東大寺。しかし東大寺にも朝廷にも復興資金はなく、建築技術も失われていた。不可能と考えられていた再建を成し遂げたのは、６１歳という高齢で復興造営責任者である勧進職に任ぜられた俊乗房重源であった。無名の勧進聖だった重源は、高野山で率いていた阿弥陀信仰に結ばれた念仏聖の組織力を活かし、全国から共同募金方式で浄財を集めた。源平争乱の中、幾多の苦難の末に大仏鋳造と大仏殿修復という一大事業をを果たした重源、その知識や技術の源泉と人物像を描く◆【国宝】東大寺大仏殿、東大寺蘆舎那仏坐像、浄瑠璃寺阿弥陀如来像【重要文化財】東大寺槌印【その他】東大寺縁起絵巻