女優さんを先頭に映画・演劇・スポーツ・音楽・舞踊各界のオールスターが入場税撤廃の陳情に国会に押しかけた。日頃陳情攻勢に悩まされ続けた議員さんも華やかなデモに目を細め、きっとご期待にそうようにと約束した。

英国エリザベス女王のいとこ、２４歳のアレクサンドラ王女が１９６１年１１月１４日に来日。翌日１５日皇居での夕食会は、イギリス王室の美しい親善使節、欧州社交界の花形である王女を迎えて華やかに開かれた。英国王族の日本訪問はグロスター公以来３２年ぶり。ベストドレッサーで知られた王女は歌舞伎座で尾上梅幸の女形ぶりやキモノに目を見張った。また関西旅行では三重県鳥羽の真珠の故郷に向かわれ、真珠の微笑みをたたえながら海女の実演をごらんになった。

福知山市の自衛隊演習場では日本最初の７０ミリ総天然色映画「釈迦」の撮影が最後の追込み。１５００人のエキストラが動員され、７千万円のデラックスセットが次々と崩れ落ちるスペクタクル・シーンのクライマックス。

今国会重要法案、防衛二法案をめぐって与野党が激しく対立する内閣委員会では採決を急ぐ自民党の強行策で審議は難航。１９６１年４月２６日、両党の話し合いで防衛二法案がやっと成立した。次の農業基本法も難問の一つ。農林水産委員会では質疑を打ち切って政府原案を強行可決した。強気の自民党は単独で議員運営委員会を開いて本会議の開会を決定すれば、強行採決に反対する社会党は議長室に押しかけ清瀬一郎議長を閉じ込め本会議を阻止した。そのため本会議は開会できず結局両党の話し合いもまとまらず２９日、大混乱の中を議長職権で本会議を開き社会議員欠席のままで農業基本法が可決された。農民の憲法と言われる重要法案が強行成立する事が農民にとって喜ぶべきかどうか、低姿勢から高姿勢へ転向した池田勇人内閣の姿。

春とはいえ雪におおわれた青森県の八甲田山では自衛隊の訓練が行われている。その昔旧陸軍青森連隊の一部隊が吹雪のため全滅した難所も装備と天候に恵まれて進軍も快調。長野市の善光寺はお彼岸の中日１０万石の大名行列をくり出し御開帳の前景気あおっている。お彼岸とあれば犬猫の仏を供養、東京の多摩霊園は奇特な人間達でにぎわった。また、慶応中等部の３３名の生徒は１０日間の米国旅行に出かけることになり、旅費は１人ざっと４０万円、すねをかじられた両親に見送られて１９６１年３月２３日、羽田を出発した。

１９６１年１０月２日、経済成長ムードにのって第二市場が開設した。折から貿易自由化を目前に設備投資はたけなわ。港は新工場建設資材をつんだ外国船で超満員。しかし輸出の方は伸び悩んで国際収支は赤字続き、手持外貨は１６億ドル台と注意信号、あわてた日銀は１９６１年９月２８日再度の公定歩合一厘引き上げを決定。景気加熱を抑える政策に踏み切り金融引締めによるしわ寄せを一番先に受けたのは中小企業。頼みの綱の親会社から支払いは大部分が手形で東京手形交換所では史上最高の交換枚数を記録した。不渡件数もうなぎのぼりでこのまま行けば年末黒字倒産する中小企業の数は相当数にのぼると予想されている。経済の事はこの私に任せてくださいといった池田勇人首相、このピンチをどう切り抜けるか。

飛騨の匠で知られる岐阜県高山市。寅年を前に、伊勢神宮が初詣の人へお守りとして渡す１万個の木彫りの虎が、香り高い楠木で見事に彫られて行く。一方焼物の町愛知県瀬戸市では、百万個を目標に大小様々な虎作りが真っ最中。動物園では来年はぼくの年と本物のトラ君が出番を待っている。

秋風とともに美術のシーズンがやってきた。団体展の締切まぎわまでねばるのも審査料の値上げなればこそ。上野の美術館では二科会の審査が行われている、目下、売れっ子の林武画伯は画商に追われて製作に懸命、贋作も飛び出す次第。大家たちに挑戦を試みようと地方の画家が東京で開いた展覧会、入りはやっぱり良くない。このところ、若い人たちの間では個展を開くことが大流行。人はみてくれなくとも画廊はどこも予定がぎっしり。それでも１日５千円かかるとあっては若い画家たちはどこに発表の場を求めればよいのだろう。