昭和３３年度（１９５８年度）予算大蔵省原案は、１兆３１２１億円。自民党では政府案が決まるまでに何とか取り分を増やそうとテンヤワンヤ。社会保障費など、大蔵省原案で大幅に削られた関係団体では、陳情やデモ行進を行っている。一方、不景気風に真っ先にさらされた人絹業界は、新年早々約６０００人を解職する有様。こうして職を失った人々がひしめいている時、この春学窓を巣立つ中学生たちの就職試験が始まっているのである。この人たちが、そろって明るい春を迎えられるよう、国の政治が温かい目を向けて欲しいものである。

連日３０度を超える暑さにうだる東京の町。都会をのがれて山に涼を得ようと、辛抱強く列車を待つ人々。海へ向かう自動車の列。車も列車なみの混みようで、海は芋を洗うような大混雑。ゴムボートも定員過剰。保健所員は海水の汚れを検査。海のパトロールが神経を消耗させる沖のボート遊び。ごった返す浜辺の救護所は、溺れた人の世話から傷の手当て、１日１００人を超える迷子の面倒見に手を焼いている。夏は今盛りである。

大相撲初場所１３日目の１９５８年１月２４日、蔵前国技館に皇太子殿下がお見えになり、１２年ぶりに土俵の熱戦をご覧になった。２６日千秋楽、大関・若乃花は若前田（小結）を破り、１３勝２敗で２度目の優勝を遂げたが、一方、横綱・鏡里（９勝６敗）は吉葉山につづいて引退を表明、１６年間の土俵生活に別れを告げることになった。

北海道をご巡遊中の皇太子さまは、阿寒湖で遊覧船にお乗りになり、のぞきメガネで湖底の「マリモ」を興味深くご覧になった。また、ご自分でモーター・ボートを運転されるなど、北海道の旅を心ゆくまで楽しまれた。（週間話題）

モスクワでの漁業交渉が難航を続けるなかで、１９５８年も北洋への出漁期が迫って来た。サジを投げて帰って来た平塚常次郎代表に代わって、赤城宗徳農相が首席代表に決まりモスクワにゆくことになった。一方、東京に集まった漁民代表たちは、あくまでも強い要求を打ち出している。１９５８年３月１７日、壮行会で岸信介首相らから激励をうける代表団、果たして行き詰まった交渉の打開がなるかどうか、前途の楽観は許されないようだ。

日蓮宗総本山の身延山久遠寺に、大映スター・長谷川一夫さんが姿をみせた。長谷川さんは、映画「日蓮と蒙古大襲来」の日蓮上人に扮することになった。白装束に身を改め、清めの水行、３００畳の大本堂で朝のお勤めが始まる。大事な台本をお香で清めて大願成就を祈り、断髪式でハサミが入れられ、由緒ある数珠をいただき、長谷川さんは決意を固めた。

水戸の東武館道場では赤胴鈴之助を夢みる豆剣士たちが、竹刀に振り回されながら稽古に励んでいる。東京の道場ではお嬢さんもまじって空手の稽古。大阪では元軍人の面々が、木銃構えて意気盛んなところを見せている。あの頃を思い出させる銃剣術も、いつの間にか息を吹き返して来たようである。

昭和５０年（１９７５年）の東京。高速道路とモノレールは益々発達してゆく。丹下健三氏は新しい時代にふさわしい建築の設計に情熱を傾けている。気象研究所で人工雨の実験が続けられる一方、宇宙時代の人工食料クロレラが大量生産されようとしている。難しい計算は人工頭脳が一手に引き受けてくれる。明日の設計図は、一歩一歩現実となってゆくのだ。