１９５６年９月２３日はお彼岸の中日、秋日和にめぐまれてお墓参りの人々はひきもきらず。７才の豆和尚さんも壇家廻りに遊ぶ暇もない忙しさだ。ワン君もニャン君も今日は特別の待遇である。東京文京区のお年寄り連は、お詣りだけが能ではないとお寺に集まって体操や踊りのドンチャン騒ぎ。お彼岸の各地の話題である。

「小選挙区法案」をめぐって与党と野党の対立は益々激しく、委員会はいずれももみ合い。法案を本会議に移すまいと、社会党は牛歩戦術と動議戦法で引延ばしにやっきだ。益谷秀次衆議院議長は斡旋案を出したが、社会党の同調を得られず、議長の職権で開いた会議はついに与野党の激突で大混乱に陥った。しかし、１９５６年５月１日に到って、自民、社会両党とも一応議長の斡旋案を承諾、やっと審議は軌道に乗ったが、小選挙区法案の前途は益々多難だ。

競馬ファン待望の第２３回日本ダービーは、１９５６年６月３日、東京競馬場で行われた。２７頭の若駒は小雨けむる中を一斉にスタート、スタンド前でエンメイ、トサタケヒロは落馬、エンメイの阿部正太郎騎手は重傷を負った。観衆８万人が熱狂した波乱のレースは、保田隆芳騎手騎乗のハクチカラが最後の直線で先頭に立ってそのまま独走、見事ダービーの栄冠を勝ち取った。

飛騨の山深くでダムの建設が進められている。湖底に沈もうとする白川村の人々は、ふる里との別れを諦めきれぬ表情で迎えている。大家族の風習が生んだ大きな合掌造りの家、スノコ天井の下で黙々と働く人の姿に古い伝統が残されている。１９５６年９月１５日は高山の秋祭り、飛騨の匠の技を見せる見事な山車は雪国の冬を告げている。

故国への土産にお神楽を稽古するアメリカ娘、もうちょっとした名取だ。こちらは武者修行のアメリカの兵隊さんの居合術、なかなか堂に入ったものだ。（週間話題）

１９５６年３月３０日の朝、韓国から９６名の日本人婦女子が、１０年ぶりに門司港に引き揚げてきた。同じ日の夜、日ソ交渉の行き詰まりから松本俊一全権が羽田空港に帰った。報告を聞く鳩山一郎首相も沈痛な面もち。重光葵外相も思案投首。こうした成行きにソ連抑留者の留守家族は、総決起大会を開き、首相に面会を求めて詰めよったが、満足な答弁を得られず肌寒い堀端で悲痛な座り込みに入った。

山にも夏が来た。八ヶ岳の魅力的な岩肌が若人たちを誘っている。往き交う雲の間を通り抜ければ、頂上はもう目の前。爽快な登山のシーズンがやって来た。

このほど結城紬の名人６人が重要無形文化財に指定された。糸つむぎの大里ふくさん、絣くびりの北村勘一さん、織の北條きのさんたちで、それぞれ何１０年もこの技に打ち込んだ人たちばかりである。