東北の小駅を舞台とし、一人の女に三人の男のさやあてに心中の地を求める老夫婦、恋人を探している不法入国のバングラデシュ青年のエピソードを絡ませて描く人間ドラマ。◆福島県柳津町の駅員、宗形勉（布施博）は、転勤を機に、売店で働く美代子（田中好子）にプロポーズしようと決意する。美代子は東京で離婚幼い娘を連れて町へ戻ってきた。だが、同様に美代子に心を寄せる農家の良雄（益岡徹）も、巡査・砂子田（村田雄浩）も先を越されまいと求婚する。

領国を堅固に治め、民心をつかんだ戦国時代の名将・武田信玄。武田流兵法書「甲陽軍鑑」には“人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、あだは敵なり”という歌が記されている。風林火山で有名な「孫子の旗」の勇将の顔と、夢窓国師・快川国師などを招く禅に帰依した教養人の顔をあわせもつ信玄。その命日４月１２日にちなみ、甲斐の国山梨県の４月はいまも武田信玄一色に染まる。誕生の地から菩提寺まで、ゆかりの場所をめぐって足跡をたどり、今日まで慕われる信玄の人物像を描く。◆【国宝】楯無鎧（菅田神社）【重要文化財】武田信虎画像（積翠寺）、四脚門（恵林寺）【その他】孫子の旗（快川国師揮豪・放光寺）、渡唐天神像（武田信玄筆・恵林寺）

１９９２年６月７日、札幌麻生脳神経外科病院で看護婦たちが独自に行なっている重度の意識障害患者に対する取り組みが放送され大きな反響を呼んだ。放送後病院には５００通の患者家族からの手紙が寄せられた。その中から４家族の闘病ぶりを追い、命の尊さ、現代医療の問題を考える。

日本全国の大根市場を「青首」一種が独占しようとしている。その陰で細々作られている地方固有種の大根の状況を通して、現代日本の農業の姿をかいま見、失われた日本の自然や心の反映とする。◆日本の大根の種類は確認されているだけで１５０種以上もあり、明治３８年の統計開始以来野菜の作付面積第１位の座を占め続けている。そして今、そのほとんどが「耐病総太り」通称「青首」。農家にとっては労力軽減と収益増につながり、流通業者にはスの入りにくさと売り易い形質が有難がられ、消費者には甘くて幅広い調理に適すると喜ばれてまたたく間に普及した。

次郎長親分の代参で金比羅参りに出かけた石松が、帰途、淀の川船の中で清水一家の子分の品定め論を聞き、乗合客に酒肴を奨めるくだりは、二代目広沢虎造の十八番であった。が、実は、初代の玉川勝太郎の演目であったという。虎造節も交えながら、三代目玉川勝太郎が石松道中記の一席を演じる。

ベトナムからトルコ国境へとアジアを東西に横断する“アジアハイウェー”。国連の提唱によって建設され、繁栄と平和の道となるはずだったこのルート上の国々の現状を描くシリーズ。（１９９３年４月２５日～１９９４年３月２７日放送、全１０回）◆第一集は、過酷な現代史を刻みこんだベトナム縦断２０００キロ。ハノイ～ホーチミン間を３昼夜で走る長距離バスに焦点をあわせ、米軍基地のあった土地や特別区などベトナム戦争が残した傷跡を通りながら、すし詰めの乗客たちの人生を紹介。ベトナムの素顔を描く。

再起不能とまでいわれた負傷から回復、選手として復帰を果たした競歩の板倉美紀さんを中心に周囲の人々の姿を追い、彼女の情熱と努力、彼女を囲む人々の愛を描く。◆高校生ながらバルセロナオリンピックに日本代表として出場した板倉選手は、１９９２年練習中に交通事故にあい重傷を負った。苦しみの中でも希望を捨てずに大手術を繰り返し、リハビリを続けた板倉さんは驚異的な速さで回復。マヒと大きな傷跡が残る身体ながら国体の県予選では１位でゴール、国体出場を果たす。周囲の人々は彼女を支え、そして彼女の姿は周囲の人々を勇気づけた。

１９９３年、画家・杉本健吉のアトリエには、木を彫るノミの音が絶え間なく響きわたっていた。音が途切れるのは、画伯がアトリエを出て様々な場所へ出向く日だけであった。遙かな旅と休みなく続けられた創作のなかで、８８歳の画伯が見つめていたのは何だったのかを描く。◆１９９３年９月、杉本画伯は米寿を迎えた。この年、画伯は３２年ぶりに沖縄を訪れたほか、中国・北京での「新・平家物語」の挿絵を中心にした個展の開催、満天の星空を期待して出かけた初めてのモンゴルの旅など、１年間に１万キロを超える旅をした。また、初めて木彫に挑戦し、弘法大師像の制作に励む。そして８８回目の誕生日を迎えた日、これまで生きてきた年月を８８枚の花びらを模した紙に描いて屏風にコラージュし、更に１００歳まで現役であり続けたいという決意を込めて１２枚の白い花びらを描き加え、８８歳の卒業制作を完成させる。