江戸時代は仏像彫刻不毛の時代といわれる。円空仏や木喰上人微笑仏は知られているが、石仏師・守屋貞治の名を知る人は少ない。長野県高遠町の出身。名石の産地で石工として修業に励むうち、高僧・願王和尚と出会い仏師として開眼する。石仏彫刻という厳しい労働を伴う制作を続け、６８年の生涯で三百体を超える名品を残した。歳月の重さで石は欠け、苔むしているが仏の温顔は消えていない。江戸彫刻の中で新たに脚光を浴びる名仏師の不屈の生涯に迫る。◆【重要文化財】光前寺弁天堂【その他】延命地蔵大菩薩（海岸寺）、西国三十三所観音（海岸寺）、十一面千手観世音（海岸寺）、六地蔵（東福寺）、願王地蔵大菩薩（温泉寺）

かつて一緒に昔話を聞いた５人姉妹が一緒の舞台に立ち、父から受け継いだ昔話を語るという夢を長年もち続けてきた民話の語り部の女性。その夢が叶うまでを追う。◆民話のふるさと岩手県遠野市に住む鈴木サツさんは８３歳、５０年間各地で昔話を語ってきた。サツさんのすぐ下の妹・正部家ミヤさんも、足の不自由なサツさんを支えながら全国各地にでかけ、遠野の民話を語り継いでいる。幼いころ父・力松さんの膝の上で、父の目を見ながら父の声で聞いた昔話は、サツさんの心に深く染み込んだ。「父は私に生きがいをくれた」とサツさんは語る。彼女の夢は、同じように力松さんから昔話を聞いた５人の姉妹が一緒の舞台に立つこと。その夢が叶う日がやってきた。

　『わだば、ゴッホになる』。１９２４年秋、貧乏青年だった棟方志功はこの言葉を残して青森駅頭を去った。後に版画の巨人となった志功は、津軽の風土と人を何よりも愛し、しばしば帰郷の旅を重ねた。７５年秋、文化勲章受章を記念して、記念館が開館した。じっくりと作品を見て貰いたいという彼の意志で、小さな建物であるが、世界の棟方の原点となった「釈迦十大弟子」など、初期、中期の代表的な作品を鑑賞できる。（青森市）

終戦を境に激しい価値観の変化をみた昭和という時代。「昭和」を語り継ぐことをライフワークとする澤地久枝さんが、その時代を生きた人々の人生から昭和という時代を見つめる。（１９９４年４月４日～６月２０日放送、全１２回）◆第２回は、満州事件の発端となった柳条湖事件という「有事」に対する「作為」のありようについて考える。

父親は単身赴任、息子は遠い大学に行き、娘はマンションで一人暮らし。残された母親は暇と寂しさを紛らわすために習いごとに熱中する。全員がバラバラに生活し、たまに連絡を取り合うような“ネットワーク家族”。皆、正月に取りあえず家に帰っては来たものの、そこにはそれぞれが家族に隠していた問題がまち構えていた。◆息子はカード破産寸前、娘は同せい騒ぎ、そして夫は不倫、現代の家族が抱える問題を描く。

“秋を訪ねて”と題して、生田流の「砧」、山田流の「松風」の筝曲二題を鑑賞する。砧とは、布を柔らかくし、艶を出すために、台の上で木の槌で打つこと。秋から冬の女の夜なべ仕事とされ、源氏物語の時代から、秋の風物詩として描かれている。曲は砧の打つ音を取り入れ、拍子のはっきりした、短い音型を反復する「砧の手」が特徴である。「松風」も秋を表現する代表的な筝曲で、合奏と共に流れる唄の歌詞が、秋の趣向を一層盛り上げている。ゲストの寿岳章子さんは“京の秋”を語る。◆筝曲「砧」（生田流）、筝曲「松風」（山田流）、米川敏子【人間国宝】

偉人、有名人、人知れずに大事を成し遂げた人など、福島にゆかりある人物の足跡をたどり、その人の業績と人柄を描くシリーズ。◆渡辺鼎は、世界的医学者野口英世の少年時代に彼の左手を手術、医学の素晴らしさをその胸に刻みこんだ外科医として有名な人物である。野口英世の生涯もおりまぜながら、渡辺・野口二人の関係を描く。◆１８５８年（安政５）、現在の福島県西会津に生まれた渡辺は、１４歳で横浜に出て医学を志す。陸軍軍医試験に合格し、警視庁病院に勤務、１８８６年に単身渡米しカリフォルニア大学で医学を学んでドクトルの称号を得、外国で開業した初の日本人医師となる。１８９０年に帰国、会津若松市で会陽病院を開いた。そこで１５歳の野口英世のやけどで癒着した左手を手術、その後、彼の熱意と才能にうたれ援助の手をさしのべる。

　写真家土門拳は、１９０９年、酒田市に生まれた。リアリズム写真を確立した巨匠として、世界的有名な写真家となったが、報道写真の鬼とよばれた時代もあり、「ヒロシマ」、「筑豊の子どもたち」など敗戦後の日本の社会を鋭く描き、人々の心の奥底に強く訴えかけた。ライフワークの「古寺巡礼」をはじめ、「室生寺」、「文楽」、「風貌」、「古窯遍歴」、「日本名匠伝」など、いずれも不朽の名作群として評価が高い。（酒田市）