大太刀とはそのとおり大きな太刀である。普通の太刀は刃渡り２尺３～５寸（８０センチ前後）、大太刀となると３尺（１メートル）を超えるものをいう。岡山・吉備津神社で見つかった長さ４メートルのさびた鉄の棒が“備前長船法光”へと再生していく研磨の過程を追いつつ、鍛え上げられ美へと昇華していった太刀の魅力を見つめなおす。そして数々の名刀を紹介しながら、単に大きさだけではなくそこに秘められた歴史的意味と“妖しの美と祈り”を探る。◆【国宝】太刀・銘備前国包平作（東京国立博物館）、大太刀・千手院長吉（大山祗神社）、丙子椒林剣（四天王寺）、黒漆平文拵御霊剣（鹿島神宮）【その他】大太刀・銘備前長船法光（吉備津神社）、大太刀・銘末之青江（熱田神宮）

棟方志功の命名という「優佳良織」。アイヌの工芸以外に特有の織物文化のなかった北海道に、旭川市在住の織元・木内綾さんが１９６２（昭和３７）年来独自の手法で創り出した毛織物である。羊毛を素材に、モチーフは北海道の自然。鮮やかな北国の自然を表現するためには日本古来の草木染では色数が足りず、伝統の技術に束縛されることのない北海道の風土の中で、木内さんは奔放な色の世界を築き上げた。旭川市の工房で木内さんの優佳良織への挑戦が続く。

亀岡と嵐山の１６キロを船で結ぶ保津川下りは、江戸時代のはじめに京の商人が水路を開き、以来４百年近く受け継がれてきた。舟下りの技と心、船頭たちの船さばきはますます冴えを見せている。◆トロッコ列車が川下りと並ぶ保津峡の風物史となっているが、運転開始は僅か４年前のこと。保津川の鉄橋の上では一時停止して、最高の展望台のサービス。また、川下りの船と並んで、速度を合わせて走ることもできるという溢れる緑の中を縫って、船頭たちはきょうも保津川下りの船を操る

九州で唯一の厚生省認可ホスピス医療施設を持つ亀山栄光病院を１年間取材。２４床のベッドで進行する生命のドラマを記録する。◆春夏秋冬、朝昼夜と孤独なたたかいを強いられた患者を見つめ、支え、平穏な死への医療技術の限りを尽くす病棟のスタッフ。退廃と絶望から始まったドラマの多くは、感謝のメッセージで結末を迎える。キリスト教的アプローチの同病院のほかに、新潟県長岡西病院のビハーラ僧の活動、また日本的終末医療としての「臨終行儀」を宇治平等院に取材し、静かで荘厳な生の終わりを描く。

京都の愛宕念仏寺の住職であり、仏師であり、幾多の国宝の仏像修復技術者でもある西村公朝さんが仏像鑑賞法を検証する。鎌倉時代の快慶ですら得られなかった天台大仏師法印の称号を受けたほどの西村さんが、仏像への敬虔な祈りの造形とは何かを問う。電灯で上方から照らすのではなく、昔のようにろうそくや灯明のほのかな明かりで下方から照らされ、仰ぎ見る仏像の表情。ほんの百年前の人々が見ていたもの。美しさと共に人々の心に映じていた真の仏の姿を現代人に説く。◆【国宝】五大虚空蔵菩薩諸像（神護寺）、阿弥陀三尊立像（浄土寺）、弥勒菩薩像（広隆寺）、阿弥陀如来立像（平等院）、風神・雷神像（蓮華王院）、沙羯羅竜王（延暦寺）、本尊釈迦如来像（清凉寺）

清和源氏の流れを汲み、十代二百三十年のあいだ続いた武家の名門・今川氏。しかしその姿は徳川三百年の下に埋もれてしまっている。戦乱の渦巻く時代に、長く栄えた今川一族の謎に迫る。（１０月８日～１２月２４日放送、全１２回）◆義元が桶狭間の戦いに敗れたあと、この子氏真が弔い合戦を挑まなかったのはなぜか。桶狭間で有力な家臣が落命していたこともあるが、多くの家臣が自分の家を守るためより強力な大名の元へ散っていってしまったことも理由である。二君に仕えずという美徳は江戸時代にはいってからのもので、当時は上下の絆はそれほど固くはなかった。

シケ続きで船が出ず、産地ではみかんが腐ってゆくばかりの年のこと、紀州和歌之浦の廻船問屋の若き紀伊国屋文左衛門は、みかんを江戸に運び、大儲けしようと考える。父の代に零落し、船は質入している一隻のみ。妻の父から大金を借り、船を質から出し、命知らずの船頭を雇い、みかんを買い占める。一か八かの賭けに出た文左衛門、死に装束に身を固め、みかんを満載した船で、シケの中を江戸に向けて出て行く。

女世帯に見知らぬ女が訪ねてきて母を脅す。母には何か秘密があるらしい。原作：向田邦子。◆昭和２０年３月、東京・目黒にある雨宮家では、母・佳代（岸恵子）と文子、昭子、富子の３人の娘が暮らしている。父親はすでに亡く、長男・浩一は出征している。おじ・辰夫（藤田敏八）が面倒をみてくれるが、女所帯は何かと心細い。雨宮家に見知らぬ女性・ハル（江波杏子）が訪ねてきた。ハルは佳代に金目の物を要求し、たまりかねた文子（清水美砂）はハルと口論になる。その時、文子は佳代が父親以外の男と写っている写真を見つける。佳代は男について何も語らない。突然、浩一（筒井道隆）が戦地から帰還。浩一は文子だけを呼び出す。