使用人には厳しく当たるがしっかり者と思われている番頭が、隠れて花見遊びへ行き浮かれているところでバッタリ主人と出会ってしまう。慌てた番頭は「これはこれは、お久しうござります…」と訳の分からぬ挨拶をするが、主人は番頭の立場を思ってその場をやりすごす。翌日主人は番頭を呼び、自分の才覚で遊ぶのは良いが、時には下の者にもゆっくりさせることが大事とさとす。ところでと主人が昨日の挨拶の意味を聞くと番頭は恐縮して「これでもう百年目と思いました」。

歌舞伎十八番の曲、江戸の荒事の代表作である。荒事だけでなく人間的なテーマを扱ったところが人気を得ている要因。◆鳴神上人が竜神を滝つぼに封じ込めて雨を降らせないので、宮廷の命で雲の絶間姫が色仕掛けで上人を堕落させ、滝のしめ縄を切って雨を降らせる。裏切られた上人が雷となって追いかけるところは荒事の見どころのひとつ。いろいろな「見得」は、ストップモーションにあたる演技のひとつである。◆副音声は英語

　〔ケーシー高峰〕健康の秘訣と題して、お客さんに得意の医学講義をはじめる。医者の白衣を着てもっともらしい話を笑いにすり替えてたのしませる。◆〔柳家紫朝〕粋曲を集めて披露する。サノサ節、都々逸、新内、大津絵など、酒席でもたのしめる音曲は、一般ではなかなか聞く機会がないので珍しい。

シェルパ（登山ガイド）の少年に自転車を贈るという、死んだ父の約束を果たしに、息子はヒマラヤへと向かう。荘厳な美しさをたたえたヒマラヤの景観をバックに、二人の少年の友情とそれを見守る海外青年協力隊の若い看護婦の人間愛を描く。◆カメラマンの和人はヒマラヤで世話になったシェルパのパサン少年に自転車を贈る約束をした。しかし和人は帰国直後がんに倒れ、約束を息子・秀人に託して死ぬ。ネパールに来た秀人は日本人看護婦・衣里香の世話になる。秀人と衣里香はようやくパサンのいる村に着いたが、彼は二人を無視して走り去る。

竹と日本人。松・梅・桜とともに日本の代表的風景。日本文学の元祖「竹取物語」をはじめ、東大寺二月堂のお水取りや高千穂夜神楽などで神格化された竹。民具の中に生きた竹。桂離宮や銀閣寺の生け垣に反映する竹。千利休の茶の湯で渋味を添えた竹。美術工芸の中で発揮される素材としての効用など。竹に無常を感じ特別の思いを寄せる日本人の心情を見つめ、現代の竹工芸・茶筅の制作現場とともに、日本人が到達した竹の美を総覧する。◆【重要文化財】竹林七賢人図（円山応挙筆）〔金刀比羅宮〕、竹梅図屏風（尾形光琳筆）◆【その他】竹取翁并かぐや姫絵巻物〔宮内庁〕、竹茶杓銘泪〔徳川美術館〕

何不自由のない生活ではあっても先の見えた人生に無力感を感じている中年男が故郷を訪ね、初恋の人に生き写しの少女に出会う。◆悟は２年前に勤めていた不動産会社が倒産したのをきっかけに趣味のカレー屋を始めた。妻と娘との３人暮らしで店もそこそこうまくいっているが、何か満ち足りない気持ちを抱えている。そんなある日、故郷・岐阜から同級生の死の知らせを受け、ふと故郷を訪ねてみる。なつかしい校舎を眺め、街を行くうちに路面電車の車窓に中学時代好きだった少女・緑そっくりの少女をみかける。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は、「グレンウッド・キャニオン」と題して、アメリカ合衆国・カリフォルニアゼファー号、大陸横断鉄道（デンバー・ウンターパーク・グレンウッド・スプリングス・ルビー・キャニオン）を紹介する。

新たに重要無形文化財保持者（人間国宝）に指定された伝統芸能の達人に話を聞き、その至芸を鑑賞する。今回は、花柳壽楽さんと常盤津文字兵衛さんに常盤津「松島」を。山口五郎さんに「巣鶴鈴慕」を披露してもらう。◆３人はいずれも父を師匠にそれぞれの芸道を歩み、今日に至った。国から芸を認められたという喜びと同時に、後継者を育てなければならないという使命感を強く感じていると異口同音に語る。◆「松島」は明治時代に作られた曲で、民謡の節回しなどが取り入れられている。また「巣鶴鈴慕」はツルが子を育て巣立たせるまでを表現したもの。