作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔を探るシリーズ。◆戊辰戦争で行方不明になった両親と妹を探すことに一生をかけた、いわき出身の歌人・天田愚庵。山岡鉄舟と巡り会い、一時は清水次郎長の養子になるなど全国を放浪し続けて、晩年は出家し京都に庵を構えた。短歌・俳句で明治の文学界に多くの業績を残した愚庵の生涯を紹介する。

時としてわずらわしくさえ感じることがあっても、離れてしまうことはできない“家族”の絆を描く。（１９９３年３月２５日終了、全１１回）◆兄、並木公平（武田鉄矢）に勧められた見合いを明日に控え、花（安田成美）は困っている。妻子のある恋人がいるので断りたいのだが、母の亡き後苦労して弟妹の面倒を見てくれた公平には言いだしにくい。もう一人の兄・清次（陣内孝則）に事情を話して頼むが、清次も公平には全く頭が上がらない。父・邦太郎（大滝秀治）も上京し、ついにそのまま見合いの席につくことになる。

わずかに動く左足を使ってできることは何でも自分でやる、木村浩子さん（５６歳）。その生活を短歌に詠み、３千点におよぶ俳画を描いてきた。ひたむきに生きる姿を、自らの努力で広げてきた親しい人々の輪の中で描く。◆脳性マヒの重度障害を持つ木村さんだが、沖縄の伊江島で民宿「土の宿」を営んでいる。結婚、出産、離婚、さまざまな体験をしながら、歌人・画家としても活躍する彼女の生活と作品を紹介する。

道楽者の若旦那がいた。嫁をもらったがすぐに家を空けてしまう。嫁は郷里に戻ったが病に倒れ、大旦那が見舞いに向かった。若旦那はこれ幸いとなじみの芸者、菊江を家に招いて大騒ぎ。そこへ急に大旦那が帰って来たので、若旦那はあわてて菊江を仏壇の中に隠す。

歌舞伎十八番の一つ「勧進帳」を女だけで演じる「女勧進帳」は、終戦後、芸者衆が演じたのが始まりだが、現在では、九州の熊本で舞踊家として活躍している花柳〆太郎だけが受け継ぎ、公演活動を行っている。振付の花柳年之輔は、歌舞伎の「車引き」からとった「女車引き」があるように、舞踊としての「女勧進帳」があっても良いのではないかと考えたという。理屈ぬきに楽しめる踊りを志したというが、その時のいきさつ、振付の苦心談などをまじえ、華やかな踊りを楽しむ。

１９９２年秋、未踏峰では世界最高峰の中国・ナムチャバルワに日中合同登山隊が挑み、成功した。大雪・強風・寒さといった厳しい自然の猛威と闘い、克服していく１２人の山男たちの全行程８０日間を同行取材し、記録する。◆合同隊は前年もナムチャバルワに挑んだが、隊員一人を雪崩で失い、強風と寒さで無念の撤退をしている。今回は新たに気象の専門家を加え、複雑な山の気象情報を事前に正確に把握、好天を狙って一気に登頂した。

中国・ゴビ砂漠とエジプト・サハラ砂漠、それぞれの緑化運動に情熱を注ぐ父子の活動を紹介する。◆鳥取大学名誉教授の遠山正瑛さんは、園芸の仕事を志したとき恩師に「動植物には一日も休みはない」と言い渡された言葉を守り、８５歳まで元日の午前中以外休んだことがない。１９４１年鳥取高等農林学校に赴任して砂漠の開発利用研究に没入、鳥取砂丘の農地化に成功した。大学退官後は日本砂漠緑化実践協会が募集する緑の協力隊を引き連れ、年の半分はゴビ砂漠に赴く生活。◆正瑛さんの長男、鳥取大学助教授の柾雄さんは大学のスタッフと共にサハラ砂漠で作物の栽培実験を行っている。

多くの名作ドラマやドキュメンタリーの演出で知られる今野勉が、炭坑夫だった父からきいた不思議な伝承の生まれた背景を探る、自伝的ドキュメンタリー。◆死んだはずの坑夫が命を落としそうになった坑夫を助けに現れたという物語や、ガス爆発で火傷を追った坑夫の家を見舞い客に化けた狐が訪れ、かさぶたを食べさせて殺してしまったという物語など、炭坑には生死にまつわる不思議な話が多く語り継がれてきた。知人やかつての同級生を訪ね、多くの証言と資料あつめてたどりついたのは、１９６８年の夕張市平和鉱事故の悲しいエピソードだった。かつての日本を支えた人々の死を語り継ぐ鎮魂歌。