国の天然記念物のノグチゲラやヤンバルクイナの住む沖縄本島北部の山林は今、開発が進みこれらの生物が絶滅の危機に直面している。この現状をとらえ、自然保護に全力を傾注する鳥獣保護要員らの生きざまをとらえ、環境保全の大切さをアピールする。

赤潮やアオコで汚れた琵琶湖を、再び生物が住める美しい湖にしようと力を尽くす地元の人たちの活動を取材したリポート。びわ湖放送開局１５周年記念の特別番組として放送された、琵琶湖の環境問題を提起する番組。かつて琵琶湖は、セタシジミなどが生息する清く澄んだ湖だった。ところが１９７７年（昭５２）の赤潮発生を発端に、アオコの大発生や水位低下など、湖の生命をおびやかす現象が目立つようになる。周辺地域の人々は、それぞれの立場から美しい琵琶湖再生のために活動しはじめ、８５年（昭６０）９月には「南湖にセタシジミを取り戻す運動連絡会」を結成し、美化運動を盛り上げる。果たして、セタシジミは琵琶湖に戻ってくるのだろうか。

中国残留孤児の定義は「終戦時１３歳未満の者」に限られていた。そのため本人の意思で中国に残ったと見なされ、援助対象からも外されてしまった人々の戦後を追い、忘れられようとする中国残留婦人の問題を探る。◆そのほとんどは青春を旧満州で過ごした女性たちで、敗戦の混乱によってとり残されてしまった。遼寧省に住む張淑琴さん（日本名は沢田菊子、５７歳）は大連に生まれ、４歳で父母と死別して以後中国人と日本人の養父母に育てられて中国人と結婚した。終戦当時は１６歳、身元がわからないため日本への引き揚げもできなかったという。

さいはての自然の中で生活する４人家族の日常を、小学１年生の深雪ちゃんを中心に描いていくドキュメンタリー。◆北海道標津町の久保俊治さんは、知床山麓に広がる肉牛牧場の管理人。自らも９０頭の牛を飼育しているが、家族のほかに働き手もなく、つつましく生活している。しかし、妻の妃路美さん、長女の深雪ちゃん、次女の渓女ちゃんともども知床の自然を愛しておおらかに暮らしている。深雪ちゃんは春から小学生。自宅から学校までの距離は４キロメートル。途中に民家もない山の中の道だが、俊治さんは深雪ちゃんを歩いて通わせることにする。

まだ大自然が豊かに残る南米のアマゾンには無数の動物が生息している。中には一般にはほとんど知られていない昆虫類もいる。２カ月に及ぶ取材で世界でも初めて撮影に成功した珍しい昆虫や思わず目を見張るシーンなど、迫力ある場面を紹介する。◆昼夜なく行進し、その通った後には草も生えないといわれる「軍隊アリ」の大行進。見た目も恐ろしげな巨大毒グモに卵を産みつけるベッコウバチ。頭部がワニそっくりなユカタンビワハゴロモなどアマゾンならではの多種多様な生き物たちを紹介する。

一つきの梵鐘の音。その余韻は山上に重く、町中には軽く、荘厳さと平和の安らぎを運ぶ。◆香取家は代々梵鐘製作にたずさわる家系で、父・秀真も鋳金作家として名高い。戦時中梵鐘を供出した多くの寺の再建の熱意が、親子合作を手がけさせたこともある。鐘の内側に彫り込む図案づくりから鋳込みの緊張の一瞬まで、米寿を前にした作家の鋭い眼差しを追う。

太夫・三味線と共に人形遣いで文楽は成り立つが、足遣い十年といわれる芸の真髄を吉田玉男に聞く。◆人形遣いは首こしらえから着付けまで参加しなければならないが、人形を遣うについてはいつも人間よりも人間らしく、心を込めて遣うと話す吉田。文楽の将来の隆盛のために若い人の中からスターが出てくることを希望している。

能は舞を伴う歌劇であり、美を追求する演劇である。能を支えるのは心と肉体である。近藤乾三に能の真髄を聞く。◆師から「下手になれ」と言われ、８２歳で病に倒れたあとも芸に精進する近藤乾三はダイナミックな能や幽玄な能に秀でる。動きの絶えた演技は人間の究極の表現であり、生の感情を殺した面は無限の感情を表していると説明する。