九州の洞海湾でゴンゾ（石炭沖仲士）として出会った男女が、多くの試練と苦しみの末に結ばれて自分たちの組を結成するまでを描く。◆腕っぷしは強いが、けんかは嫌いだという金五郎（高嶋政宏）、彼を叱咤するマン（古手川祐子）はともに故郷を捨て、ゴンゾとして働いている。金五郎の働きで２人のいる永田組が仕事をとり、対抗する友田組では永田組の古株・角助（白龍）を抱き込んで金五郎を襲わせる。

１７１６年、江戸の画壇は転換期を迎えた。光琳の死と蕪村の生誕である。蕪村は大器晩成型。４０歳代にして世に出る。俳句の師・芭蕉に傾倒し、それまで画業行脚の旅を続ける。世俗を離れつつ、俗に生き、低俗にならず、独自の俳諧と俳画という枯淡の境地に達する。俳諧の草画といわれる「俳画」を完成、池大雅と組んだ『十便十宜図』は文人画としての光を放つ。写実と見えてその奥行きに深い自然感を込めて、精神性のある作品を世に問う。◆【国宝】十宜図（与謝蕪村筆）〔川端康成記念会〕◆【重要文化財】奥の細道図〔山形美術博物館〕、山野行楽図〔東京国立博物館〕

死んだ資産家の本妻・妾・小姑とが巻き起こす珍妙な騒動を軽妙なタッチで描く「三婆２」。有吉佐和子原作。◆今は亡き資産家の本妻・松子（草笛光子）、妾の駒代（加賀まりこ）、妹のタキ（菅井きん）の３人。小料理屋を開店してはみたものの意見の対立から店を閉めてけんか別れと相成り、バラバラに暮らしていた。半年後、松子の住む伊豆の古ぼけた洋館に駒代とタキがやって来た。独りの生活はやはり寂しいと三人はまた一緒に暮らしはじめるが、このまま何も残さずに死ぬのも寂しいとペンションを共同経営することにする。

（松鶴家千代若・千代菊）民謡を織り込んだ歌謡漫才で、相馬の馬追唄や都々逸を披露して笑わせる。／（東京太）世相風刺の漫談。子供のしつけが悪くなったと嘆き、家庭の話から女性の年齢による暮らし方の変わりようまでをおかしく語る。

１７世紀、スペインの王侯貴族社会で宮廷画家として生きたベラスケス。画家として有名となった彼の実生活は、宮廷役人として忠実に仕える日々であった。最晩年に描いた傑作「ラス・メニーナス」は、国王一家をスナップ風に描いた絵であるが、注文されて描いたものではなく、画家としての誇りを絵にぬり込めたものだった。王室の中に堂々と自画像を描き、後にその胸に、与えられた名誉ある貴族集団の紋章を描き加えたとされる。宮廷画家としての素顔が垣間見える。◆ディエゴ・ベラスケス（１５９９～１６６０）「宮廷の侍女たち（ラス・メニーナス）」１６５６、「マルタとマリアの家のキリスト」１６１８、「卵を料理する老婆」１６１８、「フェリーベ四世」１６２１－６５、「王女マルガリータ

中国山地の私立病院に入院している老人たちに焦点を当て、豊かな国といわれる日本の超高齢化社会の厳しい現実を伝える。◆ベッド数５５０床の私立病院の９割を占める老人たち。平均年令は８２歳、なかには１０年以上も入院している人もいる。村の家を出てそろって入院してきた老夫婦、だれもいなくなってしまった村のお地蔵様をベッドサイドで守っている人、寝たきりになった幼なじみの世話をしながら入院している人。互いに面倒を見合っている彼らは、退院しても安心して帰れる場所がない。

竹本住大夫さんと鶴澤燕三さんの義太夫「生写朝顔話・宿屋の段」を鑑賞する。◆「生写朝顔話」は「朝顔日記」ともいい、芝居や歌舞伎のファンにはお馴染みの江戸時代版『君の名は』。この「宿屋の段」は、別れ別れになっていた主人公の男女が宿屋で思いもよらぬ再会を果たすというくだり。◆住大夫さんは「主人公・深雪の可愛らしさをどう表現するか」。燕三さんは「失明した深雪の悲しさを秘め、しかも音曲として楽しめる演奏」と、この作品を演ずる難しさを語っている。

漫画家・水木しげるの少年時代をつづった自伝をもとにした、不思議と冒険のドラマの総集編。◆昭和９年、鳥取県境町。村木茂（佐藤広純）は小学校６年になった。近ごろ、茂の妖怪談義を友達が素直に信じなくなり、まともに語り合えるのは、師匠の“のんのんばあ”（山田昌）だけしかいなくなっていた。しかもガキ軍団の大将争いで、１つ年上のカッパに負けた茂は、友人たちの間で村八分にされてしまう。そんなある日、海岸通りにある“たたりものけ”が取りついた家に新しい家族が越してきたと、のんのんばあが茂に告げに来る。