税金に不平不満のある方はどうぞと、国税庁では納税者の声を聞く旬間中、全国に苦情相談所を作った。一万田尚登大蔵大臣も街に出て愛嬌よく質問に答えている。（週間話題）

飛騨の山深くでダムの建設が進められている。湖底に沈もうとする白川村の人々は、ふる里との別れを諦めきれぬ表情で迎えている。大家族の風習が生んだ大きな合掌造りの家、スノコ天井の下で黙々と働く人の姿に古い伝統が残されている。１９５６年９月１５日は高山の秋祭り、飛騨の匠の技を見せる見事な山車は雪国の冬を告げている。

第１３回学童歯磨き訓練大会が、１９５６年６月４日、神宮外苑競技場で華やかに開かれた。都内１８０校の小学校と、幼稚園の良い子たち４００００人が集まり、元気に歯磨きのおさらい、そして「くまの子りすの子」の歌を仲良く歌った。口腔衛生週間の一コマである。（週間話題）

終戦の日、８月１５日。１９５６年も皇居前に襟を正す参拝者の姿が見られる。しかし、街は戦いの苦しみも忘れてしまったような表情である。軍人の銅像は片隅に忘れられ、未亡人は内職で細々と暮らしている。自衛隊はふくれあがり、基地のために人々は肩身の狭い思いをしている。日ソ交渉は思うにまかせず、目下難航中だ。こうしたさなかの１９５６年８月１９日には、ナホトカから第８次のソ連帰国者が舞鶴に帰って来た。しかし、日本国民は日一日と前進を続けている。

豪華船プレジデント・クリーヴランド号でハリウッドの映画制作者サミュエル・ゴールドウィンらが、１９５６年３月３１日、横浜についた。春とともに映画人の国際交流はいよいよ盛んなようである。（週間話題）

秋風の美術シーズンが幕を開けた。秋風立つ箱根で親子水入らずの制作は辻永画伯、阿蘇の自然に打ち込む田崎広助画伯、幻想的な壁画に最後の筆を入れる東郷青児画伯。豊かな大家にくらべて、アルバイトのモデルをしながら絵の修業する女性、屋根裏のアトリエで大作と取組む新進画家、激しい労働の合間に制作する労働者等、シーズンを迎えて大家、新人それぞれに、忙しい芸術家の姿だ。

吉田茂派など自由民主党内の反主流派は、領土条項に満足できぬと日ソ共同宣言の批准に益々冷たい態度をみせている。特別委員会で、野党は鳩山一郎首相に与党内の不統一を突いた。それを裏付けるように南千島（歯舞、色丹、国後、択捉の４島）の返還をはっきりせよと毒づく吉田派、また社会党は逆に政府を鞭撻するという有様、攻守ところを変えた国会風景である。ついに自由民主党は日ソ国交回復の承認を多数決で決め、反対派を押し切った。一方、スト規制法存続をめぐって、労働組合の反対はいよいよ激しくなって来ている。こうした中で、１９５６年１１月２６日スト規制法は衆議院社会労働委員会で可決され、多くの問題を残したまま舞台はいよいよ参議院へ移ることになった。

大相撲夏場所８日目の１９５６年５月２７日、天皇陛下は蔵前の国技館においでになった。相撲がお好きな陛下は横綱（吉葉山）の手数入りや、結びの１番千代の山（西張横綱）と鶴ヶ嶺（西関脇）の取り組みまで熱心に御覧になった。