１９５６年１１月２２日、１１万の大観衆で埋まったメルボルン・オリンピック・メインスタジアムでは、世界６７ヵ国４千人を超える若人によって、「民族の祭典」第１６回オリンピック大会の華やかな開会式が行われた。各国の選手団は、民族特有の色とりどりの服装で次々に入場、中でも日本選手団の整然たる行進はスタンドの賞賛を浴びた。午後４時２５分エジンバラ公の開会宣言が行なわれ、遙々とギリシャから主催国オーストラリアへとリレーされた聖火が、金色の聖火台に赤々と点ぜられた。大会２日目、女子円盤投げ決勝、チェコのフィコトワは５３ｍ６９ｃｍを投げ、オリンピック新記録で優勝。日本の吉野トヨ子は惜しくも予選で失格だった。１００００ｍ決勝は、ソビエトのクーツと、イギリスのフィリーによる息詰まる接戦の末、２８分４５秒６のオリンピック新記録でクーツが優勝。日本選手の活躍が期待される重量挙げバンタム級では、アメリカのヴィンチが３４２．５キロで優勝。日本の古山征男はよく頑張って８位に入った。この日、日本選手はよく健闘し、バンタム級では南部良雄が３０５キロの日本新記録で第６位、フェザー級では白鳥博義が３２５キロの日本新記録で堂々第５位に入賞した。こうして国境を越えて結ばれたスポーツの祭典は、２週間にわたる豪華な幕を開けたのである。

東ヨーロッパ諸国の怒濤のような動きはポーランドから始まった。ポーランド統一労働者党中央委員会は、ロコソフスキー元帥らを政治局からはずし、ゴムルカ氏を党第一書記に選出した。ゴムルカは労働者代表に対してポーランド独自の政策を約束、その支持を要請している。ハンガリーの重大な事態とあわせて、東ヨーロッパ諸国のソビエトへの動向が注目されている。

１９５６年１０月１１日午前３時過ぎ、比叡山延暦寺の大講堂から出火、付属の建物仏像など、数々の重要文化財を灰にした。大講堂は江戸時代初期の手法を残した建築で、その消失が惜しまれている。火災の原因は明らかでなく、文化財管理の再検討が望まれている。（週間話題）

秋の東京六大学野球リーグ戦は、１９５６年９月８日に神宮球場で開幕。第１試合の早稲田大学対東京大学は、１対０で東京大学が７年ぶりに早稲田大学を破った。（スポーツ）

東京をはじめ武蔵野にある古代遺跡は、風雨にさらされたり、工事のため潰されようとしている。国宝級の建築物も崩れかかっている。福島県須賀川の「蝦夷穴」と呼ばれる遺跡も、今は浮浪者の住家という情けない有様。大阪府堺市郊外の「いたすけ古墳」も、宅地に売られて姿を消すところだったが、地元の人々の反対で危うく命拾いした。こうして、予算の裏付けの乏しいわが国では、文化財の保護は心ある人々の熱意だけにかかっているようだ。

第１７回ヴェニス国際映画祭で、日本映画はこの年初めて設けられたサン・ジョルジオ賞を受け、市川崑監督の「ビルマの竪琴」が最優秀作品の折り紙をつけられた。日本映画の水準の高さを認められた明るい話題であった。（週間話題）

３００年の伝統を誇る福島県白河の馬市は、１９５６年９月２９日がフタ開け。東北、北海道から４００頭が出場して大変な賑わいだ。つき添って来た家族たちは赤飯で愛馬と最後の別れを惜しむ。セリが始まると威勢のいい掛声とともに、白河特有の符牒で取引が行なわれ、シャンシャンと手打ちがすめば、売れた馬は業者の手に渡され、家族との別れを惜しみながら全国に散って行くのである。

第１１回国民体育大会夏季大会は、１９５６年９月２２日、西宮市甲子園プールの開会式で幕を開けた。好記録続出の水上競技、西宮港のヨットレースなど４日間にわたるスポーツの祭典が繰り広げられた。（週間話題）