山形県西川町大井沢は、長い冬と短い夏という厳しい気候の山岳地域の村だ。真冬は４メートル以上の積雪があり、初夏の６月でもまだ雪は消えない。現在も１１４世帯、２９０人が暮らす。１００年前、その大井沢に暮らす志田荘次郎氏の家に女の子が生まれ、周子（ちかこ）と名付けられた。彼女は地元の学校を卒業し、東京都内の医師養成学校に入学、その後父親の要請により故郷の大井沢に戻り、無医村であったその村に初めて医院を開業する。この医療活動によって多くの村人の命が救われ、大井沢は健康で安心して暮らすことが出来る村になった。一生涯をその村での医療活動に捧げ、５１歳という若さで亡くなった志田周子さんの生涯を、女優のひとり語りで描くラジオドラマ。脚本：今田裕美子、大久保円、出演：今田裕美子。

すい臓癌とともに生きた女性の川柳とブログを元に構成したドキュメンタリードラマ。◆４５歳の望は、看護学校に通う娘・美咲と二人暮らし。背中や腰の痛みは老人介護の職業病と考え、仕事を続けた。そんな彼女に、すい臓癌の診断がなされ、やがて告げられた「余命半年」。彼女は半年後の２０１０年４月３０日を「死亡予定日」とし、「淡々と生きることにした日常」を、ブログ『ガンと機嫌よく暮らす』に綴ることにした。そこには、娘の看護師国家試験の受験準備、自分が乗った列車が人身事故に遭遇した時の思い、最期になるであろう娘の誕生日祝いなどのエピソードが綴られている。そして、『吐くものか！これは高価な　薬なり』、『毎日が　ジェンカゲームの　末期がん』、『がんだけど　計画たてるのは　自由』等、その時々の思いを込めた川柳。軽やかに、時にユーモラスに綴られたブログを通して、まっすぐ命と向き合う姿を描く。

農作業を通して不登校や引きこもりの若者たちの学校復帰、社会復帰を支援する取り組みを伝える。◆２００５年、元教員だった松田勝さんは、不登校やひきこもりの若者たちの居場所「グループＷＡ」を設立した。その農業の拠点が、さぬき市大川町にあるポレポレ農園だ。ポレポレとは、スワヒリ語で「のんびり、ゆっくり」という意味。松田さんは教員時代に教育カウンセラーとして不登校や引きこもりなどの相談に携わっていたが、学校復帰を急ぎすぎることに疑問を感じ、もっとゆとりを持って子供たちをケアしたいと考えて、定年退職後に居場所と農園を開いた。◆様々な理由でポレポレ農園にやって来る若者達。松田さんや地域の人々に見守られながら農作業で汗を流し、やがて人と接する販売の仕事、実社会へと、ステップを踏んでゆっくりと復帰していく。

いわれなき凶悪犯罪に巻き込まれた被害者の遺族は、心の中に深い傷跡を残している。４０年前に実際に起きた高校生の少年による同級生の殺人事件に、マスコミの報道は加熱したが、急速に忘れ去られた。ノンフィクション作家の奥野修司氏はある事件をきっかけにこの４０年前の事件の取材を始め、時間をかけて被害者の声に耳を傾けていく。歳月は悲しみを癒さないと語る遺族と、その一方で少年法に守られた加害少年。長年にわたって取材を続けた奥野氏は、ルポの最後、遂に事件の遺族の心の真実に到着する。◆奥野氏のルポルタージュを原作に、ドキュメンタリータッチのドラマとして描く。原作：奥野修司、脚本：原田裕文、出演：矢崎滋、三田和代、麻生祐未ほか

中国・四国の８局が持ち回りでそれぞれのエリアの様々な情報を発信する「中四国ライブネット」。今回は山陰放送の制作で、水の都松江の魅力を伝える。◆松江ではこの時期、週末の夜に松江城周辺の観光スポットに行燈を灯し、水と光の幻想的な雰囲気を演出する「松江水燈路」を開催している。昭和元年創業の料亭をスタジオに見たて、堀川遊覧船からのリポートを交えながら、米子市の本社と３元生中継で送る。“水の都”松江をこよなく愛した小泉八雲の魅力と彼の作品「怪談」、そして、ニューオーリンズ市と姉妹都市という“ジャズの街”松江の横顔も紹介する。

宮城県石巻市郊外の小さな集落に、大正１４年に結成された北村大沢楽隊という楽隊がある。メンバー５人の平均年齢は７９歳で、チンドン屋の音楽の原型といわれるジンタの演奏で地元の運動会やお祭りを盛り上げている。日本から消えたと考えられていたジンタが、地域の暮らしとともに歩み、受け継がれてきたのだ。ジンタの懐かしくも自由な響きが、少女の冒険物語へと誘う。◆小学５年生のサトミは石巻に住む曾祖父の謙一に昔の話を聞きに出かける。謙一は以前、北村大沢楽隊のメンバーだった。華やかだった頃の楽隊の活躍とジンタの音色を聞くうち、サトミは自分だけの冒険に引き込まれていく。なぜか謙一が話してくれなかった戦争の記憶が「ジンタの国」に封じ込められていると感じサトミは、冒険の途中で出会うインドネシアの青年とともに「ジンタの国」を目指す。作：菊池豊、出演：佐藤莉奈、ベン・パトリック、藤原貢、ほか。

豊臣秀吉が恐れたという天才軍師・黒田官兵衛。地元姫路では彼をシンボルに地域活性化を図ろうと、彼を主役にした大河ドラマの誘致運動を起こしている。黒田官兵衛とはどんな人物だったのだろうか。ミニ講談を織り交ぜながら、わかりやすく掘り下げる。まずは、軍師としてだけでなく戦国大名の面からも、官兵衛の生涯を振り返る。続いて旭堂南海によるミニ講談『姫路・広峰山と黒田官兵衛』を聞き、講談と実際の違いについて考える。再びミニ講談『官兵衛親子と関ヶ原の合戦』をはさみ、最後は大河ドラマには女性がつきものということで、官兵衛の妻と義姉について話を聞く。

ラジオ６０年の歴史の中で、パーソナリティ第１号といわれる人物の一人、三國一朗。当時の彼とラジオ業界を重ね合わせ、ラジオにとって、ラジオパーソナリティにとって大切なものは何かを考える。◆ビール会社の宣伝部に勤務していた三國氏は、民放ラジオの黎明期にひょんなことから深夜番組「イングリッシュアワー」に出演することになった。昼はサラリーマン、夜はラジオの生放送という彼の仕事ぶりを、当時の番組スタッフに聞く。また、洋楽やジャズに精通していた彼をリサイタルの司会に起用したペギー葉山さん、生ワイド番組で共演した毒蝮三太夫さんら関係者にも話を聞きながら、三國一朗という人物を通してパーソナリティに必要な資質を探る。彼が大切に保存していた膨大な資料や音源の中から、その一部も紹介する。さらに、ＦＭ　ＮＡＣＫ５の生ワイド番組「鬼玉」パーソナリティ、玉川美沙とバカボン鬼塚がラジオの大先輩の生き方を受け、未来のラジオへの意気込みとパーソナリティ論を語る。