稀代の漫談家であり、司会者でもあった西条凡児の音声資料が、凡児の没後７年を経て発見された。西条凡児の話芸に見られる毒舌、風刺には、人恋しさや懐かしさが漂っている。その話芸の本質を桂米朝、立川談志、上岡龍太郎という当代一流の話芸家が解き明かしながら、芸論、メディア論、コミュニケーション論を展開していく。

シンガーソングライター村下孝蔵が、アルバム「同窓会」発売直前に４６才で他界した。村下がアマチュア時代を過ごした広島で、当時の音楽仲間たちが音楽葬を実施。その模様と村下の人となり、彼を支えた人々の想いを紹介する。広島時代に村下がＤＪしていた番組の音声も挿入される。

少子化時代の日本で問題となっている「静かな赤ちゃん＝サイレントベビー」に焦点をあてる報道ドキュメンタリー。◆赤ちゃんは「泣く」という行為で自らの要求を表すが、親が適切な対応をしてやらないと、表情の乏しい「サイレントベビー」になってしまう。紙オムツの普及などにより、親が子どもに話しかけるというコミュニケーションが希薄になっていることを取り上げ、便利さの代わりに失ってしまったものの重みを問い掛ける。

喫煙所を舞台に、上司との交流によっていやされていく主人公の心模様を描く。◆３年前、最愛の父を亡くし、同時に失恋も経験した尚子。妻の看病で疲れ切っている高木。職場の唯一の喫煙所である非常階段で、二人の会話が進んでいく。第１４回ＮＨＫ名古屋放送局創作ラジオドラマ脚本募集・佳作。作：土肥陽子。出演：片岡礼子、小木茂光、薮下貴子ほか。

胃ガンの手術後、日本列島を歩いて縦断した落語家・笑福亭小松さんの実話を基にしたドラマ。◆１９９７年１月、笑福亭小松は９時間もの手術を受け、胃とひ臓の全部とすい臓を半分摘出した。進行性の胃ガンだった。ガンであることを告げられ死の恐怖と闘ううち、限られた人生を精一杯生きることを決意した小松は、手術後間もなく、日本列島縦断の旅に出る。たった一人で１日３０キロを歩くという過酷な旅の途中、様々な人々と出会った。やがて、「ガン克服落語会」でガン患者を励ましていく。原作：笑福亭小松「日本列島徒歩縦断！がん克服落語会」、脚本：林千代。出演：笑福亭小松、松谷令子、山下弘美ほか。

日本で最初の心臓移植手術から３１年ぶりに脳死臓器移植が実施された。全国の臓器提供施設へのアンケート調査を実施、また、全国各地でこの問題に取り組む人びとにインタビュー取材して、現代の臓器移植を検証する。

「アートパラリンピック」で大賞に選ばれた青年とその家族の日常を追ったドキュメンタリー。人間にとって大切なことは何か、家族とは何かについて考える。◆１９９８年、長野オリンピックに続いて行われたパラリンピックに合わせ、アートパラリンピックが開かれた。障害のある人たちが芸術の世界で自分を表現するというのが、その趣旨である。この公募展で大賞に選ばれたのが、長野県に住む倉石太次郎さん。ダウン症のほかに耳も不自由な身だが、作品は明るく伸びやかで、笑顔がすばらしい。

１９９９年・卯年に「イソップ物語」時代から時を越え、うさぎとカメが月面でリターンマッチをするというファンタジー。月からのラジオ実況中継という設定のなかで、世界各国に伝わる「うさぎとカメ」の多彩なバリエーションを紹介。注目の再試合は、現代社会を反映しつつ競われる。第３８回前島賞受賞。