１９６２年８月７日、国鉄南武線で三河島事件を思わせる２重衝突事故が起きた。場所は川崎市内の無人踏切でトラックが下り電車に衝突、一両目が脱線した所へ上り電車が突っ込んだ。この間わずか一分足らず、発煙筒をたく暇もなかった。現場には血塗れの遺品が飛び散り、死者３名、重軽傷者１８９名を出した。一時停止を怠ったトラックの運転手は重体。現場は踏切の上、左右とも見通しの悪いいわく付きの場所。こうした無人踏切は国鉄全線だけでも４万近くもある。いい加減な踏切はかえってない方が事故が少なくてすむ。遮断機もお通り下さいといわんばかりに道ばたの半分しかないおそまつなものもある。いっそのこと踏切はやめにして立体交又にして欲しいもの。こちらは富山県高岡市に出来た、人や自動車が優先という全国で初の新踏切。汽車の方を遮断機で通せんぼしてしまった。この踏切は引込線で日に４回しか列車が通らないので、汽車の方からもあまり文句も出ず、お互いに万事うまくいってるようだ。

第３４回選抜高校野球は甲子園でその幕をあけ、全国から２３チームが参加、開会式が行われた。昨年の優勝校法政二高より上田健一大会会長に優勝旗が返還されて、第１試合平安高校対日大三高戦を皮切りに８日間にわたる熱戦の火蓋が切られた。（週間話題）

戦後最高の人出があった第３３回メーデー（１９６２年５月１日）、東京の神宮外苑広場は２３万人の労働者で埋まった。今年はきれいなメーデーと宣伝したもののデモ隊の出発した後はゴミの山。後始末に２００人の作業員が５時間もかかった、費用は５８万円。子供連れで賑わう動物園は迷子相談所が繁昌。東京駅ではこのところ陽気のせいか列車が着くたびに忘れものが発見され、一日平均３５０点が置き去りにされていることになる。待てどくらせど持ち主の現われない遺失物や、行く先不明の荷物はひとまとめにして南千住の東京用品庫に送られる。ここの作業場は迷える荷物でいっぱい。品物のバラエティーに富んでいる点はデパートなみ。大は布団類から種々様々のものでいっぱい、ここに集まった持ち主不明の荷物は２束３文で競売される日を待っている。

１９６２年７月３１日に、台湾から門司に入港した貨物船、御影丸の船員から１７人のコレラ患者が発見され、８月２日乗組員が強制隔離された。保菌者が上陸した門司、下関では海水の使用や水泳を禁止、市民に予防接種をするなど、コレラ予防に緊急非常体制をしき、魚市場も水揚げがとだえてひっそりする有様。１６年ぶりの今度のコレラ侵入に対して、ワクチンは十分、心配はないとはいえ、空港などでは検疫をいっそう強化、台湾経由のお客さんは要注意と監視の目を光らせている。しかしなんといっても大きな打撃を受けたのは台湾バナナ。輸入禁止とともに、発生後入荷した４隻分輸入価格１億２千万円ぶんのバナナを棄てることにし、神戸では一万２千カゴものバナナが火焔放射器で焼きすてられた。もったいないとなげくゴリラ君、大好物のバナナの配給がなくなり、いささか頭にきたようだ。

ぎっしりと人で埋まった片瀬・江ノ島海岸。息苦しい都会を逃れてくりだした人波でこの夏の最高の賑わい。こちらは東京都五日市に最近発見されたばかりの鍾乳洞。この鍾乳洞、大きさはＢ級でも美しさは日本でも優秀なもの。川や高さ８メートルの滝もあって、まるでお伽の国にきたような美しさ。地上の暑さを忘れて、探検隊は鍾乳洞の美しさに酔っていた。

広島市民球場で行われたプロ野球オールスター第２戦。３対２とリードされたセ・リーグ３回裏の攻撃に、中日の江藤慎一がレフトスタンドに２ランホーマーを放ち、試合を逆転。８回裏ファン注目の東映・尾崎行雄、巨人・長嶋茂雄の対戦は、四球で長嶋に軍配が上がった。最終回を迎え、バッターボックスに立った東映・張本勲、この日２本目のホームランを左中間に叩きこみ、逆転勝ちでパ・リーグに５連勝をもたらした。一方、後楽園球場では華やかに第３３回都市対抗野球が開幕。前年優勝の横浜市・日本石油から上田常隆毎日新聞社長に返還された黒獅子旗の争奪を巡って、全国２５チームが炎天下に熱戦を展開した。スタンドではお国自慢の応援合戦が繰り広げられ、９日間に渡ってノンプロ日本一を争った。

東京を美しくしようと都民の集いが開かれた。東龍太郎都知事から街の美化に尽くした人達に賞状が贈られ、毎月１０日が「首都美化デー」と決められた。都庁では太田道灌像も一年の垢を落とされ、都知事みずからオリンピックを目指しての大掃除。上野の西郷さんも地元母の会の手で身を清められた。

春爛漫の４月８日、上野の山は２０万人の花見客で賑わった。呑むほどに浮かれて踊りたくなるのも人情だろうが、後に残ったゴミの山は新記録。婦人団体や、ボーイスカウトも国土美化運動にのり出した。全くこの分では東京オリンピックが思いやられる。（週間話題）