最近青い目の観光客がめっきり増えた京都では、あの手この手で外国人客誘致の新戦術。平安朝の趣向をこしらえたホテル、茶の湯から琴・生け花・京舞・雅楽・文楽まで古典芸能のダイジェスト版を見せる庭園コーナーなど。中でも一般家庭を訪問するホーム・ビジター制度は、日本の家庭生活に親しめるうえ、高価なホテルに泊まるより経済的と外国人客になかなかの好評。

アメリカ・プロ野球の名門デトロイト・タイガースがこのほど来日。空港には毎日新聞上田常隆社長らが一行を出迎えた。首相官邸のパーティーに招かれたフェッツアー会長らは大平正芳外相に訪日の挨拶。１９６２年１０月２７日に東京で第１戦を皮切りに日本の野球ファンに本場野球のだいご味を味あわせてくれるだろう。（週間話題）

キューバのカストロ首相は基地の撤廃、空の偵察飛行中止など５項目を要求しているが、アメリカはグアンタナモ基地の守りを強化し一歩も退かぬ強気の構えでいる。この高姿勢にフルシチョフ首相は更に大幅に譲歩、ミサイルを積んだソ連船のアメリカ軍による海上視察を認めた。ソビエトはこの撤退を平和共存政策の勝利として共産圏諸国の多数を納得させることに成功したが、中国では、４０万の北京市民が３日間に渡ってキューバ支持の大デモを繰り広げ、ソビエトの弱腰を突き上げた。先のスターリン批判以来、不仲を伝えられた中・ソの対立はキューバ問題を巡って再び燃え上がっている。

千葉県松戸の自衛隊補給廠に働く乙女達が日本では珍しい女性だけの鼓笛隊を編成。東京オリンピックの入場式は私たちの手でと張り切っている。埼玉県朝霞にある体育学校には約２百人の生徒が入学して基本訓練を受けている。オリンピック種目を科目に取り入れて本格的なトレーニングを開始した。オリンピックは我々が引き受けたと隊員達は毎日猛練習を続けている。

１９６２年３月２０日アメリカ最初の宇宙飛行士グレン中佐はアトラス・ロケット頭部、重さ１トン半のカプセル、フレンドシップ７号に乗り込む。この模様はテレビを通じて世界に公表され、米国民の期待と不安の中に秒読みを開始、午前９時４７分、ロケットはケープカナベラル基地を離れた。１２分後、ロケットを切り離したカプセルは無事軌道にのり、余裕しゃくしゃくたる中佐の声が地上に送られて来る。４時間５６分で地球を３周したカプセルは、大西洋上の予定水域に無事着水。打ち上げ決定２ヵ月、１０回にわたる延期の後、米国人間衛星船はついに成功した。こうしてソビエトとの宇宙競争に新しい自信を取り戻した米国民はケネディ大統領を始め国をあげて祝った。

我が国航空技術陣が翼を失ってから１７年目に日本も国産機の時代を迎え、５人の設計者を中心にＹＳ−１１の制作が始まったのは今から５年前。世界的に有名な零戦を造った堀越二郎氏、隼戦闘機の太田稔氏、航研機の設計者木村秀政氏、かって軍用機１本やりだった我国航空技術は旅客機をもって再び世に問うことになった。航空技術研究所では、主翼を揺さぶって気流や突風に耐えるテストが連続的に３万時間も続けられている。こうした地上テストに並行して１９６２年８月３０日、小牧飛行場ではＹＳ−１１の試験飛行が行なわれた。５年間心血を注いだ生みの親、土井武夫・太田・堀越・木村の４氏が見まもる内に、全長２６．３メートル、幅３２メートルのプロップジェット旅客機が大空に舞い上がった。これまでの費用は５０億円。６０人乗りとしては滑走路は短く、国内線向けにすぐれた性能を示した。こうしてわが航空技術陣は１７年のブランクの末、再び大空の自信をとりもどした。

１年半さきに迫った東京オリンピックに間に合わせようと、工事が急がれている羽田から台東区入谷まで全長約２１キロの首都高速道路第一号線の一部、芝浦−京橋間４．５キロがこの程開通。河野一郎建設大臣らが通りぞめをした。大型車１００円、小型車５０円の料金で初めて東京にお目見えしたハイウェー。中央で２つに別れており、高架あり堀割り道路ありの完全な立体交差で、スリップ止めの上を６０キロでとばすと４分３１秒でというあっけなさだ。それでも７０億の工費をかけたこの区間の開通で都心の交通ラッシュの穏和に期待が寄せられている。

アメリカは１９６２年４月２５日クリスマス島で大気圏内の核実験を再開した。アメリカ大使館前では、各団体の代表や一般の人々が繰り返し抗議のデモを行った。広島からも被爆者が上京して座り込みをはじめた。死の灰の谷間の日本では当面の課題は放射能の防御である。魚市場でマグロの検査が行われた。無線局は注意報を送る。実験海域はマグロのよい漁場であるがコースを変更して出航する。乗組員の安全を祈るとともに、私たちは核実験停止を叫びたい。