那須高原にある通称、小笠原開拓村と呼ばれる大日向村には、戦争中本土に強制疎開させられ、敗戦と同時に故郷を失った人たちが住んでいる。きびしい開拓地の生活に、ある人は村を去り、ある人は常夏の島を夢見ながら命を終えた。もと島の寺であった東京の久遠寺には、せめて故郷に埋めてほしいと死んだ旧島民の遺骨がまつられている。６千人に上る旧島民は、いつかはなつかしい島に帰れると希望を抱きながら馴れぬ都会で苦しい生活を続けてきた。この人たちに初めてアメリカから６百万ドルの補償金が支払われる事になったが、これとひきかえに帰島の望みはしばらく断たれると複雑な表情だ。家を建て、養鶏や畜産を始め、あるいは共同で事業を起こすなど、人々は生活の建て直しを始めた。行く年、来る年、島の踊りや歌に故郷をしのぶ婦人たち。しかしこの人たちの心にある島への思い出は決して消えないのである。

このほど名古屋の中部鋼鈑で世界最大の製鋼用２００トン電気炉が操業を開始した。大同製鋼が米国と技術提携して作ったダイドー・レクトロメルト式２００トンアーク炉で、直径８メートルもある巨大なもの。高電圧で高能率に精錬、１日にできる鉄の量は１２００トンの高炉に匹敵。この電気炉の出現は貿易自由化を前にした我が国の鉄鋼産業にとって大きな威力となることだろう。（週間話題）

日本水泳界のホープ平泳ぎの中川清選手は、水の王者・山中毅選手とともに８月のアジア大会での活躍が期待されている。３月に開かれる世界フィギュア・スケート選手権大会、日本代表に選ばれた１６歳の福原美和さんは名選手の貫禄を見せてきた。プロ野球の東映フライヤーズに入団した尾崎行雄投手も１６歳、自宅で親子水入らずのプロ１年生の春を迎えた。大相撲・時津風部屋の成長株、内田改め豊山関は念願の新入幕を果し、初場所での活躍が見もの。「東洋の魔女」と異名を取った女子バレーボールの日紡貝塚チームは、練習の鬼といわれた大松博文監督の年中無休のハード・トレーニングに明け暮れている。まだオリンピック種目でないのが残念だが、たくましい精神が実を結ぶ日も近いことだろう。

自民党の松村謙三氏は行き詰まった日中関係の打開を求めて北京を訪れた。周恩来首相はこれまでにない柔らかな態度で会談に臨み、貿易や文化交流を通しての積み重ね方式で両国間の正常化をはかりたいと述べ、昭和３３年以来断絶していた日中関係に雪解けを迎え、貿易の拡大に大きな期待が寄せられている。（週間話題）

真夏の空の下、太平洋の波をけって壮快なカッターレースによい子達は一生懸命だ。これは神奈川県武山部隊などで、夏休みを利用して開かれている自衛隊海洋学校のひとこま。消灯前のベッドは大変な賑やかさ、手紙を書いたりちょっとした修学旅行気分。東京湾一周の護衛艦では初めのうちは司令官気どりだったが、とうとうのびてしまった。天気晴朗なれど東京湾は波高しといったところ。

東京都内のある小学校。前は交通量の多い大通り、おまけにみどりのおばさんがいないので横断するのも並み大抵ではない。３年前都の失業対策の一つとして発足したみどりのおばさんも、神経をすり減らす重労働に比べ、１日４５１円のパートタイマーの待遇で身分の保障もなく、そのうえ雑用までやらされるとあって辞めていく人が増えるばかり。東京都とはおよそ対象的なのは京都市の婦人交通指導員達、正式に警察職員として採用された彼女達は、スマートな制服もさっそうとスクーターで市内をパトロール、交通警察の助手として立派な成績をあげている。失業対策を第一とする東京都も、安全交通に力を入れる京都を見習って、みどりのおばさんが誇りを持って仕事が出来るようにならないものか。（カメラ・パトロール）

大衆小説の創始者として親しまれ、「宮本武蔵」「新平家物語」「私本太平記」など多くの名作を残した吉川英治さんが、肺癌に脳軟化症を併発、１９６２年９月７日朝、７０歳の生涯を閉じた。昭和３５年（１９６０）には文化勲章を贈られるなど貧困の底から筆１本で身を起こした吉川さんは、また人情味豊かな人生の達人でもあった。（週間話題）

白銀輝くアルプスの上空２０００ｍから眼下のスロープめざしてスカイダイビングするフランスのスキーヤーたち。満員のすしづめ列車を敬遠して空からスリル満点の直コースとしゃれこんだところでしょうか。無事着陸、落下傘を片づければすぐそのままゲレンデ一杯にスキーのダイゴ味を満喫している。