派閥に捕らわれず「適材適所」をねらった池田勇人内閣の改造劇は思いのほか難航を続け、実力者の佐藤栄作氏、三木武夫氏も藤山愛一郎氏についで閣外に去っていった。大臣のポストを巡る大野伴睦氏を中心とした河野一郎、川島正次郎氏ら党人派の巻き返しは近来にないすさまじさであった。こうして外務大臣に池田内閣に女房役だった大平正芳氏、大蔵大臣は佐藤派の大番頭田中角栄氏、科学技術庁長官に大野派から２人目の女性大臣として近藤鶴代さんが登場した。大物３人が去ったあとの新内閣は実力者内閣から派閥均衡の中型内閣へと姿を変えた。

我が国航空技術陣が翼を失ってから１７年目に日本も国産機の時代を迎え、５人の設計者を中心にＹＳ−１１の制作が始まったのは今から５年前。世界的に有名な零戦を造った堀越二郎氏、隼戦闘機の太田稔氏、航研機の設計者木村秀政氏、かって軍用機１本やりだった我国航空技術は旅客機をもって再び世に問うことになった。航空技術研究所では、主翼を揺さぶって気流や突風に耐えるテストが連続的に３万時間も続けられている。こうした地上テストに並行して１９６２年８月３０日、小牧飛行場ではＹＳ−１１の試験飛行が行なわれた。５年間心血を注いだ生みの親、土井武夫・太田・堀越・木村の４氏が見まもる内に、全長２６．３メートル、幅３２メートルのプロップジェット旅客機が大空に舞い上がった。これまでの費用は５０億円。６０人乗りとしては滑走路は短く、国内線向けにすぐれた性能を示した。こうしてわが航空技術陣は１７年のブランクの末、再び大空の自信をとりもどした。

東京を美しくしようと都民の集いが開かれた。東龍太郎都知事から街の美化に尽くした人達に賞状が贈られ、毎月１０日が「首都美化デー」と決められた。都庁では太田道灌像も一年の垢を落とされ、都知事みずからオリンピックを目指しての大掃除。上野の西郷さんも地元母の会の手で身を清められた。

プロ野球日本シリーズ。東映３勝２敗１引き分けで迎えた第７戦。先発投手は東映・久保田治、阪神・小山正明。試合は投手戦でシリーズ４度目の延長戦となり、１０回表東映が１点をリードすれば、その裏阪神は土橋正幸を攻め、藤井栄治がタイムリー・ヒットを打って同点。しかし１２回表、西園寺昭夫が村山実から決勝ホーマーを放ち、ついに東映は宿願の日本一となった。昭和３０年の日本シリーズ以来７年目、水原茂監督の顔には感激の涙が浮かんでいる。最優秀選手に選ばれた土橋投手は、賞品の自動車をもらって日本一の笑顔である。

１９６２年７月１日は参議院選挙の日。６億円をかけた国民総投票運動のかいがあって投票率は６８％と戦後２番目の好成績をあげた。自民党は快調のすべりだしを見せた。迫水久常、安井謙両氏も現職大臣の強みを発揮して当選。元航空幕僚長の源田実氏も自衛隊の組織票にのって初の政界入りすれば、テレビタレントの藤原あきさんも婦人票を集めて全国最高点で当選した。社会党は地方区で順調な出足を見せたが全国区が振るわず、単独で３分の１の壁を破るには一息といったところ。振るわなかったのは民社党、曽祢益書記長も苦戦のすえようやく面目をほどこした。目ざましい進出は創価学会で参議院の第３勢力にのしあがった。圧倒的な勝利をおさめた自民党では投票がすむと突然藤山愛一郎経済企画庁長官が辞表を出して池田勇人さんをまごつかせた。総裁問題を控えて屋台骨にひびが入った池田内閣、勝利に酔ってばかりはいられない。

アメリカの宇宙船第１号、フレンドシップ７（セブン）が世界を廻り２３番目の日本にやってきた。会場のデパートでは入口が狭いため、ウインドーのガラスをはずして運び入れるが、何しろ制作費７億２千万円。１グラムあたり純金より高いとあって慎重な作業。近藤鶴代科学技術庁長官も早速見学に来るなど、４日間の公開に押しかけた人は６０万に及ぶ大変な人気であった。

第２回サロン・ド・メ日本展が毎日新聞社の主催で開かれた。ピカソの「横たわる女」マルシャンの「北の海」など、８４点の油絵を始め、彫刻、版画など１３４点の作品は現代フランス美術の傾向を示すものといわれ、人気を呼んでいる。（週間話題）

交通取締り立て役、警視庁白バイ部隊。午前８時スタート、老人を助けたり、カミナリ族を捕まえたり１日５時間、走りまくって神経の疲れる仕事だ。一斉取締りではスピード違反や重量・車体の検査に引っかかる車が絶えず大変な忙しさ。白バイ隊員３２３名が総出でも手が足りないありさま。警視庁は今年にはいった３０人の新入隊員の訓練に拍車をかける。訓練の厳しさは勤務の厳しさを示す。３ヶ月の猛訓練を受けて１人前の隊員が誕生、立派な同僚が増えるのは嬉しい。けれどもそれは同時に交通地獄の厳しさを示す悲しい事実だ。白バイ隊員はこう語って今日も交通戦争の第一線に走って行く。（カメラ・パトロール）