憲法調査会の中曽根康弘委員は、首相公選論を説いて全国を飛び回っている。最近の派閥争いから生まれる内閣をなくするためにも首相は国民の手で選ぶという意見をぶちまくって各地で好評をはくしている。１９６２年９月２８日から２日間、憲法調査会は憲法改正に関する一般の意見を聴く最後の公聴会を東京で開いた。憲法改正反対を叫ぶ全学連は、公聴会を阻止しようと押しかけたが、警官隊にはばまれてしまった。会場では憲法改正の是非をめぐって各界代表が活発な意見を述べた。焦点となったのは戦争放棄に関する第９条の改正である。こうした公聴会の公述は憲法問題に対する世論の大勢を集約したものとして大きな意味を持っている。

東海道５３次、島田の宿場にある大井神社のお祭りの呼び物は大名行列の大奴。２メートルもの木太刀をぶっちがいにさし、派手な帯を巻き付けた伊達姿の大奴が下げる丸帯は、３百年前、宿場の女性が晴れ着の帯を神に供えて安産を願ったことに始まる。２５人の大奴が六方をふんで町中をねり歩き、お祭りは最高潮。７年ぶりの島田帯祭り。（週間話題）

秋の国民体育大会を控えて、岡山市では県営競技場での予行演習にまで３万５千人の大観衆が詰めかける賑わいぶり。こうした国体ムードいっぱいの岡山市で、このほど一日内閣が開かれた。これは政府首脳部が地方に出かけて行き、国民の声を直接聞こうという池田内閣初めての催しで、この度は池田勇人首相ら１２人の閣僚が勢ぞろいした。中国５県から１５人の発言者が選ばれ、各地でデモ騒ぎや、学生の座り込みなどもあったが一日内閣のすべりだしはまずまずといったところ。

人種差別の激しいアメリカ南部で、白人オンリーを守ってきたミシシッピー大学に入学を希望した黒人のメレディス君をめぐって、差別主義者最後の砦を守るバーネット州知事や、右翼のウォーカー元少将ら白人の反対派と、人種差別は違憲とした最高裁の判決をタテにするケネディ政権が真っ向から対立。７千人の軍隊を動員しての入学強行は２人の死者を出す騒ぎとなった。５年前のリトルロック事件についでの今回のこの事件は、アメリカのガンといわれる人種差別問題のむずかしさを示している。

ポーランドのザコパーネで開かれた世界ノルディックスキー選手権大会最終日の純ジャンプは、クロキェフ大シャンツェに１０万の観衆を集めて行われ、参加１９カ国の代表６０選手が妙技をきそった。東ドイツのレックナーゲル選手が１０３メートルの遠距離新記録をつくってスコーバレーについで見事に優勝。８日間にわたる大会の幕を閉じた。

大衆小説の創始者として親しまれ、「宮本武蔵」「新平家物語」「私本太平記」など多くの名作を残した吉川英治さんが、肺癌に脳軟化症を併発、１９６２年９月７日朝、７０歳の生涯を閉じた。昭和３５年（１９６０）には文化勲章を贈られるなど貧困の底から筆１本で身を起こした吉川さんは、また人情味豊かな人生の達人でもあった。（週間話題）

フィリピンの女優のチェリト・ソリスさんがこの程８ヵ月ぶりに来日。大映のスター連に出迎えられた。日本は３度目というチェリトさん、寒いといいながらも、又やってきたと上きげん。１０円銅貨であなたの運勢がわかりますというアイディアでベスト・セラーを作った黄小娥さんの事務所は千客万来、あまりの忙しさに仕事を断わって人間ドックに入った束の間が息抜き。あちこちに引っ張り出されて、すっかりタレントづいた黄さんの今年の運勢は、笑いが止まらないとでたようだ。

アメリカは１９６２年４月２５日クリスマス島で大気圏内の核実験を再開した。アメリカ大使館前では、各団体の代表や一般の人々が繰り返し抗議のデモを行った。広島からも被爆者が上京して座り込みをはじめた。死の灰の谷間の日本では当面の課題は放射能の防御である。魚市場でマグロの検査が行われた。無線局は注意報を送る。実験海域はマグロのよい漁場であるがコースを変更して出航する。乗組員の安全を祈るとともに、私たちは核実験停止を叫びたい。