過去７年間続いたアルジェリア戦争の解決を迫られたフランス。アルジェリアは植民地支配を脱して輝かしい独立の年を迎えた。アメリカはグレン中佐が初めて宇宙飛行に成功し自由諸国への威信を取り戻したが、ソ連はアベック飛行で宇宙滞在記録を大きく更新しアメリカに水をあけた。キューバにソ連のミサイル基地が建設されていることを知ったケネディ大統領は、海上封鎖を断行、一時は世界中が核戦争の瀬戸際に追い込まれたが、フルシチョフ首相の譲歩により危機を避けることが出来た。このキューバ問題をめぐって中ソの対立が再燃。中印国境は風雲急を告げ、これまで中立を守ってきたネール首相は苦境に立った。ベルリン。厚い壁に隔てられた東西の悲劇はついに解決せず。今年もにらみ合いのまま暮れて行く東と西。その解決は新しい年、１９６３年に持ち越される。

フィリピンの女優のチェリト・ソリスさんがこの程８ヵ月ぶりに来日。大映のスター連に出迎えられた。日本は３度目というチェリトさん、寒いといいながらも、又やってきたと上きげん。１０円銅貨であなたの運勢がわかりますというアイディアでベスト・セラーを作った黄小娥さんの事務所は千客万来、あまりの忙しさに仕事を断わって人間ドックに入った束の間が息抜き。あちこちに引っ張り出されて、すっかりタレントづいた黄さんの今年の運勢は、笑いが止まらないとでたようだ。

アメリカの宇宙船第１号、フレンドシップ７（セブン）が世界を廻り２３番目の日本にやってきた。会場のデパートでは入口が狭いため、ウインドーのガラスをはずして運び入れるが、何しろ制作費７億２千万円。１グラムあたり純金より高いとあって慎重な作業。近藤鶴代科学技術庁長官も早速見学に来るなど、４日間の公開に押しかけた人は６０万に及ぶ大変な人気であった。

東京都足立区の６歳の男児が昨年末、燃えたガソリンを浴びて下半身を大火傷して重体。望みは皮膚移植しかない。この子を助けようと病院の人々の訴えに答えて韓国の大学生を始め、７３人の人々の尊い皮膚が寄せられて手術が行われた。全身の５１パーセントという皮膚移植は世界でも例がなく、すべてがこの移植手術にかけられている。

山形県の羽黒山で新しい年を迎える歳夜祭が行われた。この祭は羽黒山伏最高の行法、本殿では験競の神事、外では大松明の神事がと同時に行われて神事は最高潮、害虫の災を焼きはらって豊作を祈る１３００年来の火祭。千葉県の成田山は押しかけた人で御札所は馬券売り場のような賑わい。不景気になれば逆に客足は増えて戦後最高の人出、所得倍増男の池田勇人首相は夫人と明治神宮へ初詣。京都伏見のお稲荷さんは元日が雨で出足を止められ２日目からようやく新春の賑わいを見せた。大阪府寝屋川の不動さんには２０００台の車が交通安全の御祓いをうけた。神戸市の繁華街にある生田神社は境内を駐車場にして交通安全をお祈りして駐車料金ならぬ祈願料を頂く新商売を始めた。新春早々駐車場は満員、ガメツク稼いでいる。

相次ぐ火山の爆発、まかり通るニセ千円札、１億総推理時代を招いた山中湖畔の怪死事件。堀江ヨット青年、１９歳のチャンピオン原田など様々な話題のある中に最も今年を代表するものは交通戦争の激化。車の洪水と悪路がつくり出した交通地獄の中に子供も巻き込まれ、その犠牲者は小児麻痺を上回る激しさ。道路だけでなく海の上も交通ラッシュ。古い港湾施設と野放しの海上交通のため危険がいっぱい。京浜運河のタンカー事故は海上ラッシュの限界を警告した。レールの上も過密ダイヤや無人踏切。三河島事件はこうして起るべくして起きた人災。通勤電車に乗るのも命がけ。道路も、海も、レールも、電車も、すべて交通戦争の場となったこの１年、その対策は来年に持ち越されることになった。

長野県諏訪大社の御柱祭の山出しが今年７年ぶりに行われた。御柱置き場には八ケ岳山麓から切り出したもみの巨木が勢ぞろい。お払いをすませて山出しにかかる。御柱の重さは４トンから７トンもあり、引き子は地元の氏子が総出であたる。この山出しの行事は荒くれ祭といわれ、毎回けが人が出るほど。坂を下り田圃をまかり通り、川を渡って御柱は清められる、傾斜４５度の崖を滑り落ちる木落しは最大の難所。突撃ラッパも勇ましく血気盛んな若者達が、さながら日本版ボブスレーを展開する。７年に１度の信濃路のこの奇祭、５月には再び賑やかな里引き祭が繰り広げられる。

東海道５３次、島田の宿場にある大井神社のお祭りの呼び物は大名行列の大奴。２メートルもの木太刀をぶっちがいにさし、派手な帯を巻き付けた伊達姿の大奴が下げる丸帯は、３百年前、宿場の女性が晴れ着の帯を神に供えて安産を願ったことに始まる。２５人の大奴が六方をふんで町中をねり歩き、お祭りは最高潮。７年ぶりの島田帯祭り。（週間話題）