相次ぐ火山の爆発、まかり通るニセ千円札、１億総推理時代を招いた山中湖畔の怪死事件。堀江ヨット青年、１９歳のチャンピオン原田など様々な話題のある中に最も今年を代表するものは交通戦争の激化。車の洪水と悪路がつくり出した交通地獄の中に子供も巻き込まれ、その犠牲者は小児麻痺を上回る激しさ。道路だけでなく海の上も交通ラッシュ。古い港湾施設と野放しの海上交通のため危険がいっぱい。京浜運河のタンカー事故は海上ラッシュの限界を警告した。レールの上も過密ダイヤや無人踏切。三河島事件はこうして起るべくして起きた人災。通勤電車に乗るのも命がけ。道路も、海も、レールも、電車も、すべて交通戦争の場となったこの１年、その対策は来年に持ち越されることになった。

２年前公演中止でファンをがっかりさせたシャンソン界のトップスター、「世界の恋人」イブ・モンタンが今度は本当にやってきた。シックなパリジャン・スタイルのモンタンは約束を果たせて嬉しいとファンに挨拶。毎日新聞社を訪問したモンタンはカメラマンに向かって丁重にボン・ジュール。つづいて東京・大田区の聖フランシスコ寮を訪れ、子供たちにお菓子をプレゼント。（週間話題）

真夏の空の下、太平洋の波をけって壮快なカッターレースによい子達は一生懸命だ。これは神奈川県武山部隊などで、夏休みを利用して開かれている自衛隊海洋学校のひとこま。消灯前のベッドは大変な賑やかさ、手紙を書いたりちょっとした修学旅行気分。東京湾一周の護衛艦では初めのうちは司令官気どりだったが、とうとうのびてしまった。天気晴朗なれど東京湾は波高しといったところ。

くずかごや袋を背にした１千人の清掃部隊が、富士宮など３つの登山口から富士山の大掃除に出かけた。これは神奈川県相洋高校山岳部の１２年間の善意が実ったもので、自衛隊や地元山岳会が参加した。２日間の大掃除で心ない登山者が残していったゴミの山もきれいになったが、日本一の富士の山を、近くからみても日本一のきれいな山にしたいもの。（週間話題）

防衛２法案の成立によって陸上自衛隊は、１９６２年１月１８日から師団の名前を復活した。このたび８個師団が発足、全国で１３個師団が誕生する事になっている。各部隊では優秀な新型の兵器を備えて、旧軍隊の半分の兵員で２倍半の火力をもつようになった。さらに、年内にはナイキの配置も予定されるなど急速に軍隊化している。しかし装備の点はまだ充分ではなく、第２次防衛５カ年計画の完成まで待たなけれならない。米国の中古品を使っているのではと純国産の自走無反動砲が誕生。富士学校などに配置されている。また特車も昔どおり戦車と改名され本格的な生産が始まろうとしている。こうして警備予備隊として発足以来１２年にして自衛隊は今や戦力として国民の前に姿を現わしてきた。

砂漠なみの異常乾燥にすっかり干上がった水源地帯はピンチに追い込まれた。探せど見えぬ雨雲に気象庁はせめて火の用心とお手上げ。この狂った天気に火事が続発、１９６２年２月１９日までに東京では１７８２件と新記録、焼けた面積も５万平方メートルに及ぶほど。たまりかねた消防庁は特別非常体制を発令、警戒を強化した。放火魔におびえる東京池袋の住民は、いつ起こるか知れぬ火事に神経をとがらせて町ぐるみの自衛体制に入った。警察と協力して町のパトロール、ドライ天気はまだつづくとの暗い見通しに、消防庁ではこれ以上不名誉的な記録を更新したくないと火の用心のパトロールが続けられている。

アメリカ初の民間衛星として、直径８５センチ、出力１５ワットの太陽電池３６００個を備えたテレビ中継用のテレスター衛星（テルスター衛星）が完成した。１９６２年７月１０日、ケープ・カナベラルから、ソー・デルタ・ロケットを使っての打ち上げは成功し、テレスター衛星は軌道に乗った。高さ９６０〜５６００ｋｍの軌道を２時間４０分で地球一周するこの人工衛星は、地球からの信号を１００億倍に増幅する能力を持っている。テレスター衛星は映像を地球上に送り返し、アメリカ・イギリス・フランスの３国で鮮明にキャッチされた。世界初の大西洋横断中継を記念して、あいさつを送るジョンソン副大統領。この衛星を使って世界中に絶えず中継を行うには４０基の打ち上げを要するといわれるが、東京オリンピックの国際中継ももはや夢ではなくなった。

第２回サロン・ド・メ日本展が毎日新聞社の主催で開かれた。ピカソの「横たわる女」マルシャンの「北の海」など、８４点の油絵を始め、彫刻、版画など１３４点の作品は現代フランス美術の傾向を示すものといわれ、人気を呼んでいる。（週間話題）