ヨーロッパの新しい息吹を感じとってきたいと、池田勇人首相はヨーロッパ７カ国訪問の旅に出発した。旅行は西ドイツを皮切りに各国の首脳と外交・貿易などの話し合いが行なわれることになっている。フィリピン親善旅行に出発された皇太子ご夫妻は、この度の御旅行でマカパガル大統領や、各地の有力者や一般の人々に会われるなど日比親善増進に期待がもたれている。（週間話題）

フランス、イギリスなど、ヨーロッパ６カ国の訪問から池田勇人首相が羽田に帰国。空港では大野伴睦自民党副総裁らの盛んな出迎えを受けた。池田首相は帰国のメッセージで、今度の旅行で、日本人の実力を認めさせる事が出来、日本に対する貿易上の差別撤廃をなくすことに成功したと自信のほどを見せた。（週間話題）

八丈島の南東海上で足踏みをつづけ、予想より２日遅れて本土にたどり着いた台風１２号は、さんざん気をもませた挙句、日照り続きの関東地方に恵みの雨を降らせて駆けぬけて行った。毎年大きな被害を残す台風の実態と取り組む東京中野の気象研究所中野分室。ここの台風発生装置は高橋博士と助手の工藤さんが考案したものである。ドライアイスを用いて本物と同じ状態で人工台風を発生、世界で初めて成功した。電気ヒーターで空気を暖めて対流を起こし、地球の自転に相当する回転板の作用で台風が渦巻くという仕掛。やり直しやり直しでなかなか根気がいる実験である。またマッチを仕掛けて台風の直上で爆発させて台風をつぶす実験では、台風はまたたくまに消滅するが、この爆発力はメガトン級の水爆１千万個分に匹敵するとか。これでは地球の方が吹っ飛んでしまいそう。

お正月はスキー場で徹夜で滑りまくるスキーヤー達。初日の出は山で拝んだ。空前のスキーブームにゲレンデは朝早くから超満員、さっそうとまかりでたスキー場のカミナリ族は滑る凶器にもなりかねない。貴方が転べば私も転ぶ、暴走するダンプカー組は勢い余って七転び八起きの大奮闘。おかげで怪我人が続出して山の診療所は後から後からやって来るお客さんでてんてこまい。負傷者の数はちょっとした都会の交通事故なみ。行きはよいよい帰りは恐い、上野駅に帰って来る負傷者はその数１日２００人、それでもスキーヤーの群は負傷者には目もくれず毎日押し寄せている。冬山の遭難がめっきりふえた近頃、怪我だけですんでよかったと行きも帰りも地獄のスキーブーム。

第４回アジア球技大会を迎えるインドネシアの首都ジャカルタは大会気分に包まれている。しかし、大会を前にしてインドネシア政府がイスラエル、台湾両国代表の入国を拒否してけわしい雲行きを見せた。１９６２年８月２４日、１０万５千の大観衆が集まったスナヤンのメイン競技場でアジア競技大会の開会式が行われた。１７カ国２千人のアジアの若人が入場したが、イスラエル、台湾、ブルネイ、イラン、ネパールの５カ国代表の姿は見られない。日本の陸連本部は事態を重視、参加取消しを指令したが現地では除名覚悟で大会に参加することに踏み切った。しかし、スポーツを通じてアジアの親善をはかる大会の理想は政治力によってむなしく踏みにじられてしまった。華やかに繰り広げられた開会式の影に隠されたこの問題は、東京オリンピックにまで尾をひきそうな気配を残している。

東京都台東区立竹町小学校、ＰＴＡのお母さん達が月に一回総出で繰り広げる廃品回収運動。くずやお払い物はないかとリヤカーを仕立てて町内を回り、ご用聞きにまわる。公園はトラック２台分の廃品でいっぱいになった。都内で一番設備のよい学校にしようと初めたこの運動、今年で７年目を迎えお母さん達は大張り切りだ。本日の売り上げ高は２万３千円と大収穫だった。ＰＴＡの委員会はこのお金を積み立てて、鼓笛隊をつくることに決めた。こうして、廃品回収は実を結び、新設された鼓笛隊は運動会目指して猛練習に励む。本番の日には日頃の成果の見せどころと並みいるお母さん達を前に大熱演。楽しい１日を過ごした。

浅間山の麓、群馬県嬬恋村は全国でも珍しい音楽の村として知られている。大人も子供も一緒になって暇を見つけては楽器をもちよってコンサートを開く。４年前、低俗な流行歌から青少年を守ろうと始まった全村皆唱運動が実を結んで、１万５千人もいるこの村には野良から、軒から、灯火から明るい歌声が流れて来る。歌に明け歌にくれる嬬恋村今日この頃。

防衛２法案の成立によって陸上自衛隊は、１９６２年１月１８日から師団の名前を復活した。このたび８個師団が発足、全国で１３個師団が誕生する事になっている。各部隊では優秀な新型の兵器を備えて、旧軍隊の半分の兵員で２倍半の火力をもつようになった。さらに、年内にはナイキの配置も予定されるなど急速に軍隊化している。しかし装備の点はまだ充分ではなく、第２次防衛５カ年計画の完成まで待たなけれならない。米国の中古品を使っているのではと純国産の自走無反動砲が誕生。富士学校などに配置されている。また特車も昔どおり戦車と改名され本格的な生産が始まろうとしている。こうして警備予備隊として発足以来１２年にして自衛隊は今や戦力として国民の前に姿を現わしてきた。