１９６２年９月１２日羽田空港はヨットで太平洋横断した現代の英雄、堀江謙一君を迎えて大騒ぎ。記者会見が終ったとたん堀江君はマスコミの奪い合いにモミクチャ。空港を抜け出してホテルにつくと、ここでも部屋まで追いかけられた。とんだ騒ぎの帰国第一夜があけて国会を訪れたら、代議士さんにサインを求められてすっかり名士扱い。郷里の大阪では偉いやっちゃと凱旋将軍なみの歓迎、４ヶ月目に帰ってきたわが家に落ち着いた堀江君、このぶんでは不法出国の取調べも軽くすむだろう。

荒行で知られた身延山久遠寺では４３人の修行僧たちが山にこもって百日間の苦行を続けている。読経、木剣練習などの中で一番骨身にこたえるのは日に７回の水行。修行明けも近づいた２月３日の節分会には、各地から善男善女がどっと押しかけた。即身仏として磨きをかけた荒行僧達は信者が待ちかまえる本堂へ、お加持を受ければ思わず手を合わせたくなる有難さ。境内では豆ならぬ札びらが飛び、節分会は最高潮、この俗世の賑わいをよそに荒行僧たちは再び春立つおやまに帰っていった。

最近青い目の観光客がめっきり増えた京都では、あの手この手で外国人客誘致の新戦術。平安朝の趣向をこしらえたホテル、茶の湯から琴・生け花・京舞・雅楽・文楽まで古典芸能のダイジェスト版を見せる庭園コーナーなど。中でも一般家庭を訪問するホーム・ビジター制度は、日本の家庭生活に親しめるうえ、高価なホテルに泊まるより経済的と外国人客になかなかの好評。

東京墨田区の交通裁判所には朝開門とともに交通違反者がどっとなだれ込み、調べ室はたちまち満員の盛況となる。いわば交通戦争のＣクラス戦犯といったこの人たちの数は日に２千人から５千人、調書はベルトコンベアーで２階の検察庁へ送られるが、ここも千客万来の忙しさ、２１人のベテラン検事でもさばききれない。起訴状を添えて送られる３階の裁判所。即決裁判で最低１千円から５万円の罰金を言渡されると再び一階に戻って今度は支払い。かくてころがりこむ現金は一月およそ１億８千万円也。流れ作業も終点にきてぎっしりつまった箱の中から免許証がやっと我が手に帰ってくる。罪の意識はみじんもない今日の交通裁判所繁昌記。（カメラ・パトロール）

１９６２年３月２０日アメリカ最初の宇宙飛行士グレン中佐はアトラス・ロケット頭部、重さ１トン半のカプセル、フレンドシップ７号に乗り込む。この模様はテレビを通じて世界に公表され、米国民の期待と不安の中に秒読みを開始、午前９時４７分、ロケットはケープカナベラル基地を離れた。１２分後、ロケットを切り離したカプセルは無事軌道にのり、余裕しゃくしゃくたる中佐の声が地上に送られて来る。４時間５６分で地球を３周したカプセルは、大西洋上の予定水域に無事着水。打ち上げ決定２ヵ月、１０回にわたる延期の後、米国人間衛星船はついに成功した。こうしてソビエトとの宇宙競争に新しい自信を取り戻した米国民はケネディ大統領を始め国をあげて祝った。

このほど行われた市川電蔵さんと永田大映社長の養女遠田恭子さんの結婚披露宴には政財界を始め多くの名士、スターが顔を揃えた。新婚旅行はアメリカへ、２週間の予定で旅立った。（週間話題）

茨城県東海村の原子力研究所に日本最初の原子の火がともって今年で５年目。第１・２号炉も順調で軌道に乗ってきた。３番目の原子炉として完成が急がれているのは国産第１号炉。燃料は天然ウランを用いるため形も大きくなった。燃料棒を挿入する作業が続けられ、総出力１万ＫＷの原子の火がともることになっている。神奈川県武山の立教大学の研究所。プール形原子炉を輸入し本格的な教育にのりだした。産業界でも原子力の企業化に着手。川崎原子力センターに完成した研究所では、近代科学の粋を集めたコントロールルームで全ての操作が行われるようになっている。今年中に川崎を始め５つの原子炉の火がともることになり、日本で１２の炉が動くことになる。造船界でも原子炉の利用にのり出して、原子力船に取り付ける原子炉が船のゆれに対してどの様に影響するかの研究が行われている。１０年世界に立ち後れた日本の原子力は、今年からいよいよ本格化しようとしている。

国鉄三河島の大惨事の思い出も新たに初七日を迎えた事故現場では、遺族や地元の人々によってしめやかに法要が行われた。国鉄の東京鉄道管理局では厳しい世論にじっとしてもおられず、１７電車区で発電信号や発炎筒など特殊信号の扱い方の訓練を行った。あの時これさえたかれていれば、事故を最小限にくい止められたはず。自動列車制御装置など世界に誇る日本の鉄道技術。しかしこの優秀な技術も実際には資金難を理由にほとんど利用されていない。列車集中制御装置は全国で伊東線だけ、また信号機が見えなくても運転手に危険を知らせる車内警報装置は、重要幹線や一部の電車区だけといった具合。大部分を占めるローカル線は昔ながらの人と人が確認しあう昔ながらの保安設備、時代の先端を行く技術と昔ながらの方法が同居しているアンバランス国鉄、人命尊重こそ第一に守って欲しいものだ。