早いものであれから２０年になる。日本が運命の太平洋戦争に突入した昭和１６年（１９４１年）１２月８日の真珠湾奇襲攻撃。国会で宣戦の演説をする東条英機首相、やがて学徒出陣、祖国のため若い命を散らせた特攻隊員。全てが悪夢のような思い出、この夏、返還された特殊潜航艇の残骸は流れさった２０年の歳月を物語り、戦争の空しさ訴えているかのようだった。

山梨県石和町のブドウ畑で、職員寮建築のためにボーリングしたところ突然４８度のお湯が吹き出し、見るまに風流な露天風呂ができあがった。１日約９千立方メートルと豊富な湯量に、タダより安いものはないと毎日５千人の湯治客が押しかけて大入り満員の盛況だ。おかげでこの一帯は坪千円から一躍１万円に跳ね上がったとか。思わぬ恵みに笑いの止まらない石和町の表情である。

茨城県伊奈村は見るまにできた４つのゴルフ場をかかえ、それでもまだクラブ・ハウスの建設や拡張工事が盛んに行われている。おかげで農民たちは田畑づくりはほどほどに現金収入の道を求めて芝植えに精をだし、道路工事も急ピッチ、朝早くゴルフ場さし廻しのバスが人集めにやって来る。１日２７０円の日当てをもらって臨時キャディーのアルバイト。補償金で水道施設も完成、古くからなじんだ井戸も無用となった。立派な新校舎も出来上り、ステレオも買ってもらい笑いの止まらぬ村長さん。伊奈村はゴルフ・ブームですっかり姿を変えようとしている。

訪れて来た結婚シーズン。未来の花婿さんたちが、日曜大工や洗濯の講習に精を出している。この頃は結婚も逆コースとなって身分や家柄が重んじられて来たので、花婿さんの条件も大変である。一方、千葉県家政学院の花嫁さんの卵たちは農家の嫁を希望する人たちばかり。国会見学までする立派な乙女たちだ。毎朝太鼓の音で起床して体操する厳しい教育がなされている。全員寄宿舎生活で、生花はもとより豚の世話から農耕機運転など、機械化する農業の技術を積極的に学んでいる。このところ近郷近在の若衆から結婚の申込がいっぱい。卒業生は百パーセントお嫁に行けるというので明るい希望がみなぎっている。迎えた卒業記念写真の撮影会。新しい日本の村々に増えて欲しいおらが嫁っこの晴れ姿である。

物価の値上がりは家計のピンチと、台所をあずかる主婦たちはエプロン姿でデモ行進。軒並みの値上がりで日増しに値上げ反対の声が高まる。衆議院予算委員会の最終日は社会党のくい下がりで荒れ模様を呈したが、予算案は政府原案通り可決。本会議で社会党は組替え案を出したが、結局１兆９千億円の大型予算は衆議院を通過する運びとなった。約１ヵ月にわたる審議を終って池田勇人首相、水田三喜男大蔵大臣をはじめ政府、与党の人々はほっとした表情である。

うんざりする暑さでビヤホールは超満員、おかげでビールが売れて品不足、お得意様に断るのに一苦労。電気冷蔵庫に押され気味の大阪の製氷業者が知恵を絞って考え出したのは氷の器。水晶のように美しい氷の器は真夏でも３時間は大丈夫、涼味百パーセントの新商売。丑の日を迎え、鰻の注文が殺到する浜名湖のうなぎ養殖場、全国の８割を占めるここでは、てんてこまいの忙しさ。この年は前年より２百トンも多い出荷が見込まれ、うなぎ上りの景気の良さ。しかし、背中をさかれて串に刺される哀れ蒲焼きの運命、うなぎにとってはとんだ危日だ。

中学を卒業した１５歳から１７歳までの年少労働者は、全国で２２５万人もいる。こうした少年少女の生活作文入選者がこのほど表彰され、多くの共感を呼んだ。働く少年達には夜間高校が楽しい息抜きの場所、洋服屋の組合で作った洋裁学校には、住み込みの少女達が休日ごとに熱心に基礎技術を習いに集まって来る。働く青春の集い「根っこの会」では今日も新しい仲間を迎えて楽しいレクリエーションのひとときだ。都会の中で相談相手もなく働いている年少労働者に暖かい福祉の手をさしのべたいものだ。

６月のウィーン会議でフルシチョフ首相が年内に東独との単独講和とベルリンの自由化を提案して以来、逃げるなら今の内と、食糧不足で暮らしにくい東ドイツからの難民は８月に入って毎日２千人をこえ８年前の東独暴動以来の記録を作っている。これを防ぐため東独は１９６１年８月１３日、西ベルリンへ通ずる道路を封鎖、戦車と人民軍で固めた。抗議して集まった群衆は戦車と放水でけちらされ、興奮する市民を前にブラント西ベルリン市長が西側の強力な対抗手段を訴える。強力な軍事力をバックに難題を突きつけたフルシチョフ首相に対し、ケネディ大統領がいかなる解答を打ち出すか。東独の赤い海に独立するベルリンはいよいよ米ソ対立の最前線に押しやられた。