皇太子ご夫妻をお迎えして、柏鵬時代の景気に沸く国技館。１９６１年１月２２日大相撲初場所千秋楽、柏戸は琴ケ浜を破って１３勝２敗で見事初優勝し、同時にパリ行きの切符を手に入れた。

中央公論社社長宅が襲われた嶋中事件から２０日目の１９６１年２月２１日、警視庁はかねてからテロの背後人物と目されていた愛国党総裁赤尾敏を殺人教唆の疑いで逮捕した。事件のけじめも一応ついて小倉謙警視総監は辞意を表明。新総監には原文兵衛氏が就任することになった。ところが２４日、赤尾敏の拘置請求を受けた東京地裁の飯守重任裁判官は嶋中事件の原因は皇室侮辱にあり、テロを招いた（左翼の）集団暴力の規制を考えるべきだとの意見を発表、裁判官として異例のこの一方的な発言は大きな波紋を投げかけた。

１９６１年５月１６日、午前３時を期して韓国の軍隊は一斉に行動を開始し、政府重要機関を襲って一挙に３権を掌握した。クーデターの総指揮者は３８歳の張都暎中将。ただちに組織された軍事革命委員会はこの蜂起は腐敗した現政権を倒して、反共を第一使命にするためだと布告文を発表。１８日、軍の要求をうけて張勉内閣は総辞職、学生たちの間に高まりつつあった南北統一の運動を圧えられなかった現内閣にクサビを打つための蜂起とみられる。２０日、張中将を総理として全員高級将校による軍人内閣のもとで、新たな反共体制を迎えた。

アデナウアー西独首相の西ベルリン訪問に際し、ソビエトは米・英・仏３国に覚書を送り、西独のスパイが西ベルリンへ航空路を利用しているのは四ヵ国協定侵犯であると、新たな危機を作った。これに対しアメリカはジョンソン副大統領を西ベルリンにおくり同盟国を信頼して自重するよう訴え。西ベルリンを見捨てない証拠に１５００名の増援部隊を増強した。西側の生命線とも言うべき航空路をめぐって国際不安はますます深まってきたよう。

２１才の大相撲史上最年少の横綱・大鵬を囲んで、二所ノ関部屋は我が世の春。玉錦以来２３年ぶりの横綱に威勢のいい綱打式。お母さんはわが子の晴れ姿にうれし泣き。一方、伊勢ノ海部屋では、柏戸が思いがけない横綱の栄誉に夢からさめやらぬ心地。１９６１年１０月２２日、２人の新横綱は明治神宮の横綱推挙式に臨み、雲竜型の手数入りを披露した。

１９６１年７月１日から東京都体育館で幕を開けたモスクワ国立ボリショイ・サーカス。宇宙旅行の国にふさわしい空中アクロバットや、熊の名優ゴーシャ君の妙技が人気を呼んでいる。サーカス最大の呼びものは、２０世紀が生んだ最大の魔法使いキオさんの目を奪うばかりの大魔術。「焼き殺される美女」の１シーンを紹介する。

今年中学を卒業する終戦っ子は、昨年に比べて３６万人も少ないのでどこの会社でも引く手あまたの求人難だ。会社側はいたって低姿勢。京浜工業地帯の川崎市でも大きな会社の入社試験に集まったのはたった２０人足らず。５０人の募集にたった４人しか集まらなかった小さな会社では、せっかく集まった応募者をよそにスカウトされては大変と、お茶やお蕎麦で下にも置かぬサービス振りである。工場側はデラックスな寮を建て受け入れ体制を整えれば、負けてはいられないと商店側では、立派なベッドやテレビを備えて終戦っ子やーいと待っている。何とかして下さいと職業安定所へ泣き込んだが、ここでも列をつくって終戦っ子募集。好景気の波に乗って終戦っ子には笑いの止まらぬ就職シーズンである。

１９６１年３月９日福岡県田川郡上清炭鉱で坑内火災が発生、死者７１人を出す戦後最悪の炭鉱事故となった。はっきりした原因はまだわかっていない。国会では社会党の岡田利春氏が政府の責任を追求した。事故の１週間前に保安検査をした監理課長補佐は、責任を感じて自殺。保安監理の大元締め通産省の試験所では、ロープを伝わって坑道内を巡回するロボット保安機や自動ガス警報機など、保安のオートメーション化の研究が急がれている。１９６０年９月２０日、川底の陥没で死者６７人を出した豊洲炭鉱では、細ぼそと復旧作業が行なわれているが、死体の収容もされないまま廃坑同然という有様。職場を失った鉱夫たちは少ない給料でやっと暮らしをたてている。犠牲者の遺体が淋しく運び出される炭住街。この人々が安心して働けるのはいつのことだろうか。