北海道の森町は復興も遅々として進まないまま冬を迎えようとしている。第２室戸台風の残骸も生々しい和歌山県御坊町、中学校の講堂には今でも３７世帯の被災者がカーテンで仕切りして、仮住いを続けている。バラックの住宅の工事は材料不足のままストップして、年内には間に合いそうにない。集中豪雨で廃虚と化した伊那谷の大鹿村、分校を失った北川地区の子ども達は１２キロも離れた本校で寄宿生活をおくっている。山崩れで５５人の死者を出した大河原では、まだ１０人の遺体が発見されていない。田畑を流され実りの秋を迎えることもできなかった農民たちは、男８百円、女５百円の日雇いの復旧工事にでて生活を立てなければならない。保育所で落葉をたきながら、働きにでた親の帰りを待つ子ども達。伊那谷にやがて冬が迫ろうとしている。

ソビエトや米国に遅れをとるまいと日本でも宇宙旅行の準備が進められている。防衛大学航空工学教室ではロケットに使う液体燃料のテストが行われ、結果は上々。名古屋大学環境医学研究所ではネズミをカプセルに長時間閉じ込めて心臓の変化を調べる動物実験を行っている。また、防衛庁の航空医学実験隊では犬を遠心力発生装置に乗せて加速度による生理的変化を調べ、宇宙旅行への研究が進められている。これらの研究が実って日本が宇宙旅行の仲間入りが出来る日もそう遠くはないようだ。

日米外交史を通じて初のマンモス会議と言われる。第１回日米貿易経済合同委員会に出席するラスク国務長官ら米国側代表団は、１９６１年１１月１日秋たけなわ箱根路は仙石原の会場に到着。翌日２日からの会議は両国の閣僚１４名が顔を揃えて和やかに開かれた。池田勇人首相、小坂善太郎外相、ラスク長官はそれぞれ日米関係に新生面を開くべく努力したいと挨拶した。個別会談やレセプションで実力者の面々が経済政策、国際収支の危機をめぐって米国側と突っ込んだ意見を交わし、対等ムードを盛り上げた夫人連が東京の休日を楽しめば、ダンナ連は大名行列に異国情緒を楽しむひととき。直接的な成果はなかったとは言え、将来に希望をかけて黒船以来の大会議は幕を閉じた。

伊豆長岡のあやめ祭りが盛大に行われた。この祭は源三位頼政の奥方であった菖蒲の前の霊を慰めるもので、今年は十二単の菖蒲の前が待つ長岡へ頼政公の子孫がヘリコプターで乗り込んで風情を添えた。２人は三三九度の杯をかわしてまことしやかに御所車で湯の町をパレード。今様頼政公をうっとりさせるあやめ祭りの一日。

１９６１年８月１５日、ミコヤン・ソ連第一副首相がテープを切ってソ連商工業見本市は開かれた。忙しい日程にもかかわらず生活水準を知ろうとデパートへの商品を調べたり美しい花嫁衣装に日本の商品は素晴らしいとおせじも忘れないほど。日本の実情はこの目でと、休む間なく関西へ、大阪ではまずテレビ工場でその技術の高さをほめ、造船所では建設中のソ連貨物船オムスク号を前に日本の造船技術の大きな発展を感ずると満足そうな表情。ミコヤン氏が来日以来初めて日本の美を味わったのは京都の１日、雨の金閣寺でゆっくりとくつろいだ。

全国からお母さんたちが続々と集まって第７回母親大会は今年も１９６１年８月２０日東京で開かれた。札をつけてもらって子供たちをあずける臨時託児所も出きてお母さんたちにゆっくり勉強してもらおうと言うわけだ。各教室は超満員、難しい国際問題や政治経済の問題と取り組んで熱心な学習がつづく。そのころお父さんお守り役、保母さんもテンヤワンヤ、１万４千人のお母さんたちは政治への関心は高まるばかり。

鎌倉の街をながすなつかしい乗合馬車、ノスタルジャ号は人々の郷愁をのせてのんびり走っている。交通ラッシュのお江戸を行くかご屋、これは旅館のなみならぬ商魂の現れ。また灯の消えたはずの吉原に現われたおいらんは情緒を売りものにするこれも新商売。迷惑なのか照れるのか引っ張り出されたお客さん、ふと昔を思い出す。江戸に負けるかと大阪では大名かごに奥女中のサービス付きの御殿風な宿がお目見え、リバイバルブームにのった新商売。

ビルマ服を来てウ・ヌー首相の夕食会に招かれた池田勇人首相は「愛染かつら」の歌もとび出ししばし旅情を慰めラングーンの一夜をくつろいだ。懸案の賠償交渉は再び東京会談に持ち越されたが最後の訪問国タイでは６年ぶりに日・タイ間の厚い壁となっていた特別円問題処理の解決を見、これを唯一のおみやげに羽田空港に帰国した。しかしこのおみやげ、野党は強い反対をしており通常国会では激しい攻撃の的になりそう。