１９６１年１１月６日、映画の都アメリカ・ハリウッドの近郊で起きた山火事は折りからの強風で付近一帯に広がった。３千人の消防士が動員されたが、火の手は映画スターの住む山手の高級住宅街に燃え移った。飛行機からの消火剤投下などの大規模な消火作業も及ばず、ニクソン元副大統領ら住民３千人に避難命令が出されるほどの大火事となり、４日間燃え続けたうえ、１億ドルに上る損害を出し、アメリカ太平洋岸では近来にない大火と言われている。

東京晴海の貿易センターで初めてソ連商工業見本市は、大衆車ボルガや原子力砕氷船レーニン号、スプートニクの模型などによって前景気は上々。この見本市を機会にミコヤン・ソ連第一副首相が来日。右翼はこの来日を反対して、ミコヤン帰れとデモ行進して気勢を上げた。１９６１年８月１４日ミコヤン氏到着の日、羽田空港は警官７千５百人を動員して空前の警戒体制。右翼は手も足もでない。正午過ぎて事なく東京入り。直ちに小坂善太郎外相、佐藤栄作通産相などを訪問した。革命後のソ連から初めて迎えたクレムリン要人ミコヤン氏、世界一流のセールスマンといわれる彼の微笑みによって、日本にハラショー・ソビエトの赤い施風がまき起こるだろう。

訪れて来た結婚シーズン。未来の花婿さんたちが、日曜大工や洗濯の講習に精を出している。この頃は結婚も逆コースとなって身分や家柄が重んじられて来たので、花婿さんの条件も大変である。一方、千葉県家政学院の花嫁さんの卵たちは農家の嫁を希望する人たちばかり。国会見学までする立派な乙女たちだ。毎朝太鼓の音で起床して体操する厳しい教育がなされている。全員寄宿舎生活で、生花はもとより豚の世話から農耕機運転など、機械化する農業の技術を積極的に学んでいる。このところ近郷近在の若衆から結婚の申込がいっぱい。卒業生は百パーセントお嫁に行けるというので明るい希望がみなぎっている。迎えた卒業記念写真の撮影会。新しい日本の村々に増えて欲しいおらが嫁っこの晴れ姿である。

静岡県の町外れにこの度出来上がった化粧品工場、レジャーブームの波に乗ろうと早速おしゃれ売り込みのセールスマン教育。セールスの第一課は地元を固めることが大切だとお茶畑にのり出し、これからは農村の女性も美しくなって下さいと先ずはお顔拝借。今が盛りのイチゴ畑にも進出しておしゃれ攻勢もたけなわ。

天皇の長女東久邇成子さんは１９６１年７月２３日未明、腸ゆ着症のため宮内庁病院で死去された。徹夜の看病もむなしかった悲しみの天皇・皇后両陛下、遺体は最後まで治療にあたった人々の見送る中病院をでて行く。昨年島津貴子さんの結婚式においでになったありし日の成子さん、戦後は一庶民の主婦として３男２女の母として歩んだ３５年の生涯だった。

防衛庁のミサイル試射場予定地伊豆の新島は、試射場設置で意見が真っ二つ。反対派の島民に迎えられて続々とオルグ団が上陸して来る。一方賛成派は右翼団体を中心に、試射場設置は島の発展を促進すると大会を開き、日の丸を手にデモ行進。村長さんに決議文を手渡して激励、気勢を上げる。負けてはいられないと反対派、ミサイルは島の平和を危うくするものだと村役場へデモをかける。この様に反対派と賛成派が、老いも若きも村ぐるみのにらみ合いで明け暮れる新島は、いま嵐の前の静けさに包まれている。

党役員の改選と内閣の改造を前に池田勇人首相は党内の実力者を招き米国訪問の成果を報告、内外の緊迫した情勢を説明して大物をそろえた挙党一致の体制を作りたいと協力を求めた。改造の焦点はそのポストが注目される佐藤栄作氏、内閣だけでなく党の強化もと注文をつける河野一郎氏、箱根構想はすっかりまとまって、池田首相は庭作りに余裕を見せている。

春とはいえ雪におおわれた青森県の八甲田山では自衛隊の訓練が行われている。その昔旧陸軍青森連隊の一部隊が吹雪のため全滅した難所も装備と天候に恵まれて進軍も快調。長野市の善光寺はお彼岸の中日１０万石の大名行列をくり出し御開帳の前景気あおっている。お彼岸とあれば犬猫の仏を供養、東京の多摩霊園は奇特な人間達でにぎわった。また、慶応中等部の３３名の生徒は１０日間の米国旅行に出かけることになり、旅費は１人ざっと４０万円、すねをかじられた両親に見送られて１９６１年３月２３日、羽田を出発した。