中山競馬場呼び物の大障害レース、次々の難関に転倒馬も続出してファン熱狂の大レースを展開、栄冠はついに初参加のハクレイに輝いた。（週間話題）

「鳩山訪ソ」をめぐって国民の意見もまちまちの今日この頃、訪ソ賛成、反対それぞれの大会があちこちで開かれている。１９５６年９月１５日、鳩山一郎の手許へソ連漁業代表部首席チフヴィンスキーが、ブルガーニン首相からの返書を届けた。しかし、肝心の領土問題についてはノーコメント。トコトンまでもめる自民党は、この書簡をめぐって蜂の巣をつついたような騒ぎである。この分では鳩山訪ソも楽観を許されないようだ。

１９５６年１１月１日、鳩山一郎全権の一行は、空港始まって以来の歓迎陣で埋まった羽田に帰国した。留守家族や漁業団体の歓呼に応えながら、交渉妥結の挨拶を済ませた鳩山は、凱旋将軍さながらの歓迎を受けて音羽御殿に帰った。２日には社会党の鈴木茂三郎委員長を招いて、日ソ共同宣言の国会承認について協力を求めた。こうして、政局の焦点は首相引退の時期に絞られて来た。箱根に籠った鳩山は一人静かに構想を練っている。

水害のシーズンに備えて利根川堤防では水防演習で大わらわである。その矢先、１９５６年７月１６日から降り続いた大雨のため、新潟、福島県などは大きな被害を受けた。（週間話題）

１９５６年１２月２０日、鳩山一郎は鈴木茂三郎社会党委員長の言葉に送られて、静かに国会を去って行った。続いて後継首班の指名投票で石橋湛山が当選、直ちに首相官邸で組閣工作に入った。ところが、組閣方針が気に食わぬと岸信介派、石井光次郎派、大野伴睦派それぞれつむじを曲げ、組閣は一進一退、連日徹夜の折衝もさっぱりらちがあかず、強気の石田博英官房長官もすっかり音をあげてしまった。組閣出来たのは４日目の夕方。ようやく発足したが、石橋内閣の今後の政治力が思いやられる。

１９５６年１１月３日は「文化の日」、皇居では文化勲章（第１５回）授与式が行なわれた。受章者は山田耕筰（作曲７０歳）、村上武次郎（金属学７３歳）、新村出（言語学・国語学８０歳）、八木秀次（電気工学７０歳）、安藤廣太郎（農学８５歳）、古畑種基（法医学６５歳）、坂本繁二郎（洋画７４歳）の各氏である。この日、京都では文華典が華やかに幕を開けた。二条城がつくられて３５０年、鷺舞や式包丁など徳川の盛衰が偲ばれる生きた絵巻物だ。また、東京では八重山群島の獅子舞が２８年ぶりに披露された。（週間話題）

故国への土産にお神楽を稽古するアメリカ娘、もうちょっとした名取だ。こちらは武者修行のアメリカの兵隊さんの居合術、なかなか堂に入ったものだ。（週間話題）

「南千島（歯舞、色丹、国後、択捉の４島）をソ連に譲るようなことがあれば、アメリカは沖縄を領有する」というダレス米国務長官の一言は青天の霹靂、政界に大きな波紋を投じた。衆議院外務委員会では野党がするどく政府を追及、もともと二つに割れていた自由民主党は、主流派、反主流派と、それぞれしきりに会合を開き、日ソ交渉をめぐって与党内部の対立は益々激しくなって来た。この中で河野一郎農相は軽井沢に鳩山一郎首相を訪問、首相はみずからモスクワ行きの決意を固め、山を後に東京へ帰った。千島は、明治８年（１８７５年）千島・樺太の交換、日露戦争におけるポーツマス条約、第２次世界大戦のヤルタ協定等で帰属を異にし、昭和２６年（１９５１年）対日講和条約の受諾により日本はその放棄を明らかにしたのである。１９５５年６月のロンドン交渉に次ぎ、モスクワ交渉も領土問題でついに行き詰まり、重光葵全権は空しく羽田空港に帰って来た。こうして、政府は日ソ交渉に最後の断を下すことになったが、鳩山内閣はかつてない最大の危機に直面している。