１９５６年９月２３日はお彼岸の中日、秋日和にめぐまれてお墓参りの人々はひきもきらず。７才の豆和尚さんも壇家廻りに遊ぶ暇もない忙しさだ。ワン君もニャン君も今日は特別の待遇である。東京文京区のお年寄り連は、お詣りだけが能ではないとお寺に集まって体操や踊りのドンチャン騒ぎ。お彼岸の各地の話題である。

１９５６年５月２１日未明、ビキニ環礁で初の水爆空中投下の実験が行なわれた。午前５時５０分、Ｂ５２爆撃機から投下された爆弾はナム島の上空で爆発した。巨大な火の玉とともに無気味な原子雲があたり一面に広がって行く。この度の実験は、アメリカで最初の空中投下というばかりでなく、水爆が実際に使用できる兵器として立証されたものと言われる。わが調査船「俊鶻丸」は、一昨年に続いて再び放射能の海を調査するため、１９５６年５月２６日、東京竹芝桟橋を出発、南の海へ向かった。そして荒波にもまれながら観測を行ない、死の灰の恐怖と取り組んでいる。

１９５６年４月１８日、東京の新宿御苑で催された観桜会で、鳩山一郎首相はご満悦の体である。ところが翌日の衆議院の本会議では、教育２法案の引延ばしに出た社会党と与党議員の間で、押し合いへし合い秘術を尽くしての攻防戦が展開された。１度は時間切れに持ち込んだものの、ひた押しの与党の作戦に法案はついに衆議院を通過、小選挙区法案の審議と共に、今後の攻防戦は一段と激しさを加えて行くことが予想される。

深刻な対立を続けていた炭労（日本炭鉱労働組合）争議は、１９５６年３月３１日夜、中山伊知郎中労委（中央労働委員会）会長の第２次斡旋案を労使共に受諾したため、やっと解決した。ロックアウトも解かれ、ヤマ（鉱山）の従業員たちは久しぶりに坑内に入った。そして黒ダイヤ（石炭）が力強く流れ出る。（週間話題）

「小選挙区法案」をめぐって与党と野党の対立は益々激しく、委員会はいずれももみ合い。法案を本会議に移すまいと、社会党は牛歩戦術と動議戦法で引延ばしにやっきだ。益谷秀次衆議院議長は斡旋案を出したが、社会党の同調を得られず、議長の職権で開いた会議はついに与野党の激突で大混乱に陥った。しかし、１９５６年５月１日に到って、自民、社会両党とも一応議長の斡旋案を承諾、やっと審議は軌道に乗ったが、小選挙区法案の前途は益々多難だ。

瀬戸内海の児島湾を閉め切って淡水湖とする潮止め工事は、１９５６年２月２２日の干潮を期して行なわれた。この湖は「児島湖」と呼ばれ、日本一の人造湖だ。長い間水不足に苦しんで来た干拓農地は、この湖の出現によって潤され、農作物の大増収が見込まれている。

鳩山一郎総裁は参院選挙応援のため、１９５６年６月２２日、河野一郎農相らとともに、特別仕立ての日航機で北海道に乗り込み、札幌、小樽の両市で演説会を開いた。一方、社会党の鈴木茂三郎委員長も東北、関西に、忙しい遊説の旅を続けている。選挙もいよいよ終盤の追込みに入ったが、農村の候補者は畑の中に分け入って熱演し、都会でも連日立会演説会が開かれている。

１９５６年８月１０日から神宮プールで行なわれた、日本選手権水上競技大会。男子１００ｍバタフライ決勝では石本隆選手が日本新記録で優勝。女子１００ｍバタフライでは１着が榎本千恵子、２着が寺垣内達代の激しい競り合いがスタンドを沸かせた。男子１５００ｍでは、新人１８才の山中毅選手が強豪を押さえて優勝。男子２００ｍ平泳ぎでは、古川勝選手が王者の貫禄をみせ、見事な潜水泳法で優勝した。こうして、大会は多くの好記録を生み、メルボルン・オリンピックへの希望を高めた。（メルボルンめざして）