１９５６年４月２１日夜、河野一郎農林大臣ら日ソ漁業交渉団の一行は、盛んな見送りを受けて羽田空港を出発、一路モスクワへ向かった。日本の北洋漁業、ひいては国交回復に深い影響を持つだけに、国民の大きな期待がよせられている。

１年半にわたった日ソ交渉も、１９５６年１０月１８日、河野一郎とフルシチョフ会談でついに妥結。モスクワ電によって政界は急に慌ただしさを加えて来た。政府は臨時閣議を開いて日ソ共同宣言を承認。１９日午後５時５０分（モスクワ時間）、日本時間１９日午後１１時５０分、クレムリン宮殿で調印式が行われた。チフヴィンスキー・ソ連漁業代表も上機嫌で記者会見。この日品川に着いた引き揚げ者の顔もほころんでいる。島へ帰る日を待つ歯舞村の人々の明るい表情。とにかく１１年ぶりに日ソ国交回復の第一歩が訪れたのである。

問題の小選挙区法案をめぐって、１９５６年４月１６日、自由民主党と社会党との間で立会い演説会が行なわれた。満員の聴衆は大きく二つに分かれてヤジの応酬、その中で岸信介幹事長、浅沼稲次郎書記長らが激しい論戦に火花を散らした。

秋風の美術シーズンが幕を開けた。秋風立つ箱根で親子水入らずの制作は辻永画伯、阿蘇の自然に打ち込む田崎広助画伯、幻想的な壁画に最後の筆を入れる東郷青児画伯。豊かな大家にくらべて、アルバイトのモデルをしながら絵の修業する女性、屋根裏のアトリエで大作と取組む新進画家、激しい労働の合間に制作する労働者等、シーズンを迎えて大家、新人それぞれに、忙しい芸術家の姿だ。

１９５６年９月５日、神宮プールで行なわれたオリンピック選考記録会で、１５００ｍ自由形に山中毅選手が、９月７日から開かれた第３２回日本学生選手権水上競技大会兼オリンピック代表予選会では平泳ぎの古川勝選手、バタフライの石本隆選手が数々の記録を樹立し、メルボルン・オリンピックへの希望をいよいよ高めた。（スポーツ）

第１１回国民体育大会夏季大会は、１９５６年９月２２日、西宮市甲子園プールの開会式で幕を開けた。好記録続出の水上競技、西宮港のヨットレースなど４日間にわたるスポーツの祭典が繰り広げられた。（週間話題）

輸送力の行き詰まりに悩む国鉄では、せめて、大都会のラッシュだけでも緩和させようと、東京の山手線と京浜線の分離工事を進めている。あわせて駅の通路も拡張中。そのような中で、１９５６年９月１日、国鉄５ヵ年計画を発表した。ところが、５ヵ年計画の完成には５０００億円ものお金が要るそうだが、どうしてひねり出すか、ちょっと気にかかるところである。

１９５６年１２月５日、日ソ共同宣言は参議院本会議に上程され、３票の反対投票はあったが可決、ここに日ソ国交は１１年ぶり回復することになった。しかし、スト規制法の通過を狙う政府与党は会期の延長を計り、これに反対する社会党と夜通しもみ合った。６日の衆議院議院運営委員会で強引に押し切った上、益谷秀次衆議院議長は、議員の護衛つきでシャニムニ本会議場に飛び込み、わずか１分間の早業、社会党議員があっけにとられる間に、自由民主党議員だけで７日間の会期延長を議決してしまった。スト規制法の採決が行われる参議院の本会議では、社会党の必死の引き延ばし戦術も効なく、結局同法案の存続は決定された。重要法案の通過をみて、政局の焦点は、自民党の後任総裁に絞られて来た。岸信介幹事長、石橋湛山通産大臣、石井光次郎総務会長それぞれ自信ありげな表情である。総裁選挙戦はまさに最後の追い込みである。鳩山一郎の引退とともに、政界は新たな局面を繰り広げようとしている。