軽井沢で静養中の鳩山一郎首相のもとに、１９５６年８月１０日政府与党の首脳が集まり、後継総裁問題、内閣改造問題を協議した。岸信介幹事長は弟の佐藤栄作とのんびりゴルフを楽しんでいたが、８月１２日のモスクワ電は日ソ交渉の急迫化を伝えてきた。ソ連領土案に対する諾否の決定を迫られた政府与党は、８月１３日、首相も慌てて帰京し臨時閣議を開いた。その結果、ソ連案のめずとの強い態度を明らかにし、８月１４日スエズ国際会議に出発した吉野信次運輸大臣が、政府の意向を重光葵全権に伝えることになった。こうして、日ソ交渉はいよいよ大詰めに来たのである。

再開国会冒頭、野党は第１陣に河上丈太郎をたて、ともすればぐらつきがちな鳩山一郎外交に鋭くつめより、２大政党による激しい論戦を展開した。

日ソ国交回復で帰国することになった抑留日本人１０２５人はナホトカ駅に到着、人々は寒々としたシベリアの街に感慨深そうなまなざしを送っている。凍る雪の道を踏んでいよいよ乗船、苦しかった１１年の抑留生活の思い出も、今日は希望の帰国で誰もが明るい表情である。興安丸は１９５６年１２月２６日朝、小雪まじりの舞鶴港に入港。この日三千人の留守家族が出迎え、１１年ぶりの再会に桟橋は感激の嵐に包まれた。そのかたわらには、帰国の日を眼の前にして病死した近衛文隆さんの未亡人正子さんの侘しい姿も見られた。ともかく、長い間国民の念願であったソ連抑留同胞の集団帰国はここに終り、人々はそれぞれ懐かしい故郷で正月を迎えることになったのである。

１年半にわたった日ソ交渉も、１９５６年１０月１８日、河野一郎とフルシチョフ会談でついに妥結。モスクワ電によって政界は急に慌ただしさを加えて来た。政府は臨時閣議を開いて日ソ共同宣言を承認。１９日午後５時５０分（モスクワ時間）、日本時間１９日午後１１時５０分、クレムリン宮殿で調印式が行われた。チフヴィンスキー・ソ連漁業代表も上機嫌で記者会見。この日品川に着いた引き揚げ者の顔もほころんでいる。島へ帰る日を待つ歯舞村の人々の明るい表情。とにかく１１年ぶりに日ソ国交回復の第一歩が訪れたのである。

１９５６年９月２９日、政府は松本俊一全権によって、ソビエト政府との間に領土問題継続交渉の話し合いがついたと発表。早速臨時閣議を開いて鳩山一郎首相のモスクワ行きを決定。面白くないのは吉田茂前首相ら外交界の長老連、顔を合わせて慎重論の繰り返し。１０月１日の議員総会も吉田派の反対にあってお流れ。鳩山のモスクワ行きは土壇場までもめている。

豪華船プレジデント・クリーヴランド号でハリウッドの映画制作者サミュエル・ゴールドウィンらが、１９５６年３月３１日、横浜についた。春とともに映画人の国際交流はいよいよ盛んなようである。（週間話題）

１９５６年１１月２２日、１１万の大観衆で埋まったメルボルン・オリンピック・メインスタジアムでは、世界６７ヵ国４千人を超える若人によって、「民族の祭典」第１６回オリンピック大会の華やかな開会式が行われた。各国の選手団は、民族特有の色とりどりの服装で次々に入場、中でも日本選手団の整然たる行進はスタンドの賞賛を浴びた。午後４時２５分エジンバラ公の開会宣言が行なわれ、遙々とギリシャから主催国オーストラリアへとリレーされた聖火が、金色の聖火台に赤々と点ぜられた。大会２日目、女子円盤投げ決勝、チェコのフィコトワは５３ｍ６９ｃｍを投げ、オリンピック新記録で優勝。日本の吉野トヨ子は惜しくも予選で失格だった。１００００ｍ決勝は、ソビエトのクーツと、イギリスのフィリーによる息詰まる接戦の末、２８分４５秒６のオリンピック新記録でクーツが優勝。日本選手の活躍が期待される重量挙げバンタム級では、アメリカのヴィンチが３４２．５キロで優勝。日本の古山征男はよく頑張って８位に入った。この日、日本選手はよく健闘し、バンタム級では南部良雄が３０５キロの日本新記録で第６位、フェザー級では白鳥博義が３２５キロの日本新記録で堂々第５位に入賞した。こうして国境を越えて結ばれたスポーツの祭典は、２週間にわたる豪華な幕を開けたのである。

中国福建省の中学生・徐竹初君は木彫りの名人。友達にも彫刻をすすめ、みんなで操り人形のグループをつくった。見事に出来上がった人形を操って、お百姓さんが悪魔を退散させる楽しい一幕を演じている。（週間話題）