「南千島（歯舞、色丹、国後、択捉の４島）をソ連に譲るようなことがあれば、アメリカは沖縄を領有する」というダレス米国務長官の一言は青天の霹靂、政界に大きな波紋を投じた。衆議院外務委員会では野党がするどく政府を追及、もともと二つに割れていた自由民主党は、主流派、反主流派と、それぞれしきりに会合を開き、日ソ交渉をめぐって与党内部の対立は益々激しくなって来た。この中で河野一郎農相は軽井沢に鳩山一郎首相を訪問、首相はみずからモスクワ行きの決意を固め、山を後に東京へ帰った。千島は、明治８年（１８７５年）千島・樺太の交換、日露戦争におけるポーツマス条約、第２次世界大戦のヤルタ協定等で帰属を異にし、昭和２６年（１９５１年）対日講和条約の受諾により日本はその放棄を明らかにしたのである。１９５５年６月のロンドン交渉に次ぎ、モスクワ交渉も領土問題でついに行き詰まり、重光葵全権は空しく羽田空港に帰って来た。こうして、政府は日ソ交渉に最後の断を下すことになったが、鳩山内閣はかつてない最大の危機に直面している。

１９５６年５月１１日の衆院選挙法改正特別委員会は、与党の修正案を審議するかどうかでまたも混乱、小沢佐重喜委員長は室外へ押し出されてしまった。野党の強硬な反撃にあって与党は次第に押され、ついに法案は骨抜きの形となって１５日の委員会で一応可決、本会議に回された。１６日の本会議では鳩山一郎首相も野党議員の攻撃の矢面に立ち弁明に努めている。かくて鳩マンダーといわれ幾多の話題をまいたこの法案もついに衆議院を通過した。

アフリカのフランス領アルジェリアの暴動はいよいよ激化し、フランス軍は空軍の協力の下に、山岳地帯の反乱軍に対し激しい攻撃を加えた。一方、首府アルジェーには近代的ビルが建ちならび、住民の住宅難に対するフランス政府の熱意のほどを見せている。フランスの悩みの種、植民地アルジェリアが露呈する２つの姿である。

大相撲夏場所は、１９５６年５月２０日、蔵前国技館で初日の蓋をあけた。客足は上々、お相撲さんは浴衣姿で入場。若ノ花（東大関）に信夫山（西前頭３枚目）の一番は、信夫山有利な態勢でぐいぐい寄ったが、若ノ花の上手投げ見事に決って初日を飾った。（週間話題）

ファッションショーも近頃は流行のミュージカルで趣をそえている。人気歌手も登場し、詰めかけた淑女連をうっとりさせている。（週間話題）

第３４回全日本レガッタ選手権大会第２日、慶応大学と京都大学とのオリンピック代表をかけた一戦が、１９５６年８月１２日、埼玉県戸田コースで行なわれた。京大はスタートからリードを奪い、たえず慶大を押さえていたが、慶大必死の追込み物凄く、わずか１尺（約３０センチ）の差で京大を破り、晴れのオリンピック代表権をにぎった。（メルボルンめざして）

ビルマで戦死した１３５１柱の遺骨は、遺骨収集団の胸に抱かれて１９５６年３月１５日羽田に帰って来た。一方、１９日大阪に入港した「日昌丸」で、インドネシアから１１人の元日本軍の兵隊が帰って来た。（週間話題）

ヒマラヤ・マナスルの登頂に成功した槙有恒隊長ら９名の日本登山隊が、１９５６年６月２２日、日焼けした元気な姿で、１０００名の歓迎陣の出迎える羽田空港に帰って来た。（週間話題）