鳩山一郎首相の訪ソ問題はすったもんだでなかなか決まらず、しびれを切らしたシベリア抑留者の留守家族は、１９５６年９月７日、東京日比谷で大会を開き、続いて初のデモ行進。一方財界では、弱体鳩山内閣の退陣を希望すると異例の三下り半を突きつけ、自民党に一波乱を巻き起こした。社会党が“早期妥結鳩山訪ソ”に協力すると激励すれば、当の自民党は相変わらずの小田原評議。強気の河野一郎農相一人やっきとなって駆け回っている。

日ソ漁業条約と海難救助協定は、モスクワの日本・河野一郎代表とソ連・イシコフ漁業相との間で調印を終えた。時に１９５６年５月１５日午前４時１５分。この報に北洋漁業基地の漁師たちは明るい表情である。しかし漁獲制限の影響は大きいばかりでなく、条約の効力が生まれる為には日ソ国交の回復が必要。５月１６日の衆議院外務委員会で、重光葵外相は国交回復問題とからんで苦しい答弁となった。このような中、ソビエトのチフビンスキー氏が新たに在日代表部首席として空路着任。日ソ両国の国交回復への動きは、漁業条約調印と共に一段とテンポを早めるに到った。

北アフリカのチュニジアでは、フランス軍の撤退を要求するデモが続き、更に緊迫の度を増している。ポーランドの首都ワルシャワでは、新政府の誕生にあたって４０万人の市民が文化科学宮殿前の大広場に集まった。東欧諸国の一つとしてその動向が注目されている時、ゴムルカ党第一書記が新政策を国民に力強く訴えている。全国的な反ソ暴動を展開したハンガリーでは、ソビエト軍の進撃によってナジは逮捕され、親ソ政権が樹立された。一方、国連安全保障理事会では、イスラエル軍のエジプト侵入を収拾すべく、アメリカ代表は即時停戦を呼びかけた。しかし英仏両国は拒否権を発動、ついに米ソの反対を押し切って部隊をスエズに派遣、中近東は風雲急を告げている。こうして雪解けも束の間、世界は再び戦争の危機にさらされようとしている。

大相撲秋場所を控えて、出羽ノ海部屋では朝早くから血の出るような稽古が行なわれている。前頭の栃光や横綱の栃錦も流れるような汗。こうして迎えた１９５６年９月１６日の初日、土俵上は東大関の若ノ花と前頭の鳴門海の一番である。（週間話題）

日ソ国交回復批准の臨時国会は、スト規制法をめぐって冒頭から与野党の正面衝突となった。空回り４日間、益谷秀次衆議院議長の斡旋で、１９５６年１１月１６日にやっと本会議が開かれることになった。鳩山一郎首相の所信表明に対し、野党は一斉に引退問題に矛先を向け、与党のお家騒動を激しく攻撃、スト規制法に対する厳しい世論もからんで、鳩山内閣の金看板「日ソ復交」も土壇場まで難航しそうな形勢である。

１年半にわたった日ソ交渉も、１９５６年１０月１８日、河野一郎とフルシチョフ会談でついに妥結。モスクワ電によって政界は急に慌ただしさを加えて来た。政府は臨時閣議を開いて日ソ共同宣言を承認。１９日午後５時５０分（モスクワ時間）、日本時間１９日午後１１時５０分、クレムリン宮殿で調印式が行われた。チフヴィンスキー・ソ連漁業代表も上機嫌で記者会見。この日品川に着いた引き揚げ者の顔もほころんでいる。島へ帰る日を待つ歯舞村の人々の明るい表情。とにかく１１年ぶりに日ソ国交回復の第一歩が訪れたのである。

１０月１日は都民の日。１９５６年は太田道灌の江戸築城５００年を記念して、大東京祭が開かれた。世界２２ヵ国の市長も出席して盛大な式典が行われた。皇居に今も残る江戸城の面影、明治から大正、昭和と移りゆく東京の姿、現代の複雑な表情。大東京の歴史は、そのまま日本の歩いた姿を見せているようである。

第２８回選抜高校野球優勝戦は、１９５６年４月９日、甲子園で中京商と岐阜商の間で行なわれ、中京は４対０で岐阜を破り、１８年ぶりに再び優勝を飾った。（週間話題）