春の吉野山を訪ね、桜と歴史にまつわる吉野の魅力を探る。桜の名所として知られる吉野山の歴史は古く、源義経と静御前の悲恋などでも有名。今回は能や音楽にも造詣が深い林望さんが歩く。

これまで紹介した九谷焼、加賀獅子頭、金沢表具、金箔、田鶴浜建具を振り返るとともに、珠洲の切り出し七輪を紹介し、さらに伝統工芸のこれからについて考える。◆珠洲の切出し七輪は、下の風口から空気が入るとすぐ真火になり、火力が強い。しかし、自然の珪藻土を切り出し刳り抜いて造るので、量産ができない。◆石川県伝統産業工業館は３６業種の製品、制作行程、道具など４００点を展示し、県が誇る職人の技を一堂に見ることができる。問題は後継者不足と新商品の開発である。

埼玉県の加須市（かぞし）は利根川沿いの水郷で、日本有数の米どころ。また、国内生産量５０％以上という日本一の鯉のぼりの産地である。錦鯉、金魚の養殖、特産の藍染め織りでも知られる。◆毎年、５月の連休には、ジャンボ鯉のぼりがあげられる。今年も市民参加で、全長１１１メートル、重さ７３０キロの鯉がつくられた。当日、河川敷には大勢の人が集まり、クレーンで吊られた鯉が徐々にあがっていく。巨大な鯉は、風をいっぱいにはらんで、初夏の空にひるがえった。◆ジャンボ鯉のぼり、武州鯉

北海道の背骨と言われる日高山脈。急峻な山々にはナキウサギやヒグマが息づき、登山道の整備も一部だけとあって日本に残された最後の山岳秘境と言われている。アイヌがカムイ（神）の山とあがめる日高山脈を、作家・立松和平が旅する。◆アイヌの伝説を紐解きながら、現代社会でも通用するアイヌの自然観、文化にも触れ、遭難や山岳画家の足跡なども織り込みながら、氷河が作った山岳の美や動植物などの素顔を映像美で綴る。幌尻岳、カムイエクウチカウシ山では川や沢を登り、ヤブをこぎ、岩をよじ登る。また厳冬期の楽古岳では初めての冬山登山に挑む。立松氏にとっては難行続きの紀行となったが、「日高の山々はこのままでいい。２０世紀も、２１世紀も」と手付かずの自然を残したいというメッセージを伝える。

ＪＮＮ九州沖縄７局の合同企画シリーズ。九州沖縄地方の豊かな自然や古来からの歴史、多彩な文化など、かけがえのない郷土の遺産を後世に伝える。１９９７年から２００２年まで全３５本を放送。◆明治１８年、日向の国、耳川のほとりで生まれた若山牧水は、故郷をこよなく愛した歌人だった。「幾山河越えさり行かば寂しさの終てなん国ぞ今日も旅ゆく」。牧水の豊かな感性は故郷で過ごした少年時代に培われたといわれている。牧水が愛した耳川は、九州山地の原生林を源に深い谷を刻みながらいっきに日向灘に注いでいる。豊穣な平野を持たない耳川沿いの人々を支えてきたのは山と川の恵みだった。人々はその恵みを河口の港町・美々津から千石船で上方に送り、衣類と肥料そして華やいだ上方の香りを持ち帰った。高瀬舟が行き交った耳川は、昭和の初めまで日向の国最大の街道だった。そして時は過ぎ、耳川街道が無くなった今でも、その豊かな自然の恩恵を受けながら暮らす人々がいる。山の神への祈りを捧げる猟師や伝統の漁法で鮎をとる川漁師たち。四季折々に豊かな表情を見せる耳川を紹介する。

視聴者に公募した「心に残る風景」や「伝統の味や技」などを毎回取り上げ、２１世紀に残しておきたい「みやぎのとっておき」を紹介する。◆今回は遠田郡田尻町にある加護坊山の眺望を紹介する。

ＪＮＮ九州沖縄７局の合同企画シリーズ。九州沖縄地方の豊かな自然や古来からの歴史、多彩な文化など、かけがえのない郷土の遺産を後世に伝える。１９９７年から２００２年まで全３５本を放送。◆長崎でひときわ異彩を放っている唐寺（とうでら）。長崎開港から半世紀を経た１６２３年に南京出身者が興福寺を創建し、順次、出身地別に福済寺、崇福寺…と建てられていった。彼らは最初に航海安全の神・媽祖を祀った。媽祖は福建省に起源をおく道教神で、媽祖像を貿易船に携えていた。やがて臨済宗（禅宗）の唐僧の渡来によって、禅寺としての機能も備えた特異な寺として発展。建立時には中国から工匠を招き、素材を運び、微細な細工物は中国で作って持ってきた。特に極彩色の弁柄（べんがら）、色漆喰で装った建築様式は、日本には他に存在せず、世界的にも希少な存在となっている。唐寺で営まれる中国盆を始めとする諸行事は、華僑をはじめ長崎の人々の交流そのものであり、３８０年の時空を越えて絶えることがない。唐寺と華僑の人々を、歴史的な挿話を織り込んで描いていく。

赤ワインの名産地、サン・テミリオンのブドウ畑を訪ねる。◆ボルドーから東へ３５キロ、サン・テミリオンにはその名を冠したワインを生産する村が８つある。紀元前３世紀、古代ローマ時代に既にこの地でワインが作られていた。◆地名は、８世紀に聖人エミリオンが隠棲のため、洞窟を掘ったことに由来するが、元々この地には石灰岩の石切場が多く、その跡の洞窟が絶好のワインの貯蔵庫となり、温暖な気候、石灰質の土壌とあいまって、ヨーロッパを代表するワインの産地となったのである。◆サン・テミリオン地区