飛騨の春を呼ぶ『高山祭』。この年、上二之町の石橋会のカラクリ人形が百年ぶりに上演され、大きな話題を呼んだ。美女が獅子に変じ再び美女に戻るという、山車の上の匠の超美技である。高山には享保の大火以来２５０年間、町を挙げての火伏せ信仰がある。３０を超える秋葉山の社があり、常夜灯には当番制で年中火を絶やさない。◆華やかな高山祭。高山は町そのものが文化財であり、毎夜の夜警が町を守り続ける。◆【重要無形民俗文化財】高山祭の屋台行事〔岐阜県〕

テーブルの上という限られた空間で繰り広げられる指先のマジックの数々を、日米のマジシャンが競い合う。

いわゆる“ジャパゆきさん”が生まれる構造的な背景を、ひとりのフィリピン女性の身の上話として描く。昭和５８年夏、岐阜県の下呂温泉にフィリピンからやってきた二人の女性がいた。そのうちの一人ロリータは、父親が借金で失った農場を取り戻し、貧しさゆえによそに預けている自分の子供を引き取ることを目的に、遠く日本まで出稼ぎに来た、いわゆる“ジャパゆきさん”である。ロリータは貧しさに流されがちになってしまう女の哀しさに耐え、誇りを持ち続けていた。

“山原（やんばる）シャンソン”の歌い手・石坂真砂さんが、学童疎開船「対馬丸」の沈没で失われた友の遺族を訪ね、思い出を語る。◆１９４４年８月、沖縄からの学童疎開船「対馬丸」は、鹿児島県悪石島沖で米潜水艦の魚雷攻撃により沈没、８００余りの幼い命が失われた。そして４０年後、海に沈んだ友を想う石坂真砂さんのＬＰが完成した。石坂さんは沖縄本島北部の出身で、彼女の唄うシャンソンはその地名をとって山原シャンソンと呼ばれ親しまれている。

滋賀県神崎郡五箇荘町。かつての中山道に寄り添うように古い蔵屋敷が続く。ここは近江商人の里。商人といっても身分は農民だった。農民が大名に金を貸す。わずかな行商から巨額の財を得た秘密は、つましい暮らしであった。船板を利用した壁、行商では傘を使わず蓑で通した。明治を動かした豪商の多くは近江出身者だった。集落で３００年の歴史を持つ８代目の「でこ人形師」が、時を超えた造形の美を今に伝える。◆五箇荘町〔滋賀〕

親を失って施設に保護された赤ん坊オランウータンの木登りや巣づくりの試練を克明に追いながら、彼らの帰るべき森林の現状をさぐる。今１歳半のオランウータン・シャンティは、５歳のラジャをまだ母親だと思い込んでいる。食事も、遊びも、夜寝ている時も、２頭はいつでも一緒にいる。２頭ともまだ子ども、子どもが子どもをお守りしているのである。こうした例はボルネオにあるセピロック・リハビリテーションセンターではごく普通だ。

写真家・土門拳氏の著書「死ぬことと生きること」をもとに、被取材者たちの証言や足跡を訪ねながら彼の原点を探っていくドキュメンタリー。◆土門氏は山形県酒田市出身、“写真の鬼”と形容されている。主な作品は「室生寺」「古寺巡礼」、そして「ヒロシマ」「筑豊のこどもたち」に代表される報道写真家である。“仏像とリアリズム”土門氏はなぜ対象的とも思える２つのテーマを追い、そして鬼といわれるのか。

中学校の職員室を舞台にした、先生たちのディスカッションドラマ。ドラマの形式をとりつつ、今日的な教育問題へ切り込む。作：山田太一。◆九州のある公立中学校。放課後に、不良グループが大挙して職員室を襲うかもしれないという事態が発生する。集められた教師たちが、生徒たちへの対応をめぐって激論を交わすうち、各人の意見・立場、個人的な事情までもが明らかになっていく。