トスカーナの緑の丘に浮かぶシルエット。「中世の摩天楼都市」と呼ばれ、中世そのままの独特の姿を残す、塔の街「サン・ジミニャーノ」は、１９９０年世界遺産に登録された。◆フランスとローマを結ぶ街道沿いのこの街では、交易で富を得た貴族達が、競ってその権勢を示す塔を築いた。狭い丘の上に、かつては７０もの塔が林立したという。街の中心にある聖堂の内部は、当時フィレンツェやシエナで活躍した画家たちによるフレスコ画で埋め尽くされ、まさに中世イタリア絵画の宝庫となっている。◆一方、法王ピウス２世がその理想のままにルネッサンスの都市理論とデザインにより初めて築かせた計画都市「ピエンツァ」は、１９９６年に世界遺産に登録された。緑の丘が連なるトスカーナ地方には、多くの個性的な街が時を超えて残り、美しい風景との調和を見せている。◆ベッチ家の塔、参事会聖堂、サンタ・フィーナ礼拝堂、カーゾレ・デルサ、モンテリッジョーニ、ピッコロミニ宮殿

氷河が作り上げた雄大な山岳地帯、カナディアンロッキーマウンテンにある４つの国立公園は、１９８４年に世界遺産に登録された。太古と変わらない手つかずの自然を残す国立公園の魅力を２回にわたって送る。◆第１回は、４つの国立公園に残る雄大な自然と、この地域が国立公園となるまでの軌跡を紹介する。季節や天候によってその色を変え、自然のものとは思えない奇跡的なコバルトブルーのレイクルイーズや、厚さ３００メートルを超え、ロッキー山脈最大の氷原であるコロンビア大氷原など、太古の自然の姿を今に残すこの地域は、大陸横断鉄道の開通により観光地化が一気に加速する。一方、過度な観光地化による争いを危惧した政府は、カナディアンロッキーマウンテンを保護区とした。◆ジャスパー国立公園、バンフ国立公園、ヨーホー国立公園、クートネイ国立公園

全国的にも珍しくなった「尺鮎」に魅せられ、球磨川に集うひとたちの生活や生き方をまじえながら、ダム建設で危機に陥る球磨川の現状と魅力を伝える。◆日本の三大急流のひとつ球磨川は、全国の太公望たちに人気を誇る鮎釣りの本場。釣り人たちをひきつけるのは、球磨川の清流と急流がはぐくむ、体長３０センチあまりの巨大な「尺鮎」だ。夏シーズンの釣りであることから「１００日戦争」と言われるこの鮎釣り。釣り師たちと鮎の闘いの火蓋は、解禁日夜明けとともに、きって落とされる。◆この球磨川で、８月下旬、全国の釣り名人およそ１２０人が集い、釣果を競う「全日本激流鮎バトル大会」が開かれた。多くの人に球磨川の魅力を知ってもらい、球磨川の支流、川辺川に建設が予定されている川辺川ダムにストップをかけたいと、地元の鮎釣り名人が大会を誘致したもの。子供のころから慣れ親しんだ球磨川を守りたいと、鮎宿に集うメンバーたちの支援をうけながら、大会を成功させるべく奔走する。

絶滅の危機に瀕するカブトガニを通して、環境問題を考えるドキュメンタリー。１９９３年放送『絶滅！瀬戸内カブトガニに何が起こったか』の続編。◆１０年前、瀬戸内海のカブトガニは海の汚染によって卵さえ作れなくなっていたが、今回、山口県のカブトガニの生息が確認され、さらにこれまで生息地と考えられていなかった岡山県日生町でも捕獲された。生息地の水質・泥質の分析により、汚染が回復傾向にあることが確認された。さらに、カブトガニが海の汚染物質を食べて体内で浄化する機能を持っていることもわかった。一方で、カブトガニに必要な干潟や砂浜は失われ続けている。

俳句に魅せられて日本で暮らす一人の外国人の目を通して、日本の情緒と俳句の魅力に迫る。◆フランス人のマブソンさんは、青眼（せいがん）という俳号を持つ。南仏に生まれ、高校生の時に留学生として宇都宮で１年間学んだ。それ以来日本に興味を持ち、日本語で俳句を詠みたいという一心で再来日した。オリンピックを控えた長野県の国際課で働きながら、俳句を詠み、小林一茶を研究している。その作風は静謐で、日本人が忘れつつある自然観・心情にあふれている。

全国的に知られた観光スポットだけでなく、日常生活の中にある信州の風土や文化を紹介する。◆今回は、奈川村の奈川渡ダムの風景を紹介する。

鎌倉の魅力を地元局の視点で紹介する。◆行基開山と伝えられる鎌倉最古の寺・杉本寺と、炭焼きコーヒーの店を紹介する。

記者たちの述懐を通して、ハンセン病問題へのマスコミの責任を問うドキュメンタリー。◆２００１年、国家賠償訴訟の勝訴と国の控訴断念で大きな転換点を迎えたハンセン病問題。マスコミは政府や国会の怠慢を指摘したが、報道をしてこなかったマスコミも、責任の当事者なのだ。毎日新聞神戸支局の内藤さんは、業務の傍ら、過去の報道を検証している。朝日新聞記者・三宅さんは２５年前にハンセン病問題の記事を１２５回連載し、取材を通して自身の中にある差別意識と向き合うことになる。記者たちの声から、マスコミの抱える問題が見えてくる。◆アートネイチャースペシャル