大和盆地の西南、二上山の山ろくにある当麻寺を紹介する。古代の仏教は国家やそれを取り巻く貴族・豪族の仏教であり、奈良の多くの寺はこのような権力によって守られ維持されてきた。平安時代に庇護者を失った当麻寺も、鎌倉・室町時代には、浄土信仰の霊場として門前町は大いににぎわったという。曼茶羅図や数々の仏像を紹介する中で、当時のにぎわいを振りかえる。

信念を貫く人々の姿や、人間の可能性と限界を探る異色のドキュメントシリーズ。（１９７２年１０月７日～１９７５年３月２９日放送）◆岩手県水沢市山内。ここに千年も前から伝わる祭りが「天台宗黒石寺の蘇民祭」である。この祭りは、旧正月７日の夜から、８日にかけて行われる。男たちは、上半身裸になり行列の先頭にたって村中を練り歩く。行列が境内に達すると、裸の男を中心にもみ合いとなり、やがて護符が入った麻袋、蘇民袋が持ち込まれると一気に祭りは盛り上がる。夜中から明け方にかけて展開される壮絶な裸祭りを紹介する。

語り手自らが名作文学ゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人々に直接ふれることで、その作品世界を再認識してもらおうという文学紀行番組。第１集～４集まで制作・放送された。（第２集／１９７４年７月８日～１２月３０日放送、全２６回）◆この回は、中勘助の自伝的小説「銀の匙」（１９１３年）を取り上げる。女優の岸田今日子が、勘助が幼少期を過ごした東京・小石川の小日向を訪ねる。そして勘助と交友があった人の話や、「銀の匙」の主人公と同年代の子どもの姿を取材する。

三十三間堂の一千一体の観音像を中心に仏像を紹介、その思想・信仰を探っていく。一千一体とは、千プラス一ではなく千即一、一即千という東洋哲理である。この数の論理は現世の欲望を一切捨てた無の境地から、物事の奥にひそむ真実に迫ろうとする心といえる。番組では観音像の解体修理を取材、体内の経文や御仏が納められている様子も紹介する。

アラビア半島を縦断して８５日間４５００キロ、サウジアラビア、エジプト、シリア、レバノンの４カ国を取材した２時間のリポート番組。◆大義に燃える教徒たちの礼拝を中心にした暮らしぶりから、メディナ・メッカの巡礼者、イスラム対アラブに加えてアラブ内部の抗争に苦しむ難民キャンプの実情などを紹介し、アラブの過去と未来像を見る。

科学技術は、人類がかつて経験しなかった物質的な豊かさをもたらした。その一方で、環境破壊や公害を引き起こし、人間の精神的な荒廃を招いた。科学技術の発達は、未来に何をもたらすのかを予測するドキュメンタリー・シリーズ。（第１集／１９７３年１０月７日～１９７４年３月３１日放送、全２６回）◆今回のテーマは「コンピューターと教育」。米国ではコンピューターによる学習システムが開発され、すでに実用されている。日本でも様々な教育用機器が導入され、一斉指導から個別指導へと授業の形が変わろうとしている。機器を使っての学習に子どもたちは賛否両論だが、効果は間違いなく上がっているという。研究者は「教師がコンピューターに取って代わることはない」と言い切り、人間が組むカリキュラムの重要さを述べた。一方で、記憶力を強化するなど学習力向上のための薬品が研究されていることにも触れる。

長野県木曽郡王滝村滝越は御岳山麓の戸数わずか２５の山村。滝越から村の中心部まで１２．３キロの距離を結ぶのは、営林署の森林鉄道である。ここをスクールカー「やまばと号」も走る。ところが、営林署の合理化で、森林鉄道が廃止されることになった。ふるさとを守ろうと反対運動に立ち上がったスクールカーの運転手の家族を中心とした、社会環境の変化に揺れ動く山村の人たちの姿を描く。

人に知られることもなく見捨てられた遺跡、誰がどのような情念を込めてこのような文化を残していったのかを探る。◆南アメリカ・インカ帝国が誇ったマヤの文明は高度な文化性を持ちながらなぜか歴史に取り残されて、謎に包まれたままである。それはスペイン人によるせい惨な征服の歴史が影を落としているからかもしれない。失われた歴史の数限りない質問に、これらの遺跡は沈黙したままである。◆トゥルム遺跡〔メキシコ〕、サン・アグスティンの石彫遺跡〔コロンビア〕、ナスカの地上絵遺跡〔ペルー〕、ジンバブウェの石造建築遺跡〔ジバブウェ〕、ボロブドールの仏教遺跡〔インドネシア〕