１９４５年（昭２０）、鹿屋航空基地から多くの若者たちが特攻機で飛び立ち南の海に消えた。その中に出征前、東京・日比谷公会堂で日本交響楽団の演奏会を聴いていた予備学生がいた。彼にとっては出征前に聴いた演奏会が“最後の演奏会”となった。当時「これが自分にとって最後の演奏会になる」という思いで日比谷公会堂に通った学生は少なくない。そんな演奏会を支えた楽員たちにも、召集の手は容赦なく伸びていった。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日～１１日、全５回）◆第３回は「もう一人の私」。住みこみの家政婦は、夫が女と出て行き、子供は姉に預けていると云っていたが、ある日出ていったきり戻らなくなる。夫とよりを戻したのかと思っていたが、近所の人の話ではむしろ彼女のほうが男好きなのだという。そういえば、夜中に手洗いに行ったとき、浴室から出て来た彼女が意味ありげに歩いていった事があった。あれは私を誘っていたのか、それともそんなことには縁のない男と思ったのか、と私は考えるのだった。

一年間、テレビを中心に活躍した演芸界の芸能人を各部門から選び、新人賞、名人賞などを贈って精進をたたえる。◆新人賞はコント山口君と竹田君、マジック・ナポレオンズ、最優秀新人賞はたけし軍団。最優秀番組賞はビートたけし、功労賞は三遊亭円楽、大衆賞は明石家さんま。名人賞は片岡鶴太郎、サブロー・シロー、桂文珍。最優秀名人賞はオール阪神・巨人に授与され、第５回の花王名人大賞はビートたけしとなった。

明治３年、東京湾品川沖のお台場にフランス人技師によって洋式の品川燈台が建てられた。観音崎や野島崎についで最も古く、関東大震災後は唯一最古のものとして昭和３２年まで使用された。また明治６年には、伊勢湾の三重県菅島にイギリス人技師によって菅島燈台が建てられ、近くに外国人技師のための付属官舎が建てられた。燈台と共に竣工したもので、官舎の赤煉瓦は志摩・渡鹿野の瓦屋、竹内仙太郎の苦心の焼成である。明治初期の煉瓦としても貴重である。◆品川燈台菅島燈台付属官舎

明治４２年５月、伊勢神宮外宮前に、神宮と向かい合う形で宇治山田郵便局が登場した。この木造平屋のモダンな洋風建築は、全体を円形に統合して事務能率の向上を図った構造になっている。中央ドーム屋根の内部は公衆溜として親しまれた。建物が完成する以前からの貴重な業務日誌が残っており、文字裏から当時の世相が偲ばれる。伊勢神宮のそばで活躍した郵便局のモダンな美しさに、伝統ある伊勢の町並みを重ね合わせながら、明治の郵便配達夫の面影にも迫る。◆宇治山田郵便局

黄河源流・青蔵高原に初めて踏み入った外国探検隊の記録。◆黄河は、長江に次ぐ中国第２の大河である。その領域は世界４大文明を発祥地として、古代中国文明を生んだ。日本と中国は「黄河源流探検隊」を編成、黄河の源流を極めることになった。日本側隊員は８０００メートル級のヒマラヤの経験豊かな、八木原邦明隊長以下１６名。中国側からは２１名、合計３８名の探検隊員は、西寧をあとに一路、黄河源流へと向かった。黄河水域、マチュの調査を終わった隊員達は、さらに第２の源流、黄河の水源と考えられているカルチェに向かった。７月１５日、一行は、２つの黄河源流を極め、西寧に帰りついた。探検隊は謎の水流を探り、珍しい動植物を観察し、ドキュメントした。のどかで厳しい、チベット族遊牧民の生活を垣間見る事もできた。

ポーランドの大学生が見た長崎とアウシュビッツの話を重ねあわせて、戦争体験をつづっていくドキュメンタリー。ワルシャワ大学日本語科のヨアンナさんが長崎にやって来た。彼女はアウシュビッツで同僚の身代りになって処刑された神父の話を知り、彼が戦前布教していた長崎に来たのだ。彼女は被爆体験者にも会い、話を聞かせてもらったのだが、その中に「かよこ桜」の林津恵さんがいた。

岡崎勝美君は、師匠の慶田昌子さんの強い勧めで筝曲家への第一歩として筑波大学付属盲学校音楽科を受験することにした。師弟の絆をテーマに彼の巣立ちまでを追い、真の人間教育を描く。◆幼い頃から音に対して好奇心旺盛だった岡崎君は自然に音楽に親しむようになり、小学校２年生のとき十三弦と慶田昌子さんに出会う。彼は十三弦を通して、音楽の中に人生を発見することを教えられた。