何と、１，２００年前に日本の工人の手になる釉薬の焼き物・正倉院三彩が正倉院に眠っていた。古来、大陸から渡ってきたと信じられていた白と青と褐色の唐三彩と同じものが日本でも作られていた。これは奇跡的な歴史を証明する人類の遺産ともいえる。現代の名窯・幸兵衛窯の六代目加藤卓男さんに、正倉院三彩『三彩鼓胴』の復元委嘱があった。７年の歳月を費やし９６個目にして初めて、古代の焼き物がよみがえった。その復元までの苦闘を追う。

加賀百万石の文化振興で生まれた「古九谷」。佐賀の有田・伊万里の亜流といわれながら、北陸の風土を生かし独自の制作技法“青手”を創造し陶芸史上に光彩を放ったが、わずか６０年で姿を消す。１００年後に再興した再生九谷と区別して呼称される。大胆なデザインと独創的な色付け技法の青手によって、重厚にして迫力ある名品を世に送り、こつ然と消えた。当時の生産体制変化の波にのまれた結果だった。◆【重要文化財】江沼神社長流亭◆【その他】古九谷大皿〔石川県立美術館〕、染付大皿〔石川県立埋蔵文化センター〕、孔雀文鉢〔本善寺〕、鳳凰文鉢〔山中町資料館〕

足利尊氏の生涯を描くＮＨＫ大河ドラマ第２９作「太平記」の総集編。全４回。原作：吉川英治。◆第２回「倒幕」。正中の変の失敗、元弘の変の勃発、帝の隠岐配流と状況は目まぐるしく展開する。元弘の変鎮定のため、鎌倉幕府の将軍として西国に派遣された尊氏（真田広之）は、途中で幕府に反旗をひるがえし京を落とす。一方、新田義貞は鎌倉を攻め、北条高時、執権・赤橋守時らは自刃、鎌倉幕府は炎の中に滅亡する。

一介の薬行商人だったメディチ家に風雲児が現れる。商業技術の才に長けた開祖ジョバンニ（１３６０～１４２９）の登場により、巨大な富を築き経済を支配する。初代の死後、二代コジモの公共投資による散財、三代ロレンツォの人文主義など経営体質は悪化する。世界初の共和制都市国家・フィレンツェの栄光保持派とメディチ家との確執。その間、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』など美の世界は休みなく高揚する。◆サン・マルコ修道院、捨子養育院、メディチ家カレッジ別邸（プラトン・アカデミー）、受胎告知（フラ・アンジェリコ作）、ヴィーナスの誕生（ボッティチェリ作）

茨城県、神峰神社の祭礼に奉納される日立風流物は、高さおよそ１５メートル、重さ６トンもの山車の上で人形芝居を行うというもの。山車の組立から、山車の中での奮闘ぶりまで、奉納の様子を紹介する。◆山車は全体として大小の山を背にした城のかたちで、山は藤づるを使って形をつける。内部には鳴り物係、作者と呼ばれる人形使いなど、およそ７０人が乗り込んで、拍子木と呼ばれる指揮者の合図ですべてを進行させる。◆前山といわれる城の側での芝居が終わると、山車の前後を入れ替えて後山での芝居を始める。その早変わりも見もの。

奈良時代に日本に伝来した仏教文化。中でも諸経の王とされる法華経。その広大無辺な宇宙の力、あふれる生命力を説く経典の神髄は何かに迫っていく。妙法蓮華経と唱えることにより仏の縁と結ばれ、生きる力を授かる。◆白蓮華のように清く正しい法の功徳を感じ生きる道標とした聖徳太子や、日蓮聖人、詩人宮沢賢治らの国家観や宇宙観を紹介し、法華信仰が日本人の精神風土にどのようにかかわっているかを探る。◆【国宝】千手観音坐像〔三十三間堂〕、仏功徳蒔絵経箱〔藤田美術館〕、一字一仏法華経序品〔善通寺〕、一字蓮台法華経〔竜興寺〕◆【重要文化財】法華経宝塔曼陀羅図〔立本寺〕、一字宝塔法華経〔本満寺〕

奈良時代は天平文化の華やかさと暗い権力争いが同居する時代だった。この時代の光と影をじっとみつめた光明皇后。藤原氏の出身で聖武天皇の后となり、飢きんと病苦にあえぐ人々、特に女人の救済を願い法華寺を創建した。以来千二百年の歴史を刻み、全国の総国分尼寺として今もなお法灯を守り続けている。門跡寺院の厳しい戒律の中で修業に励む尼僧の姿から、光明皇后の遺徳をしのぶ。◆【国宝】十一面観音立像〔法華寺〕◆【重要文化財】法華寺本堂、維摩居士像、仏頭、伝梵天、伝帝釈天

紀州最古の名刹・道成寺。『道成寺縁起絵巻』を軸にして、千年前から伝えられてきた安珍・清姫の物語を中心に、女と男の情念の深奥に迫っていく。◆中世全国各地に広まった道成寺縁起が芸能の分野でも盛んに取り上げられた。能や歌舞伎の「京鹿子娘道成寺」など人気の演目から、人間男女の情念のはかなさを活写していく。◆【重要文化財】道成寺縁起絵巻〔道成寺〕、千手観音立像、四天王像、日光菩薩、月光菩薩立像◆【その他】華厳縁起絵巻〔高山寺〕、梵鐘〔妙満寺〕