吉川英治の原作を、川本喜八郎の人形で描く歴史劇「平家物語」の第３部。◆第３部「乱」編では“悲劇の武将”木曽義仲を中心に、義仲をめぐる女たちや源義経との最後の戦いなど悲運の生涯を描く。

秋の風情を織りなす舞踊二曲を取り上げる。江戸時代には、町人の娘が行儀見習いのために、武家屋敷に奉公に上がることがよくあった。そして年に一、二度、お暇を貰って生家に帰る宿下がりが、何よりの楽しみだった。常磐津「屋敷娘」は、宿下がりの娘の初々しい有様を描く。一方、清元「雁金」は、成熟した女性が恋人によせる想いを、雁が行く秋の夜の情景に托し、しっとりと舞う。また、歌舞伎の舞台に登場する文金高島田や丸髷など女性の髪型の変遷について、鴨治歳一さんに聞く。◆舞踊　常磐津「屋敷娘」、舞踊　清元「雁金」、鴨治歳一【選定保存技術（歌舞伎床山）保持者】

昭和２年の初舞台以来、女優生活６７年目を迎えた杉村春子。昭和１２年に文学座の結成メンバーとして舞台に立って以来、常に日本の新劇界の第一線を歩きつづけてきた彼女の意欲的な舞台人生を、インタビューと舞台中継で紹介する。（１９９４年４月１７日～４月２２日放送、全６回）◆第１回で紹介する舞台は、一見幸福そうな家庭の崩壊を描く「夜のキャンヴァス」（１９９２年三越劇場）と、昭和はじめの東京深川を舞台に、薄幸なもと芸子の生涯を描く「ふりだした雪」（１９８７年三越劇場）の２本。

管理教育の権化であるかのような頑固者の高校教師とその生徒がふとしたはずみで旅をするうちに、中年教師の隠された人生を知り、世代を超えた人間的な触れあいをはじめていく様を描く。◆県立高校の教師・井口は校則を守ることに厳しく生徒たちに嫌われ、家庭でも頑固者だと子供たちから疎んじられている。連休に家族には東京へ行くといって、彼は北陸へ向かうが列車の中で教え子の邦枝とばったり。邦枝は他校の男子生徒・柴田と二人連れ。井口は気になるが、ふだんとはうって変わって見て見ぬふりをしようとする。井口には二人に知られたくない旅の目的があった。こうして教師の関係を離れた奇妙な旅が始まる。

歌舞伎では、鏡獅子、連獅子、越後獅子など、獅子物舞踊が華やかな舞台で人気を集めている。「英執着獅子」は能の「石橋」からとった古い舞踊で、蝶と戯れる獅子頭を自在に操り、恋に悩む女心を表現している。遊女・傾城、のちに獅子の精を演じる高濱流光妙さんが、禿、変じて胡蝶となる二人の踊り手と華麗な舞台を広げる。ゲストの朝倉摂さんは、三味線の稽古を趣味としている。歌舞伎座など邦楽の舞台のデザインも数多く手がけており、写真を見ながら、その苦心談を聞く。◆舞踊　長唄「英執着獅子」

福岡市博多にある聖福禅寺。栄西禅師が開いた日本最初の禅寺であるが、江戸時代後期には荒れていた。由緒あるこの寺を再興したのが、４０歳の若さで１２３世住職に招かれた仙?腰a尚である。仙?高ﾍ美濃の貧しい農家に生まれ、厳しい禅宗の修業を重ねていくつかの寺を遍歴したのち聖福禅寺の法燈を嗣ぎ、８８歳で生涯を閉じるまでを博多で過ごした。飾らない人柄で親しまれ、省略された筆使いのユーモラスな絵には禅の悟りがひそみ、人々の心に根づいた。今その禅画は日本のみならずヨーロッパでも高く評価されている。◆聖福禅寺（福岡県）、清泰寺（岐阜県）◆仙?拷諱E「指月布袋」、「三福神」、「虎」、「座禅蛙」、「大相撲」、「自画像」

日本古来の楽器を取り上げるシリーズ。◆日本人の音楽や宗教との深い結びつきから生まれた太鼓を、伝統的な祭り太鼓や民謡、芝居との関わり合いを含め、詳しく紹介する。秩父の夜祭の屋台囃子、鋳物造りの川口市の初午太鼓など地域に根付いた太鼓が各地にあり、芝居の効果音を創る蔭囃子の”黒御簾音楽”にも長い伝統がある。宮内庁楽部の舞楽の演奏と”火焔太鼓”のデザインの様式美、民謡「十三の砂山」の流し踊り、岩手の「鹿踊り」などに加え、林英哲の現代創作和太鼓を聞く。

仲間と郭に行き、酔って寝込んだ円山応挙。夜中に手水に行くと、奥の部屋から苦しそうな女の声がする。尋ねると、花魁だったが病に倒れ、身寄りもないという。唯一の身の証だと言って唐錦の布切れを見せた。同情した応挙は金を渡し、病を治すように言い、女の姿を描き写して別れた。ある夜、この女が立派な花魁姿で夢の中に現われた。気になった応挙が郭を訪ねると、病気の女は昨夜亡くなったという。