石上神宮から三輪山麓に至る山の辺の道は、四季を通じて花があふれる道である。柿本人麻呂の妻の話なども交えて、山の辺の道を紹介する。万葉集に造詣が深い山崎しげ子さんが、秋の花に寄せる万葉の思いをしのぶ。

北陸道を歩き、越中ゆかりの文人武人の紀行文や詩歌を紹介する。◆北陸道は川また川の道である。古くは大伴家持が国内巡視の旅先で歌を作り、倶利伽羅峠は『平家物語』や『源平盛衰記』の舞台となった。また宗祇も訪れて連歌の会を開き、芭蕉は『奥の細道』で「早稲の香や分け入る右は有磯海」と詠んだ。芭蕉に師事した井波の浪花が建てた翁塚は、日本で最初の芭蕉塚である。俳人の大淀三千風は黒部渓谷の刎橋の景観に感嘆し、漢学者の沢田宗堅は魚津の蜃気楼を詩に詠んだ◆桔梗屋跡、境関所跡、『刎橋の図』、恒生皇子の墓、放生津城跡、前田利長廟、黒髪庵と翁塚、人麿神社跡

江戸時代の町並みを残す奈良・五條市を散策し、歴史の中に生きる現代の人々の生活ぶりを紹介する。◆和歌山との県境に近い五條市は大和五條とも呼ばれ、かつて紀州街道の宿場町として栄えたところ。徳川時代初期に二見城が築かれて以来、商業の町になったという。油屋・酒屋・質屋などが並び、大和と紀州を結ぶ一大拠点であった。新町通りには今でも本瓦ぶき・しっくい塗り・大壁造りの町屋が１１０棟も並び、江戸時代そのままの風情がある。◆現在は、建築年代が明らかな民家としては日本最古の栗山家や、五條特産の富有柿からワインを造っている造り酒屋が有名である。

あの巨大な大仏殿と大仏を造立するには、高度な技術力と膨大な経済力が必要だった。◆歴史の表に現われた人物の外に、多くの下支えの存在が不可欠だった。『四聖御影』に表記されない第五の人物・実忠の陰の功績を、その歴史事実を丹念に洗い、文書と現場を照合しつつ明らかにしていく。ペルシャ人ともインド人ともいわれ実忠の出自は定かでないが、大仏出現達成への国際協力について検証する。◆【国宝】東大寺法華堂（三月堂）、盧舎那仏坐像〔東大寺〕、良弁僧正坐像、誕生釈迦仏立像、金銅八角燈籠◆【重要文化財】四聖御影

「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出し月かも」。安倍仲麻呂が故郷をしのんで詠んだ歌で知られる三笠山の月を、箏曲（箏による音楽。箏を伴奏とする声楽曲が基本だが、箏のみの曲もある）の調べに乗せて情緒たっぷりに紹介する。◆安倍仲麻呂は奈良時代の文人で、遣唐使として中国の長安で長く暮らしたが、望郷の念にかられて帰国しようとした。しかし嵐にあって遭難、唐へ戻ってしまい、異国で生涯を終えた。◆箏曲家で人間国宝の中田博之さんはこの故事にちなんで「故山の月」という曲を作曲した。番組では、この曲を奈良市水門町にある依水園の座敷で演奏、仲麻呂が故郷をしのんだ月を思う。

１９８７年６月１日の放送開始以来、６０００回を超えて続く長寿ミニ番組。列車での旅を通して、美しい風景とそこに住む人々の生活を描く。◆今回は、「グレンウッド温泉を出発」と題して、アメリカ合衆国・カリフォルニアゼファー号、大陸横断鉄道（デンバー・ウンターパーク・グレンウッド・スプリングス・ルビー・キャニオン）を紹介する。

ヨーロッパを席巻した偉大なカール五世の後を継いだスペイン国王フェリーペ二世は、父へのコンプレックスから抜け切れず終生謎に満ちた生涯を送る。◆彼は官能美のティツィアーノ（１４７７～１５７６）と怪奇幻想のボス（１４５０～１５１６）という、対照的な２人の画家の絵を収集した。孤独で厳粛、一方ではひそかに官能の画に浸るという国王の二面性と、２人の画家の独特な芸術世界を見る。◆ヴィーナスとオルガン奏者、アダムとイブ、カール五世騎馬像、王妃イザベル像（ティツィアーノ作）、快楽の園、七つの大罪、三賢王の礼拝（ボス作）

ネパールの首都カトマンズの町は、人の数より神の数の方が多いという。◆１０００年以上の間、ヒンズー教と仏教が同居し続けた不思議さ。二つの宗教がインドラ・ジャトラ祭を混然と祝う謎。それらを解き明かし、現代文明が失ってしまった“神とともに生きる幸せ”が今も静かに息づくヒマラヤの里を見る。