江戸時代、東海道大津宿の大津絵が、旅の土産にもてはやされた。大抵の家に大津絵があり、大津絵の貼り混ぜ屏風が流行した。歌舞伎の外題にも「藤娘」「供奴」「瓢箪鯰」など、大津絵に由来するものが多数あり、舞台を彩ってきた。芭蕉が「大津絵の筆のはじめは何仏」と詠んでおり、江戸初期に仏画から始まったようだ。大量生産、薄利多売で、身近な画題や世相の風刺画などふんだんに取り入れ、庶民の人気を集めた。優美な「大津絵藤娘」、滑稽味十分の「瓢箪鯰」の二曲をとりあげる。◆舞踊　清元「大津絵藤娘」、舞踊　長唄「瓢箪鯰」、西川扇藏【人間国宝】、堅田喜三久【人間国宝】

世界各地で今も続く内戦。その戦火の中で傷ついた子どもたちを治療して祖国へ返すという活動が、ドイツ市民の手で行われている。ボランティア組織「国際平和村」の活動を通して、ひとつの国際貢献のあり方を考える。

わずか３～４センチほどの小さな彫刻・根付。和服の時代、印篭や煙草入れなどの提げ物に付けられ、紐を通して帯にはさみ落ちないように吊るす役割を持つ附属品だった。江戸中期に根付師と呼ばれる工芸家が出現するに及び、その技を競って職人芸の極致を尽くす日本独特の細密工芸が発達していった。しかし現在、その名品の多くは海外に流出している。この極小彫刻の伝統を継いで根付を作る現代の造形作家の工房での制作風景も紹介、その価値を探る。◆根付・鐘馗と鬼（初代舟月作）、百華（懐玉斎作）、羅漢（法貫作）、石橋（寿玉・寛哉山合作）、四睡（東谷作）、柿（森田藻己作）、猿（糟谷一空作）、孔雀（糟谷一空作）

トルストイの非暴力思想に強く共感し、農業のかたわらトルストイの翻訳を続けてきた北御門二郎さん。その半生を、軍人の長兄、商人の次兄、末っ子の農民・イワンの３兄弟の物語“イワンの馬鹿”を織り込みながら描く。◆地主の家に生まれ、旧制五高へ入学とエリートコースを歩んでいた北御門さんだが、旧制五高時代に出あった「イワンの馬鹿」にショックを受けた。東京帝大に入ったものの“国の役に立つこと”を詰め込まれるのが嫌になり、ハルビンへ向かってロシア語を学んだ。帰国した彼を待っていたのは徴兵だった。“何の恨みもない人を殺しに行くのは、死ぬより嫌だ”と考えた北御門さんは、兵役を拒否する。

三笠山から高円山にかけて美しい稜線を連ねる山々は万葉集にしばしば登場する。今回はこの三笠山を起点に，北山の辺の道を訪ね歩く。

天保六歌仙で知られる御数寄屋坊主・河内山宗俊のうわさ話。◆城から帰る途中、知り合いの丑松と会う。金を無心された宗俊、袋物の大店・丸利から金をゆすりとろうと一計を案じた。

故郷に６０年ぶりに響く「余野小唄」で、今また友を思う男の心の軌跡をたどる。◆中国山脈の山ふところに抱かれた岡山県久世町余野。この小さな村で今年、６０年ぶりに「余野小唄」の盆踊りが復活した。この唄をたった一人覚えていたのが７０歳になる中野毅さん。中野さんは戦争で亡くした友のことを思うたびこの唄を口ずさんできた。友の五十回忌のこの年、この唄を再び村に復活させることを決心する。

約２２００年前、古代中国を初めて統一した秦の始皇帝。文字や度量衡、通貨などを統一し、徹底的な法治主義を貫いた一方で、「焚書坑儒」に代表される弾圧と殺戮の実行者でもあった。明君と暴君との双面を併せ持つ始皇帝の実像を探る。（１９９４年９月２３日～１１月２５日放送、全３回）◆第二回。強大な軍事力で中国大陸の統一を果たした始皇帝は、広大な領土をひとつにまとめるため、様々な統一政策を実行した。文字の統一、経済流通機構の整備、道路網の建設、法体系の確立。その全てが、中国という国家の原形を作っていたのである。