四国最長の川であり、本流に大規模ダムがないことから“日本最後の川”と呼ばれる四万十川。流域で営まれてきた伝統漁法の数々を紹介する。◆小枝の束を川に沈め、数日後に引き揚げて中に入り込んだ魚やエビを獲る「柴漬け漁」。川の中央に仕掛けた四手網に向かって貝殻を結んだ綱を引っ張り、驚いて逃げ込んだ魚を獲る「ガラ引き漁」。９月頃には、川底に石を積んで水が引いたときに入り込んだうなぎを獲る「石ぐろ漁」、長さ７０センチほどの筒をつないで投げ入れ、翌日引き揚げる「ころばし漁」。どれも川を汚さない漁法である。

第２時世界大戦末期にスイスで日米和平工作に奔走したジャーナリストたちの活動を、当事者・関係者の証言と極秘電報など数多くの史料から詳細に描く。◆戦争末期の終戦工作の中で最も可能性が高かったと戦後言われたスイスでの和平工作は、ドイツ人経済学者ハック、朝日新聞ベルリン特派員の笠信太郎、アメリカＯＳＳのダレス、ベルリン駐在海軍武官藤村中佐らによって行われた。ダレスはワシントンを通じて工作を進め、藤村は米内海軍大臣へ、笠は緒方内閣顧問へ暗号電文を打ち続ける。米英との和平を促した藤村の３５通におよぶ電文、笠の祖国を案じる６４００字もの長文電文など、今に残る史料で終戦前夜の緊迫した状況を浮彫りにする。

作家・五木寛之さんが、日本に初めて渡来したロシア民謡「ソフィアの歌」のルーツを追ってロシアに旅立つ。◆２００年前、鈴鹿市から船出した大黒屋光太夫は嵐に遭い流されてロシアに漂着、１０年後にやっと帰国できた。その際に彼は「ソフィアの歌」を日本に持ち帰った。日本語の歌詞がついており、光太夫の望郷の思いがつづられている。この歌は１９世紀後半までウクライナで歌われていた民謡であった。そして時代と共に子守歌、ラブソング、革命歌、軍歌などとして歌い継がれ、強い生命力を持つ歌として愛されている。

北陸道を歩き、越中ゆかりの文人武人の紀行文や詩歌を紹介する。◆北陸道は川また川の道である。古くは大伴家持が国内巡視の旅先で歌を作り、倶利伽羅峠は『平家物語』や『源平盛衰記』の舞台となった。また宗祇も訪れて連歌の会を開き、芭蕉は『奥の細道』で「早稲の香や分け入る右は有磯海」と詠んだ。芭蕉に師事した井波の浪花が建てた翁塚は、日本で最初の芭蕉塚である。俳人の大淀三千風は黒部渓谷の刎橋の景観に感嘆し、漢学者の沢田宗堅は魚津の蜃気楼を詩に詠んだ◆桔梗屋跡、境関所跡、『刎橋の図』、恒生皇子の墓、放生津城跡、前田利長廟、黒髪庵と翁塚、人麿神社跡

中国山地の私立病院に入院している老人たちに焦点を当て、豊かな国といわれる日本の超高齢化社会の厳しい現実を伝える。◆ベッド数５５０床の私立病院の９割を占める老人たち。平均年令は８２歳、なかには１０年以上も入院している人もいる。村の家を出てそろって入院してきた老夫婦、だれもいなくなってしまった村のお地蔵様をベッドサイドで守っている人、寝たきりになった幼なじみの世話をしながら入院している人。互いに面倒を見合っている彼らは、退院しても安心して帰れる場所がない。

新しい織田信長像とその時代に生きた人々の姿を描く。ＮＨＫ大河ドラマ第３０作「信長　ＫＩＮＧ　ＯＦ　ＺＩＰＡＮＧＵ」の総集編。全３回。原作・脚本：田向正健。◆第１集「ジパング」。天文３年（１５３４）尾張に生まれた信長は、幼くして母を奪われ、奔放な若者に育つ。その言動は周囲には奇矯なものとうつり、うつけ者といわれていた。その信長（緒形直人）が蝮といわれる隣国・美濃の斎藤道三の娘、帰蝶を妻にもらいうける。そして織田一族の争いの中から抜きん出て尾張統一に踏み出すため、領国に侵入した今川義元を桶狭間の合戦で破り、一躍武名をとどろかせる。

寛政年間に彗星の如く登場し、１０カ月で１４０数枚の役者絵を描いて、江戸の街を一陣の風のように通り過ぎていった天才浮世絵師、東洲斎写楽。短い活動期間の後は歴史の流れの中へと沈んでしまったが、一人のドイツ人によって世界の三大肖像画家と評価され、逆輸入の形で日本の代表的絵師として再登場する。旧来の様式的浮世絵から脱皮し、役者の人生を読みとり、役者絵の向こうにある人間そのものの本質を描こうとした絵師だった。◆東洲斎写楽（？浮世絵などを１７９４．５から１０カ月間制作）「四世若井半四郎の乳人重の井」「役者大首絵」「三世佐野川市松の祇園町の白人おなよ」「三世瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ」

幻想的で悪魔的な作品を描き続けた画家、モロー。印象派全盛の頃、その動きに全く背を向け独りアトリエで、シュール・レアリズムに続く象徴主義の扉を開いた画家であった。ギリシャ神話や聖書の物語に題材を求め、そこに自分の感じた夢を求めていく特異な画風。作品を手放さなかったという彼の邸宅は美術館に改装され、フランス国家に寄付された。モロー美術館として開館したとき、数千点の彼の絵で埋まっていたという。◆ギュスターブ・モロー（１８２６〜１８９８）「詩人とセイレーン」、「出現」（サロメ）１８７６発表、「ユピテルとセメレー」「聖ヨハネの首を抱くサロメ」「スカイア門のベレーネ」１８９０、「死せる竪琴」１８９７