１９５４年３月、第五福竜丸が太平洋ビキニ環礁で、アメリカが行った水爆実験による死の灰をかぶってから３８年が過ぎ、乗務員２３人のうち８人がすでに亡くなっている。水爆によって人生を狂わされ、周囲の偏見や死の恐怖と闘いながら生きてきた元乗務員の一人、大石又七さん（５８歳）はその体験を手記にまとめた。後遺症の不安のなかで生きてきた一漁師の半生を最近公開された映像や外交資料を交えて描く。

作家・早乙女貢氏が福島県に関わりのある人物の足跡をたどり、その素顔を探るシリーズ。◆伊達政宗の叔母で須賀川城主であった大乗院。伝統行事「松明あかし」の起源となったいくさを背景に、戦国時代に生きた女城主の数奇な運命をたどる。

悠々自適の隠居生活を送る辰造と、実直な弁護士である昭伍の親子に、嫁の冴子や近所のにぎやかな仲間たちが絡んで繰り広げるホームドラマ。１９８６年にはじまったシリーズの第１２弾。◆日曜の朝、辰造（森繁久彌）は昭伍夫婦の部屋を覗こうとして２階から転落。足を骨折し、入院する羽目になる。入院を知った近所の面々が見舞いに訪れ、辰造は上機嫌。そのうえ、上品な付添い婦・徳大寺八重子（司葉子）が世話をしてくれて満足顔だ。一方、昭伍（竹脇無我）のもとに松倉園美（佐野量子）という女性が訪ねてきた。母親の遺産相続に関して相談があるという。ある日、園美が母親にぜひ会ってと昭伍を案内したのは、辰造が入院している病院。話を聞くうち、八重子が園美の母親だということが判る。八重子は名家の未亡人で、先妻の子・克彦（五代高之）との間の遺産問題で悩んでいたのだ。

日本人の起源は、沖縄で出土した約１万８千年前の港川人まで遡ることができる。港川人は、中国の柳江人とよく似ており、南アジア系と考えられている。縄文人は港川人と同じ系統であり、大陸との交流が少なく独特の文化を成熟させた。弥生時代になると、朝鮮から北アジア系の人々が渡来し、水稲技術を伝えて日本の土台をつくった。講義では、自然人類学の立場から日本人の起源を述べ、縄文人・渡来型弥生人の２つの系統が現代にも残っていることを解説する。講師は国際高等研究所の埴原和郎副所長。

　野村美術館は野村証券や大和銀行などの金融財閥を一代にして築きあげた野村徳七（１８７８～１９４５）のコレクションを基に、１９８３年に京都東山の南禅寺の畔に開設された。徳七は得庵と号して、書画骨董など多方面の趣味を楽しんだ。とりわけ茶の湯と能に深くかかわり、茶器や能面、能衣裳などが収蔵品の主体をなしている。１９１８年に庭師小川治平に造らせた碧雲荘の庭園は、日本趣味を代表する名園として有名である。

中国南部の山間に不思議な形をした住居群がある。「円楼」は、大きなものは直径６０メートル、外壁を土で固めた円形の建物に姓を同じくする一族４００人近くが暮らす。人々は「客家（はっか）」といい、揚子江流域を追われた漢民族である。最大・最古といわれる円楼への取材が初めて許可され、カメラは建物と人々の生活の隅々までとらえ、一族の強い絆が支える客家の人々の暮らしぶりを紹介する。

大水害に襲われた故郷奈良県十津川村を後に、２６００人が北海道へ新天地を求めて移住したという歴史的事実をもとに、祖母と母と娘の３代に託して百年の開拓史を描く。（大正編／１９９２年５月２日・９日放送、全２回）◆大正７年、北海道・新十津川村。原野を切り開いたフキの長女・あやは今一つ気の進まないままに小学校教師・和三郎のもとへ嫁いだ。フキは二人の息子たちのどちらかに農業を継がせるつもりだった。しかし長男・庄作も二男の豊彦も東京へ出てしまう。やがて出産のため里帰りしたあやは、出面（季節労働者）として雇われていた吾郎にひかれていく。

アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９３年３月９日終了、全１１回）◆第２回はマゼランの世界一周旅行によって西欧に初めて知られたフィリピン・マクタン島。戦いで侵略者マゼランを殺した島の英雄・ラプラプ王の子孫たちは海辺で静かな暮らしを営んでいる。マゼランが下り立った浜辺を舞台に、西洋文明と出会った島の変貌ぶりを紹介する。