寛政年間に彗星の如く登場し、１０カ月で１４０数枚の役者絵を描いて、江戸の街を一陣の風のように通り過ぎていった天才浮世絵師、東洲斎写楽。短い活動期間の後は歴史の流れの中へと沈んでしまったが、一人のドイツ人によって世界の三大肖像画家と評価され、逆輸入の形で日本の代表的絵師として再登場する。旧来の様式的浮世絵から脱皮し、役者の人生を読みとり、役者絵の向こうにある人間そのものの本質を描こうとした絵師だった。◆東洲斎写楽（？浮世絵などを１７９４．５から１０カ月間制作）「四世若井半四郎の乳人重の井」「役者大首絵」「三世佐野川市松の祇園町の白人おなよ」「三世瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ」

何不自由のない生活ではあっても先の見えた人生に無力感を感じている中年男が故郷を訪ね、初恋の人に生き写しの少女に出会う。◆悟は２年前に勤めていた不動産会社が倒産したのをきっかけに趣味のカレー屋を始めた。妻と娘との３人暮らしで店もそこそこうまくいっているが、何か満ち足りない気持ちを抱えている。そんなある日、故郷・岐阜から同級生の死の知らせを受け、ふと故郷を訪ねてみる。なつかしい校舎を眺め、街を行くうちに路面電車の車窓に中学時代好きだった少女・緑そっくりの少女をみかける。

仏教改革の祖・法然上人入滅の地で、徳川家康の浄土信仰と政略によって建てられた知恩院。家康が天皇家を監視すべく、二条城との関係位置を考え城郭建築風の寺として建てた。木造の楼閣としてわが国最大級の山門からは、京都御所が臨める。既成宗教に抗した法然が庵を編み、後広大な伽藍となり、京を見下ろす。浄土教総本山と徳川幕府の政略拠点という二面性を持った知恩院も、幕府崩壊後は再び庶民の寺として念仏がよみがえった。◆【国宝】法然上人絵伝〔知恩院〕、阿弥陀二十五菩薩来迎図◆【重要文化財】知恩院三門、唐門、本堂（御影堂）、勢至堂、経蔵、大方丈、小方丈

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、数学者の森毅と絵本作家の安野光雅。

かつて横浜はマドロスの街として賑わい、時代の先端を行く文化の発火点だった。しかし、時代の経過につれて港町ならではの個性が薄れ、次第に東京化しつつある。みなとみらい地区の開発構想や、船乗りの消えた横浜港、中華街、ベースの街・本牧などの過去と今を伝え、時とともに変貌する横浜の素顔を描く。

元ソビエト連邦大統領ミハイル・ゴルバチョフ氏が１９９２年４月１１日に来日した。１９９１年１２月に辞任した後、ゴルバチョフ基金を設立、国の内外で評論活動を展開している。氏をスタジオに招き、ペレストロイカや大統領失脚の回顧を含め、母国・ソ連の現状と今後をどう見るか話を聞く。

地唄の富山清琴さんの唄と三弦で「三吉」「寛濶一休」を聞く。◆「三吉」は「重の井子別れ」を原典とする曲で、大名家の乳母・重の井が実子三吉と偶然出会うが、母子の名乗りもできずに別れていく場面を唄う。◆「寛濶一休」は作物（こっけいな内容のおどけ物）で、一休禅師と山伏との術くらべという面白い詞のユーモラスな曲。

京都の南、宇治川沿いにある平等院鳳凰堂。その姿は両翼を広げた鳳凰が西の空から舞い降りて、ここを極楽浄土の地と見立てた。藤原道長の別荘を、弟の頼道が寺として阿弥陀堂を建てた。この時、政争や天変地異が頻発し、人々は迫りくる破滅の時代を恐れていた。一心に阿弥陀如来にすがり極楽浄土へ生まれ変わることを念ずれば、そこに浄土が見えてくる。人々は平等院に集まった。浄土の池を前庭に、華麗な鳳凰堂には今も人が集う。◆【国宝】平等院鳳凰堂、阿弥陀如来坐像（定朝作）〔平等院〕、雲中供養菩薩像〔平等院〕、源氏物語絵巻〔徳川美術館〕、餓鬼草紙〔東京国立博物館〕